2010年5月31日 (月)

終わりに

一昨年に起きた世界金融危機により、世界経済は大きな打撃を受けた。それに伴い我が国の経済は後退し景気は落ち込み、私たち国民の家計や雇用へその負の波動は広がって行った。日本企業はその存亡をかけ、事業の撤退、人件費カットや人員削減、新規雇用の縮小などあらゆる手を尽くさねばならなくなった。この流れはまだまだ続き、飛躍的な景気の回復がない以上、元の状態に戻るには相当な時間と労力を要することは、誰しも肌で感じる周知の事実である。
一方、日本企業の人材戦略は終身雇用・年功序列といった日本経済に根づいた制度から競争経済に勝ち抜くため能力主義・成果主義へと移行していった。しかし、その流れは世界金融危機で世界経済が崩れ、日本が生き残りを賭けたグローバル経済での成功にそぐわなくなってきている。グローバル経済での成功のキーワードは、柔軟な組織力、創造性と個性の融合、マーケティング戦略の優位性、そして迅速な問題解決力である。それを成し遂げるには、そうした能力を持った多様な人材を活用する。つまり、人材の多様性、ダイバーシティーの構築こそが重要な企業戦略に位置づけられたのである。
そんな中、今最も注目されているのが女性の活用である。男女雇用機会均等法や育児休業制度などに代表されるように法や制度により、女性が社会で活躍できる場所は整備されてきている。

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2010年5月24日 (月)

第9話 (最終話) 淑女たちよ 未来に羽ばたけ!

(1)

その日、影山善蔵は成田空港にある人物を迎えに来ていた。
「会長、お帰りなさいませ」
その人物こそ岡崎自動車の会長である岡崎慎太郎であった。
「ご帰国ありがとうございます」
「おお、影山、御苦労。私が座長を務める環境対策親善大使としての仕事には道筋を立てて来た。
今後はこの仕事を社内の人材に引き継いでもらうこととした」
「人選については?」
「もう決めておる。それと、どうじゃ、会社の様子は。あれから変化はあったか?」
慎太郎と影山は空港ロビーを歩きながら話していた。
「はい、証子がきっぱり慎次郎社長とのお付き合いを断りました」
「そうであろうな。あいつはまだ極めた道を使い始めたばかりだ。まだまだ修行の時期と思っているに違いない」
「おっしゃる通りです。本人も同じことを言っておりました」
「そろそろ本当のことを告げなければならない時が来たようじゃ」
慎太郎は影山の用意した車に乗り込んだ。
影山は慎太郎の隣に乗車し、車は岡崎自動車本社に向けて走りだした。
「影山、お前の出勤停止は解けたのか?」
「はい、作日付けで解けました」
「世話をかけたな。ところで、今日の慎次郎の予定は?」
「本日の午後は、ジャパン・ニューホテルでニューヨークの経済雑誌の取材を受ける予定ですが、今ごろは移動中かと思います」
「そうか。では、先にあの子を私の部屋に呼んでくれ」
「はい」
慎太郎と影山を乗せた車は、岡崎自動車本社を目指してスピードを上げたのであった。
 

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2010年5月17日 (月)

第8話 淑女スーパーモデルに変身!

(1)

影山はその日、慎次郎のいる社長室に呼び出されていた。
「影山、単刀直入に聞く。なぜ彼女を愛してはいけないのだ?」
「理由は申し上げる訳にはいきません。だめなものはだめです」
「理由を言え。言えないのであれば、私にも考えがある」
慎次郎はいつになく顔を赤らめ、少し興奮状態であった。
「何度も申し上げるように。だめなものはだめです」
「そうか、分かった。では私も決断する。お前に1ヶ月の出勤停止を命じる。理由は社長命令に従わなかったからだ。何か弁明はあるか?あるなら聞くが」
影山は慎次郎を黙って見つめるだけであった。
「ないようだな。影山善蔵、本日より1ヶ月の出勤停止だ」
「分かりました」
影山は慎次郎の命令に素直に従った。
「では、失礼します」
影山は表情を変えることなく社長室を静かに出ていったのであった。
廊下では香西 凛が不安そうな顔をして立っていた。
「香西、あとは頼む」
「影山室長、どうかなされたのですか?」
「私は社長命令違反により、今日から1ヶ月の出勤停止となった。社長のことを頼む」
「そんな、何が原因で。もしかしてあの女の件ですか?」

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2010年5月10日 (月)

第7話 1億ドルの女

(1)

