2008年6月27日 (金)

終りに

終りに

連日、企業の法令違反・不祥事のニュースが新聞・雑誌そしてテレビで報道されている。
日本経済は戦後、高度成長の成功を収め、世界No.2までの経済大国にまで昇りつめた。
中国・インドをはじめとするアジア諸国や豊富な資源をバックボーンに発展しようとしているアフリカ諸国などの国々は今必死になって経済成長を図っている。
そうした中、日本は開発力・技術力、製品品質への信頼などに強みを活かし、その追随に負けないように取り組んでいる。その経済大国の地位を盤石にするため、今まで築きあげた開発力・技術力・品質、に加え、「環境」に配慮したもの・「コンプライアンス(法令遵守)」を守ることを掲げ、その優位性を保とうとしている。
「開発力・技術力」「品質」「環境」「コンプライアンス」この四つは日本存続の重要なキーワードと言っても決して過言ではない。
私はこの四つのキーワードのうち、「コンプライアンス」に不安を感じる。なぜなら日本では「コンプライアンス」=「法令遵守」という解釈が固定化してしまったからだ。
確かに法令を遵守することで「悪」を許さず、自分たちの襟を正すことはできる。しかし、本来重要なものを見落として進んでしまうのではないかという懸念も生じる。
そもそも「コンプライアンス」とは何であろう?
法律とは人が社会生活をする上で最低限守らなければならないルールである。この最低限のものを「コンプライアンス」と言って良いものであろうか?
あくまでも私の私見だがモーゼが『十戒』を神から授かった理由は、我々人間があまりにも人としてのルールを守らないのでそのルールのルーツを与えたものではないかと、勝手ながら解釈している。しかし、ひょっとして人の定めた法など神々から見たらまだまだ低レベルなものなのかもしれない。
私の意見の結論を言おう。「コンプライアンス」とは「人の道を守る」ということではなかろうか?モーゼが『十戒』を授かる前に神からはあたり前と思われていたこと、つまり、法などなくても人が人として、人の道を守ることこそ真の『コンプライアンス』の意味ではなかろうか?
この、人の道が守られた時こそ日本は真の「開発力・技術力」「品質」「環境」そして「コンプライアンス」を有した心・物ともに経済大国となるのではなかろうか。

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2008年6月18日 (水)

第10章
  意思を継ぐ者

第10章 (4)

病院の入口では、サングラスをかけ中国服を着た一人の男が暴れていた。左手からはマイナス電流を放射し、右手からはプラス電流を流していた。あたりはまるで雷でも落ちた様に焼け焦げていた。
ジャガーは病院の入口に駆け降りて行った。
「人の道外せばそこは地獄道、この先一歩も通しゃしねぇ~」
ジャガーは中国服を着た男の前に立ちはだかった。
「お前がジャガーか?」
「そう、俺がコンプライアンス・ジャガーだ」
ジャガーはその男の胸を指さし、さらにその手で拳を握り締め、自らの胸元に引戻しながらこう言った。
「あんたの良心取り戻しに来たぜ」
「俺の名は青雷(せいらい)、お前の腕を確かめに来た。我ら四天王の一人、ブラックスネークの趙 蛇真を倒した男がどれほどの男かな」
ジャガーは「ジャガーの爪」を取り出し、長刀サイズにした。
「青雷、試してみるがよい」
「そうか、では遠慮なくいくぞ」
青雷と名乗る男とジャガーの戦いが始まった。
青雷は両手からプラスとマイナスの電流を放電した。ジャガーはことごとくそれをかわしていた。しかし、自分の後ろに逃げ遅れた老婆がいるのに気がついた。
「ハハハハ、喰らえ!ジャガー」
青雷は右手からプラスの電流をジャガーめがけて放電した。ジャガーはその放電を右手に握った「ジャガーの爪」で受け止めた。
「ハハハハ、罠にはまったな。ジャガー、この程度の腕でよく蛇真が倒せたな。あの方が気にするほどの腕ではない。この場で私がお前の命を頂戴しよう」
そう青雷は告げると、左手からマイナス電流をジャガーめがけて放電しようとした、その瞬間、青雷の左腕に銃弾が撃ち込まれた。その銃弾により青雷はジャガーに放電を放つことができなくなった。
「誰だ?」
青雷の視線の向こうには、拳銃を構える聖華の姿があった。
「お嬢さん」
「ジャガー、お嬢さんでないでしょ。聖華と呼びなさい」
ジャガーと聖華は微笑みあった。
「ファイナルゲートの清野聖華か?」
青雷は聖華を睨んだ。
「青雷、今度はこちらから行くぞ」
ジャガーはそう告げると、もう一本「ジャガーの爪」を取り出した。そして二刀流の態勢に入ったのであった。それは明大の改良が完成した「二刀流用のジャガー爪」であった。
「貴様は二刀流?」
「如何にも」
ジャガーは青雷の放電をかわし、ついに青雷を追い詰めた。
「よっしゃ」
ジャガーは青雷の頭上で上段の構えをした。そして、その剣を振り下ろそうとした瞬間、もの凄い突風が吹いたのであった。ジャガーはその突風に一瞬目を覆った。その隙に青雷はその場を離れ、突風が放たれた場所に逃げた。そこには同じ中国服を着ている、長髪を束ねた一人の女性が立っていた。
「紅風(べにかぜ)助かった」
「青雷、ひとつ貸しよ。ジャガーを甘く見てはやられるわよ」
「ああ、お前が来てくれてなかったらやられていた」
青雷と紅風と呼ばれた二人は、ジャガーと聖華をみつめたのであった。
「ジャガー、そして清野聖華、決着は後日だ。それまで命を大切にしとくんだな」
そう告げながら、青雷と紅風はその場を立ち去っていったのであった。
「ジャガー、手ごわそうね」
「大丈夫です。あの二人の技はすでに見切りました」
次の瞬間、聖華の携帯電話からメールの着信音が聞こえた。聖華はその着信メールの内容を確認した。
そこにはこう書かれていた。
「清野聖華、正邪雅、ニューファイナルゲートに合流せよ」