影山はその日、岡崎自動車企業戦略支援室のデスクで、ある人物とテレビ電話で連絡をとっていた。その人物こそ、岡崎自動車の会長、岡崎慎太郎であった。
「どうだ影山、会社に異常はないか?慎次郎は社長の業務をこなしているか?」
「はい、慎次郎社長の会社経営には何ら問題はありません。むしろご立派にこなされていらっしゃいます。ただひとつ...」
影山の歯切れの悪さを慎太郎は即座に読み取った。
「ただ、何じゃ?」
「いや、慎次郎社長がある人に想いを寄せているようで、その人物とは例の美知和 証子なんです」
「そうか」
慎太郎は落ち着いていた。
「彼女のこれまでの活躍は私の想像以上でした。さすが会長の肝いりの人材だけあります。慎次郎社長が想いを寄せるのも分からなくはないのです」
影山は右手で自分の顎を触りながら、ゆっくりとした口調で慎太郎に報告した。
「もしや、あの美知和 証子の正体は?」
影山が次の言葉を発する前に慎太郎は語り始めた。
「さすがだな、影山。この私、慎一郎、慎次郎の秘書として仕えてきただけのことはある。お前の想像通りだ」
「やはり、そうでしたか」

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2010年4月26日 (月)

第6話 炸裂 証子スペシャル!

(1)

「あ~あ、何で私が町内会長なの?引っ越して来た新参者がなるって嘘臭いよねえ~」
道子は歩きながら一人言を繰り返していた。道子はその日から町内会長にさせられ、先ず最初の仕事として町内会費を集めに地図を片手に近所を回るのであった。
「あった、ここで最後か。けど、この家立派なお屋敷だけど窓が無い。何か怪しいなあ~。それにカメラがあちこちにある。まあ、さっさと集金して帰ろう」
(ピポ~ン)
道子はその屋敷のインターホンを鳴らした。
「あの~鬼前(きぜん)さん、すいません。町内会長の証(あかし)と申します。町内会費の集金に参りました」
「ご苦労さまです」
道子はインターホンの向こうの声がドスが効いていることに、いやな予感がした。
「ここって、もしかして、あのヤクザ屋さんの鬼前(きぜん)組の東京支部?どうりでみんな私に町内会長を押し付けようとした訳だわ」
(キィ~)
サングラスを掛け、坊主頭のいかつい男が門の扉を開けに来た。
「会長さん、中へどうぞ、東京支部長がお支払いします」
「どうも」
道子が一礼して屋敷の中に入ろうとした瞬間、黒塗りの車が2台、屋敷の前で急ブレーキをかけて停まった。そして車の中から、黒服を身にまとった、鋭い目つきの男たちが5人降りて来たのであった。

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2010年4月19日 (月)

第5話 淑女よ小さな客人を救え!

(1)

その日道子は東京に来て以来やっと寛ぐ時間を楽しんでいた。神楽坂にある閑静な住宅地の一角で、雪の入れた美味しいお茶を飲みながら互いのことを語らうのであった。
「雪姐さん、いつもフォローありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ、証子さんの成長した姿には毎回私も驚かされているわ」
「ところで、どうして雪姐さんは岡崎自動車の危機を救う仕事をされているの?」
「実は、私は証子さんのお母様と岡崎自動車の岡崎慎太郎様に助けていただいた身なの。だからその恩を返すため、この身に付けた芸をもってこの仕事を引き受けたの」
「えっ、母さんからは雪姐さんのこと、母さんの妹弟子としか聞いていなかったわ」
「そう、では本当のことをお話しするわ。私の実家は小さな建築会社でね。受注の受け違いで大きな借金を背負ったのよ。私は中学を卒業すると同時にその借金を返すため芸の世界に入ったの。そこで身を寄せたのが花添流の師範の家だった。証子姐さんの美知和流とはライバル関係だったわ。日本舞踊の歌舞会では舞の美しさを競ったものよ。
証子姐さんは私の芸に一目を置いてくださっていた。そんなある日、私の実家の借金の返済期限がついに来たの。私がいくら働いても利子を返すのがやっとで元本を減らすこはできなかったわ。私はそこで決意したの。芸を極める道を諦めて、身を売る道に進むことを。そして、花添流の師範のもとを出たの。

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2010年4月12日 (月)

第4話 トップ女優と淑女友情の共演!

(1)

「はい、名宇井課長、これを飲んで元気出してください」
岡崎自動車庶務福祉課ではいつもの光景が繰り広げられていた。
「カッペ、何だこの飲み物は」
「はい、特製の『元気出まくりジュース』です」
名宇井は先日のサーキットでの失態が出世の妨げになったのではないかと思い、元気を無くしていた。
「これ飲むと元気になるのか?」
「もちろんです。名宇井課長から元気を取ったら何が残るんですか?」
「何~!カッペ、お前まで俺を馬鹿にしやがって」
「まあまあ、これを飲んで元気出してください。課長にはまた、色々ご指導してもらわないと」
「ほ~?カッペ、少しは謙虚になったな」
そう言いながら名宇井は、道子が作った特製の『元気出まくりジュース』を一気に飲み干した。
「ウォ~!」
名宇井は急に叫びだした。
「来た~!なんかこう、体が温かくなって来たぞ~」
名宇井は顔を赤らめ、トレードマークの髪の毛を逆立て、道子に言った。
次の瞬間、名宇井の表情は一変した。
「やべ~!」
名宇井はお尻を片手で押えながら、トイレに向かって走りだしたのであった。

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2010年4月 5日 (月)

第3話 激走サーキットの女神

(1)

「社長、新車発表会の準備が整いました」
「よし、今回はわが社初の電気自動車、何としても成功しなければならない」
「はい」
その日、岡崎自動車は社運を賭けた第一弾の電気自動車の新車発表会を開催していた。
「社長、大変です」
「どうした、香西」
慎次郎の元に香西 凛が慌てて駆け寄って来た。
「新車に乗るコンパニオンが急に腹痛を起こして、とても立てる状態ではありません」
「どういうことだ。先ほどまで笑顔を振りまいていたではないか?」
「どうやら、先ほど飲んだミネラルウォーターの中に、何者かが下剤を入れたみたいです」
「何?コンパニオンがいなくては、華が無くなる」
慎次郎は頭を抱えた。
「社長、ご心配に及びません」
銀色のスチール製のメガネを外し、ハンカチでレンズの汚れを拭き取りながら、影山善蔵は冷静に慎次郎に言葉を向けた。この仕草は影山の癖であり、自信がある時のサインでもあった。
「そうか、例の?」
「そうです。社長、そろそろお時間です。ステージへ」
慎次郎は安心した面持ちで控え室を出てステージに向かった。

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2010年3月29日 (月)

第2話 ロビンフッド二世VS淑女キューピット

(1)

東京の朝が始まった。静から動へ、人々は一斉に群れをなす動物のように行動を始める。猿のように飛び回るものの群れ、シマウマのように規律を守る群れ、蟻のように一心腐乱に群れるもの、それぞれの動きが多種多様なものに見えるのであった。道子は岡崎自動車への通勤途中、あるものに魅せられて足を止めた。それは花屋のショーウィンドウに飾られたフリージアの花であった。道子はその花を見ると、7年前、母と過ごした最後の日々を思い出すのであった。
道子は東京で生まれ、美知和流の師範である母、睦子の手によって育てられた。幼小の頃から睦子にあらゆる分野の芸を徹底的に仕込まれたのであった。しかし、道子が高校を卒業すると同時に睦子は病に倒れ、その療養のため母の生まれ故郷の八丈島で生活していたのであった。
「母さん、母さんの好きなフリージアのお花よ」
「道子、ありがとう」
道子は病に伏せる母の部屋に、母の好きなフリージアの花を生けた。
睦子は道子の生ける花を何も言わずじっと見つめ、花を生け終わった道子に言葉を掛けた。

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2010年3月22日 (月)

第1話 謎の淑女とカッペ女子(初回拡大スペシャル)

(1)

日は昇る。生きとし生けるものにその生命エネルギーを注ぎ込むために、波は小さくそして時おり大きくざわめく、生きるものに与えられる試練を教えるがごとく。
八丈島の海辺の岩に、柔道着を着て目鼻立ちがはっきりした透き通るような綺麗な肌をした女性が、長く美しい髪をなびかせながら立っていた。
昇り始めた日の光が海に反射して、その女性の澄んだ瞳を照らしていた。
女性の名は証 道子(あかし みちこ)25歳。
「道子、いや二代目 美知和 証子(みちわ しょうこ)今戻ったのか?」
同じく柔道着を着て、白髭をたくわえた老人がその女性に声をかけた。老人の手には「挑戦状」と書かれた手紙が握り締められていた。
「菊ジィ、時間通りね。どうやらボケてはいないみたいね?」
「バカモン。柔道6段、空手5段、剣道5段、合気道4段、通信教育で取った熟女ナンパ術3段の『エイジ・ファイター』こと、この証 菊之介(あかし きくのすけ)を馬鹿にするではない。道子、今日も返り討ちにしてやる!」
「菊ジィ、知らないうちに変なの増えているけど?まあ、それは置いといて。望むところよ。手加減はしないからね」
「それはこっちの台詞じゃ~」
「やあ~」
「おう!」

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