・・・・・『コンプラインス・ジャガー第2巻』につづく

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2008年6月 9日 (月)

第10章
  意思を継ぐ者

第10章 (3)

聖華とジャガーはその日退院する龍志を迎えに鷹山記念病院に来ていた。
二人は龍志の病室まで階段をゆっくり上がったのであった。
「ジャガー、貴方に言っておくことがあります」
「はい、お嬢さん」
「私の本当の父親は、虎鉄おじ様ですね」
「気づいていましたか?」
「私は弁護士です。それぐらいのことはとっくの昔に察しがついています。貴方がファイナルゲートに来た本当の理由もね」
「そうでしたか」
「しかし、本当のことを言うと微かな望みをもっていました。お父様が私の本当の父親であってほしいと。先日、お父様の血液型の事実を聞いた時、その微かな望みもなくなりました。私はあなたと同じO型、お父様がAB型である以上、血が繋がっているわけがない」
「しかし、清野さんは貴方を本当の娘のように思っています」
「私は幸せですね。もちろん、私もお父様を本当の父親と思っています」
「お嬢さん、それでいいではないですか。あえて口にしなくても」
「ジャガーの言うとおりかもしれませんね」
聖華とジャガーは龍志の病室に到着した。そしてその部屋の扉を開けたのであった。
しかしそこには、誰一人いなかった。龍志はすでに退院した後であった。
「これはどうゆうこと」
「お嬢さん、ちょっと表を見てきます」
病室をジャガーが出ようとしたその時、看護士が病室に入ってきたのであった。
「清野さんのお嬢さん。これをお渡しするようにと、清野さんから預かっております」
「父は?」
「2時間ほど前に、すでに退院されました」
聖華はその看護士から封筒を受け取った。中にはマイクロ映像チップが入っていた。
「では、私はこれで」
看護師はそう告げると病室を出て行った。
聖華はマイクロ映像チップを自分の小型PCに挿入した。そこには父龍志の映像が流れていた。
ジャガーも聖華とともにその映像に眼をやった。
「聖華、すまない。今まで本当のことを隠していた。賢いお前ならすでに気がついていると思うが、お前の本当の父親は正邪虎鉄だ。お前の母親、華世さんは実に美しい人だった。
鬼前組がヤクザ同士の抗争をしている時、虎鉄は華世さんの身を案じて私に華世さんを預けた。その時華世さんはお腹にお前を身ごもっていてな。私は当時、政略結婚で佐代子と結婚していた。私は政界に力がある佐代子の父の権力が欲しかったのだ。佐代子には別れた前の夫、渡との子供がいた。それが雅、そうジャガーだ。あの日、佐代子とジャガー、そしてお前を身ごもった華世さんは、私の自宅で私の帰りを待っていた。しかし、悲劇は起きた。渡は私と同じ弁護士で、『ダークライト』を追うため佐代子と離縁し、行方不明になっていた。あの日、佐代子に行方不明の渡から一通の手紙が届いた。そこには『ダークライト』を手にする人物が中国に誕生すると記されていた。佐代子が手紙を受け取った数時間後、佐代子を狙った銃弾の嵐が私の自宅を襲った。佐代子は命にかえて当時5歳のジャガーの身を守って亡くなった。同じ家にいた華世さんも重傷を負ったのだ。自宅に到着した私はその光景に唖然とした。華世さんは助かるすべがあったが、それにはお腹の子をあきらめるという代償を払わなければならなかった。病院で私は2つの選択肢を医師から告げられた。それはお腹の子をあきらめ華世さんの命を救うか、お腹の子を早産させ、華世さんの命を捨てるかだ。私は華世さんの命よりもお腹の子を選択した。華世さんは、もし自分の身になにかあったのなら迷わずお腹の子の命を優先してほしいと語っていたのだ。私はその意思に従い、お腹の子の命を選択した。そうして生まれたのが、そう、聖華だ。ジャガーは銃弾のショックでそれまでの記憶を失っていた。虎鉄はそうした選択をした私を怨んだ。無理もない。華世さんは虎鉄にとって、命に代えても守り抜きたい存在だった。それくらい華世さんを愛していた。その一件から、虎鉄と私の間に溝ができた。しかし、ジャガーを虎鉄に託し、聖華を私が育てることでその溝は無くなっていった。そのつらい出来事を、ジャガーと聖華を育てることでお互い忘れようとしていたのだ。
私の家を襲撃してきたのは、虎鉄の抗争相手が華世さんを狙った犯行と思い込んでいたが、後に「ブラックスネーク」が法元渡からの手紙を葬るためと分かった。当然、その裏には『ダークライト』の存在があることは言うまでもなかった。
私と虎鉄は『ダークライト』を追うことである人物に遭遇した。その方こそ私も虎鉄も師と仰ぐお方だ。
日本は今、コンプライアンス遵守という理想に向かって進み始めている。これを全うするには、まだまだ紆余曲折に荒波を乗り越えなければならない。その隙間に必ず闇が生まれる。
法元渡の手紙では、やがて日本が善と悪の挟間に目覚めた時、時は始まると記されていた。
つまり、その時が今だ。『ダークライト』を手にしたものが必ず動きだす。中国はアメリカを超え世界の覇権を奪取ために、まずこの日本を潰すつもりであろう。
ジャガーよ、聖華よ。「ファイナルゲート」の真の目的にはそうした背景があったのだ。
今この日本はコンプライアンスという、善と悪の挟間に目覚め始めた。決して奴等にその隙を見せてはならない。奴等は必ずその隙に乗じて日本を潰しにかかる。ジャガーよ、聖華よ、この日本を守ってくれ。私と式三と明大はしばらく日本を離れ香港にいる。もちろん『ダークライト』を持つ人物を探るためだ。
最後に私はこう思う。確かに血のつながりは大切であろう。しかし、一番大切なのは誰の意思を継ぐかだ。聖華は華世さんのように稟とした知性高い女性に、ジャガーは虎鉄のように勇猛で人の道を守る男に成長してくれた。
聖華よ、たとえ血はつながっていなくともお前は私の娘だ。あとは頼んだぞ。
ジャガーよ、聖華のことを頼むではいずれまた会おう」
メッセージはそこで切れたのであった。
「お嬢さん」
ジャガーは聖華を心配して見つめた。
しかし、聖華の態度に何一つ変化はなかった。
「ジャガー、これからは私のことを聖華と呼びなさい」
「しかし」
「これは命令です」
「分かりました」
(キャー)
その時、病院の入口で叫び声がしたのであった。

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2008年5月28日 (水)

第10章
  意思を継ぐ者

第10章 (2)

清野龍志は銃弾を右肩に受け、鷹山記念病院に運ばれた。幸いにも銃弾は急所を外れており、命に別状はなかった。
「お父様」
聖華は明大と式三にHMC証券の大野木のインサイダーで得た資金の流れの調査を託し、鷹山記念病院へ駆けつけていた。
「聖華か、私は無事だ」
そこへジャガーも駆けつけてきたのであった。
「おう、ジャガーも来てくれたか」
「門長を襲った輩の正体はつかめませんでした」
「そうか」
龍志はなぜか上機嫌であった。
そこへ龍志の病室に医師と看護師が入ってきた。
「清野さん、もう少しで輸血のいる大手術になるところでしたよ。気をつけてくださいね。清野さんはRH-AB型の血液型の持ち主なので、輸血できる血液も少ないんですから」
その時、聖華の顔色が変わった。
龍志は聖華の表情を感じとった。
「先生、少しやっかいになります。よろしくお願いします」
医師と看護師は一礼し、龍志の病室から出て行ったのであった。
「お父様、私、お花を買ってきます」
「そうか」
聖華は笑顔であったが、その表情はぎこちなかった。
そして聖華は龍志の病室を出て行ったのであった。部屋はジャガーと龍志の二人きりとなった。
「ジャガーよ。どうやら聖華に気付かれたな」
「そうですね」
「しかし、あの子は自分から私にそのことについて追及するようなことはしないであろう」
「俺もそう思います」
「お前に言わなければならないことがある」
「何ですか?」
「お前もすでに気がついているかもしれないが、我々の前には新たな敵の影が出現している」
「はい、お嬢さんからそのことは先日聞いております。確か『ダークライト』という「聖本」を握る人物が動きだしたと」
「そうだ。『ダークライト』は第一次世界大戦前にアメリカのある男が書き上げた世界征服の方法・戦略を示した「聖本」と呼ばれるものだ。この『ダークライト』に従い、行動すれば世界をわがものにできると言われている。しかし、この聖本を手にできるのは、ある一定のDNAを持った人物だけだ。初代はその聖本を基に、アメリカを世界No
1の国にのしあげた。初代亡き後、二代目は1980年代に同じくアメリカに誕生し、わずかな期間ではあったが、アメリカでITを駆使して再びその権力を拡大させていった。そして、二代目も亡くなり、その意思を継ぐ三代目が現在の中国に誕生した。おそらく、この『ダークライト』を手にした三代目は中国を、アメリカを抜く、世界No1の国に導くであろう」
「その『ダークライト』を手にした人物が趙 蛇真を拾い、手先にしたと」
「そうだ、ブラックスネークは単なる先兵隊に過ぎぬ」
「それと、お前の実の父親、法元 渡(ほうもと わたる)もその『ダークライト』を追って行方不明になっておる」
「俺の実の親父?」
「私と虎鉄は、我々の師である人物から『ダークライト』の封印を命じられている。『ダークライト』こそこの世を狂わす悪の元凶だ」
「親父と門長が師と仰ぐ人物とは?」
「まあ、いずれ紹介しよう」
その時、花瓶に飾られた花を持って聖華が部屋に戻ってきた。
「聖華、きれいな花だな」
「そうですか、お父様」
「しばらく、花を見る機会もなくしていた」
「お父様、ゆっくり休んでください」
ジャガーは、聖華と龍志の絆は本当の親子より深いことを感じとっていた。それはまさに自分と虎鉄との絆と、うりふたつであった。
「門長~、大丈夫ですか?」
「びっくりさせないでください」
明大と式三も病院に駆けつけたのであった。
「私はこの通り大丈夫だ。ところで、大野木の資金の流れは分かったか?」
「はい、どうやら香港の銀行が最終資金の受け皿になっています」
明大が龍志に報告した。
「やはり、そうであったか」
「お父様、ついに本格的に動きだしましたね」
「『ダークライト』何としても阻止せねばならん」
ファイナルゲートのメンバーは新たな戦いに向け、お互いの眼を見つめ合うのであった。

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2008年5月19日 (月)

第10章
  意思を継ぐ者

第10章 (1)

鬼前組では正邪虎鉄の一周忌が行われていた。鬼前豹牙、米山 猿、右足の自由が無くなってしまった熊田 勝、そして正邪 雅、通称ジャガーの姿があった。
ジャガーは育ての親虎鉄に、宿敵ブラックスネークの総帥 趙蛇真を倒したことを報告していた。
「親父、蛇真を倒し三代目の敵を討つことができました。お嬢さんも無事救出しました。特訓の成果、感謝します」
ジャガーは慰霊に手を合わせた。その時、ジャガーの耳には虎鉄の声が聞こえたのであった。
「ジャガーよ、見事であった。少しは武蔵に近づけたな。しかし、安心はするな。真の戦いはこれからじゃ、そしてお前はわしの真の使命を継がなければならない」
「真の使命?」
「そうじゃ、『この国をあやつから守ることだ』」
「奴とは?」
「あやつは近いうちにお前の前にその姿を現そう」
「親父~」
次の瞬間であった。ジャガーの携帯電話がなった。
「これはファイナルゲートからの入電」
ジャガーは躊躇することなく携帯電話に出た。
「門長、先日の内部告発によるインサイダー情報の件、只今入電メンバー全員に転送しました」
その声は生駒明大であった。ファイナルゲートはブラックスネークの襲撃により本部を破壊されて以来、PC、携帯電話、カーナビゲーションなどを用い、お互いに情報を交換していたのであった。ファイナルゲートは現在、会社のIR担当、TV局、新聞社、広告代理店などのマスコミから、事前に重要事項つまりインサイダー情報を入手し、短期間で多額の儲けを出している闇の証券トレイダーを追っていたのであった。
「ファイナルゲートの皆さん、常流新聞副編集長の太田です。やはり部下の広瀬がインサイダー情報をHMC証券の大野木に流していました。今、広瀬がとうもろこしに害虫が混入されているというスクープを大野木に連絡していました」
「太田さん、貴方の勇気に感謝します。あとは私たちにお任せください」
聖華が太田に言葉をかけた。
「よし、聖華、明大、式さん。大野木はこれから食品輸入関連銘柄を空売りするだろう。その現場を抑えるのだ」
弁護士会館の一室にいる清野龍志はパソコンの画面を観ながら指示をした。
「了解しました」
聖華は大野木と同じ部署の事務担当の派遣社員として、明大はイギリスから来たディーラーとして、式三は清掃員として既にHMC証券に潜入していたのであった。
「ファイナルゲート、ゲートフォールディング」

「お嬢さん、注意してください。変な殺気を感じます」
ジャガーは鬼前組からHMC証券にいる聖華に声をかけた。
「わかったわ」
ファイナルゲートのメンバーは通信を切った。そして、聖華、明大、式三は大野木のインサイダーによる売買の現場を抑えにむかった。
大野木は輸入食品銘柄をディーラー室で空売りをしていた。
その部屋に聖華、明大、式三が慌てて入ってきた。
「大野木さん、止めなさい」
聖華が大野木に告げた。
「何だ、お前たちは」
「ファイナルゲートです。大野木さん、あなたは今、常流新聞の広瀬さんからインサイダー情報を入手しましたね」
「何を根拠に?」
「これでもですか?」
すると明大は録音機能付き携帯電話で広瀬からの連絡を受け取る大野木の声と広瀬の声を聞かせたのであった。
「これは?」
「あんたの背広に米粒程度の録音マイクを装着させてもらった。これで証拠はすべて揃った。詳しい話を聞こうではないか」
「くそ~」
大野木は唇を噛みしめると次の瞬間、奥歯を噛みしめた。
「しまった」
大野木はその場で白眼をむいて倒れたのであった。
「奥歯に毒を含んでいた」
大野木は自ら命を絶ったのであった。
聖華は大野木のコンピューター画面を操作し、大野木の資金の流れをチェックした。
「世界の銀行に万遍無く送金しているわ。しかし、これではどこに最終的に資金が流れたかはわからない」
聖華は携帯電話で龍志に報告した。
「お父様、大野木は自害しました。大野木がインサイダーで得た資金を最終的にどこに流していたかは、大野木のコンピューター操作履歴からさらなる調査が必要です」
「そうか」
次の瞬間、龍志の声の向こうから銃声が聖華の耳に飛び込んできた。
「お父様、大丈夫?お父様?」
聖華の言葉に龍志の返事はなかった。

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2008年5月 8日 (木)

第9章
  武蔵を超えろ!ジャガーVS蛇真 霊峰の戦い

第9章 (4)

ジャガーは霊峰堂の最上階へと階段を駆け上がりながら、亡き育ての親、正邪虎鉄との剣の修行の日々を想い出していた。
「ジャガー、蛇真を倒せるのはおそらくこの世でお前しかいないであろう」
「親父、その意味は?」
「蛇真の「百蛇剣」はそう簡単に見切ることの出来る剣ではない。一度その剣を見たもの受けたことがあるものしか見切ることは出来ないであろう。わしも蛇真との初対決ではあやつの「百蛇剣」を見切る自信はない。しかし、おまえはあの剣を見ている。それに一瞬ではあるがあの剣を本能的に見切っている」
「しかし、親父。俺も正直、もう一度対決したときに見切れるか自信がない」
「まあ、話を聞け。蛇真が幾ら剣の達人とはいえ同じ人間。おそらく蛇真が「百蛇剣」をマッハのスピードで繰り出せるのは、わしの推測では4分間だけだ。やつも馬鹿ではない。その弱点は当然知っている。つまり、4分以上かかる勝負はしないということだ」
「親父。では、長期戦に落ち込めば」
「ジャガー、話を聞けと言っただろ。4分以上の勝負はしない。しかしそうとて、3分から4分までの間であれば必ず隙がでるはず。「百蛇剣」のスピードも落ちる可能性があるということだ。そこでだ、今日からお前には二刀流の修行をしてもらう」
「二刀流?あの宮本武蔵が極めた、あの二刀流か?」
「如何にも。「百蛇剣」を一本の剣で受け止め、そして3分から4分までの間で奴のスピードが落ちたところでもう一本の剣で攻撃をするということだ。奴を倒す手はそれしかない」
「親父は俺に武蔵になれと」
「いや違う、武蔵を超えてみろ!宮本武蔵という剣豪ほど「生」というものを土壇場で、いや、生死の裂け目で見つけ出すことのできた男はいない。たとえそれがどんな手であってもだ。我々人間は実に弱い生き物だ。誰でも簡単にどん底に追いやられる。しかし、そのどん底で「生」を見出せることのできる本能はだれでももっている。その本能を出すことのできる人間こそが生き残ることができるのだ。ジャガーよ、もう一度言う。武蔵を超えろ!」
ジャガーは最上階に到着した。そして部屋の扉を躊躇なく開けたのであった。
その部屋には蛇真の殺気が漂っていた。ジャガーの額の傷はその殺気を感じ取っていた。
部屋の中央では蛇真が中国剣を持って待ち構えていた。
「よくぞここまで来たなジャガー」
「俺の額の傷が、お前の汚い殺気でうずいている」
「あの時の傷か?」
「いかにも。お陰で俺はお前のように汚い殺気を放つ輩を感じることが出来るようになった。蛇真!お嬢さんはどこだ?」
「まあ、慌てるな。その前にお前に話しておくことがある。私は中国の山奥で育ち、両親の顔すらも知らない子供だった。盗みを働いて生きて行くのが精一杯でな。そんなとき「あのお方」に拾われた。おそらく私の類まれなる運動神経に目を掛けて頂いたのが理由であろう。それから「ブラックスネーク」を結成し、「あのお方」の命令で当時、高度成長を遂げバブルで浮かれる日本から様々な品物を盗み、「あのお方」に献上した。「あのお方」はたいそう喜んでくれたものだ。その後「あのお方」はこの世を去り、そして私はその意志を次ぐ方を誕生させ、「あのお方」の再来を育てることができたのだ。ジャガーよ、お前やお前の仲間が幾ら立ちはだかろうと「あのお方」の意志を継ぐ人にはかなうまい。どうだ、私の片腕にならぬか?そうすればお前の心を寄せる女も助けてやる。どうだ」
「人の道外せばそこは地獄道、この先一歩も通しゃしね~。蛇真、いや三代目鬼前組組長の敵。お前だけはこのコンプライアンス・ジャガーが絶対に許さん。」
ジャガーは蛇真の胸を右人差し指で差した後、その手で拳を握り締め、自らの胸元に引戻しながらこう言った。
「あんたの人としての良心取り戻しに来たぜ」
「残念だな、ジャガー。それが答えか。分かった。ではお前が心を寄せる彼女とはお別れだ」
蛇真がそう告げると、壁の向こうに大きな水槽が現われた。そして蛇真が指を鳴らした瞬間、縄で両手両脚を縄で縛られた聖華が水槽の中に入れられたのであった。
聖華は水槽の中に入れられながら、ジャガーが助けに来てくれたことに気がついた。その瞳はジャガーを誰よりも信じる目をしていたのであった。
「おのれ、蛇真、汚い真似を」
「ジャガー、お前の大切な彼女が生き絶えるまで4分だ。その間に私を倒してみよ」
「望むところだ」
ジャガーは「ジャガーの爪」を長刀サイズに、蛇真は両手の中国剣をくまどりの如き高速回転させ「百蛇剣」の体制に入った。
蛇真の「百蛇剣」はジャガーをマッハのスピードで襲った。しかし、ジャガーは虎鉄との修行により、数百と繰り出される蛇真の剣の攻撃をなんとか交わすことができた。
「いかん。「ジャガーの爪」一刀では奴の攻撃をかわすのに精一杯だ。これでは攻撃ができない。時間がない。早く奴を倒さなければお嬢さんが息絶えてしまう」
「ハハハハ、どうしたジャガー、攻撃してこないのか?」
「いかん、ここで攻撃したら奴の術中にはまる。どうすればいいんだ」
時間はすでに3分を過ぎようとしていた。
その時、ジャガーの耳に亡き育ての親、正邪虎鉄の言葉が聞こえた。
「ジャガーよ。武蔵を超えろ!」
ジャガーは蛇真の「百蛇剣」をかわしながら、自らの剣「ジャガーの爪」に異常があるのに気がついた。それは先ほどの獅子鵬との戦いで「ジャガーの爪」に亀裂が入っていた。
「親父、分かったぞ」
次の瞬間、ジャガーは蛇真の「百蛇剣」を「ジャガーの爪」の亀裂の部分で受けた。すると「ジャガーの爪」は二本に折れた。ジャガーは折れた先を左手に握った。ジャガーは二刀流の体制をとったのであった。
時間は3分30秒を過ぎていた。水槽の中の聖華はすでに気を失っていた。
蛇真の百蛇剣に一瞬、スピードの落ちた攻撃が放たれた。
「今だ!」
ジャガーはその攻撃を右手の「ジャガーの爪」で受け、それと同時に蛇真の首を目がけて、左手に持つ「ジャガーの爪」で鋭い突きを入れた。それはまさにジャガーのたった一回の攻撃であっが、その切れ味のある突きは見事に蛇真の喉元を貫いたのであった。
「アガ~」
蛇真の手から中国剣が床に落ちた。
「「百蛇剣」破れたり!豹牙」
その時、部屋の扉が開き、二人の男が部屋に入ってきた。それは米山猿と、その肩を貸してもらっている鬼前豹牙の姿であった。
「兄貴!」
ジャガーは無言でうなずいた。
「蛇真、わが父、鬼前組三代目組長、鬼前鯨海の敵、討たしてもらう」
豹牙はそう告げると蛇真の腹部を日本刀でで刺したのであった。
蛇真は血を噴きだし、大の字に床に倒れた。
「お見事、組長」
米山 猿が豹牙を称えた。
「兄貴、これを明大さんから預かってきました」
猿はジャガーに「ゴールデンジャガーフラッシュ」を手渡した。
ジャガーはそれを受け取ると水槽目がけて投げた。水槽は「ゴーデンジャガーフラッシュ」の一撃により、亀裂がはいり、その亀裂から水が漏れて、ジャガーは間一髪のところで聖華の命を救うことができたのであった。ジャガーは猿から小型酸素ボンベを受け取り、聖華の口に当てた。
「ジャガー」
聖華は息を吹き返し、ジャガーに気がついた。
「よかったですね、兄貴」
その時、ジャガーと豹牙の剣を受け倒れたはずの蛇真が再び立ち上がった。
「ジャガーよ、私の負けだ。しかし、あのお方の再来にはお前は勝てない。味わうがよい、これから始まる本当の戦いの苦しみを。ウガ~」
蛇真はそう言い残し、再び倒れ、そして息途絶えた。
次の瞬間、部屋に3人の男たちが走り込んできた。
その三人とは生駒明大、犬飼式三、そして清野龍志であった。
「みんな無事で。ファイナルゲートは破壊されたのでは?」
「ジャガー、あの本部を誰が設計したと思う。この俺だぞ」
明大がジャガーに笑いながら言った。
「そう簡単に壊れやしないさ。ただ、電気系統がやられてな、修復には時間がかかる」
「さすが趣味の悪い明大さん」
「何」
「しかし、今回も貴方の発明に命を助けられた。感謝します」
ジャガーは明大の発明に感謝したのであった。
「お前こそ、見事な戦いだったな」
ジャガーと明大は仲直りをし、お互いの才能を改めて認めあったのであった。
「式さん、ところでここまでどうやって来たのですか?」
「あの小型セスナでな」
式三は霊峰堂の外に停めてある小型ジェット機を指さした。
「門長、中村主任研究員たちは?」
「先ほど、私たちが救出した」
「よかった」
その時、聖華がそっと上半身を上げた。
「お父様、ついに「あの男の再来」が動き出します」
「そうか、ついにその時が来たか」
「お嬢さん、先日の国土交通省の次官といい、蛇真といい、「あのお方の再来」とは?訳が分かからないのですが」
「ジャガー、私たちの本当の戦いはこれからということです」
「よし、引き揚げるぞ」
龍志が全員に声をかけた。
「はい」
ジャガーをはじめとするファイナルゲートの一員と、鬼前組の鬼前豹牙と米山猿は「ブラックスネーク」の本部霊峰堂をあとにしたのであった。
しかし、ジャガーは聖華が言ったこれから起こる本当の戦いとは一体何なのかまだこの時点では知るよしもなかったのであった。

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2008年4月18日 (金)

第9章
  武蔵を超えろ!ジャガーVS蛇真 霊峰の戦い

第9章 (3)

ジャガーを乗せたヘリコプターは中国の奥地の山へと向かった。
「ジャガー、ようこそわが霊峰堂へ」
蛇真の声がヘリコプターの中から聞こえてきた。
「霊峰堂?」
「そうだ。わが研究所であり道場でもある。研究所では今、中村主任研究員が画期的な増強剤「ゴット・パワー」の製薬をしている。この「ゴット・パワー」欲しさに世界中のアスリートたちが高額なこの薬を買いに来た。この間など、アメリカンフットボールのスーパースターが1錠1億円で購入しにきたわ。人間などみな哀れだな、名誉や栄光を手にいれるため、いくらでも金をつぎ込む」
「やはり、ブラックスネークが昨今のアスリートの活躍を影で操っていたのか」
「いかにも。この「ゴット・パワー」は今はアスリートに使用させているが、今後は軍隊に使用させるつもりだ。そう、今ある国と金銭交渉中でな。その国に売ればお前の国、日本など赤子の手を捻るがごとく征服されるであろうな」
「何、俺がそうはさせない」
「威勢がいいな、ジャガー。正直に言おう。これらの計画を成功させるためにはお前たちが邪魔なのだ。特にお前、ジャガーがな。お前さえ葬れば、あのお方の世界が構築される」
「お嬢さんを返せ、蛇真勝負しろ!」
「慌てるな。お前が私の与えた試練をクリアーすれば、「百蛇剣」をいやというほど味わってもらう予定だ」
ヘリコプターは到着した。そこは霧が立ち込め、酸素は薄く、山々が立ち並ぶ、中国の奥地であった。
ジャガーはヘリコプターを降り、1歩1歩ゆっくり進んだ。すると霧が晴れてきた。そして目の前には巨大な寺院が現れたのであった。
「これが蛇真が言っていた『霊峰堂』、おそらくここがブラックスネークの本部」
「よく来たなジャガー。それでは次の試練を与える。『霊峰堂』の1階に行け。そこにはわがブラックスネークの血に飢えた殺戮者が数百人居る。その全員を倒してみよ」
蛇真の言葉がジャガーの耳に入った。
「望むところ」
ジャガーはすでに戦闘モードに入っていた。そして「ジャガーの爪」を長刀サイズにして「霊峰堂」の扉を開けたのであった。
扉の中には、まるで血に飢えた狼たちが何百匹もいるような気配が漂っており、その眼光が一斉に扉を開けたジャガーに注がれたのであった。
「雑魚ども、かかって来い」
ジャガーは叫んだ。
試練その2、ジャガー対ブラックスネーク殺戮軍団の戦いが始まった。
ジャガーは次から次に襲いかかるブラックスネークを倒していった。殺戮軍団の数は、以前横浜港でジャガーが相手をした数よりも多かった。しかし、ジャガーはここ数ケ月でその剣の腕をさらに上げており、殺戮軍団などジャガーにとっては小学生を相手にするのと等しく、すでに敵ではなかった。ジャガーはわずか数十分で数百人のブラックスネークの殺戮軍団を全員倒したのであった。
「蛇真、雑魚など相手にさせるな、勝負だ」
「さすがジャガー。お前また腕を上げたな、敵ながら誉めてやる。雑魚を相手させたことは詫びよう。よし次の試練だ。2階にわがブラックスネークNO.2の腕の持ち主がお前を待っている。その男を倒してみよ、それが試練3だ」
ジャガーはその言葉を聞くと、なにも言わずに「霊峰堂」の2階へと階段を駆け上がっていった。そして、2階の扉を開けたのであった。
部屋の奥には1人の男が椅子に腰をかけ、ジャガーが来るのを待っていた。
「お前がジャガーか。わが弟を倒した男」
男はそう言いながら立ちあがった。その背は3m近くあり、全身は濃い毛で覆われ、手には大きな鉈が握られていた。
「わが名は獅子鵬、横浜でお前に倒された獅子王の兄じゃ」
「どおりで見覚えがある風貌だ」
(ウオ~)
獅子鵬はジャガーに鉈を振りかざし襲いかかった。ジャガーは「ジャガーの爪」でその鉈を受け止めた。
「お前、あの毛もじゃよりパワーがあるな」
兄獅子鵬は弟獅子王より、パワーだけではなくスピードも上であった。
ジャガーは獅子鵬の攻撃をかわすのに精一杯であった。
ジャガーに焦りの色が見え始めた。
「いかん。先ほどの数百人との戦いが俺の持久力を奪っている、このままではやられる」
その時、「ジャガーの爪」は獅子鵬の鉈のパワーに負け、ジャガーの手から飛ばされてしまった。
ジャガーは獅子王との横浜の戦いと同じように、丸腰になってしまった。
「くそ~」
ジャガーは「ジャガーフラッシュ」を見舞うものの、獅子鵬にかわされてしまった。
腕時計のレーザー光線もエネルギー切れにより、光線を出すことはできなかった。
「ハハハハ、お前の命もこれまで」
ジャガーはついに追い詰められてしまった。
「いかん」
その時ジャガーは、腕時計にもうひとつボタンがついているのに気がついた。
(ウオ~)
「死ね~」
獅子鵬は鉈をジャガーの頭上に構えた。
そしてその鉈を振りおろした。
(ビシュ~)
妙な音が獅子鵬の延髄のあたりでした。
「今だ」
ジャガーは飛ばされた「ジャガーの爪」を拾い、獅子鵬の首にジャガーの爪の剣を撃ち込んだ。
(ウガ~)
獅子鵬はまるで大山が数秒で崩れおちるがごとく、その場に倒れこんだのであった。
「そうか。このボタンにはこんな仕掛けがあったんだ」
腕時計のもうひとつのボタンには短針が示す方向に、遠隔操作で「ジャガーフラッシュ」が放たれる仕組みであった。ジャガーの放った「ジャガーフラッシュ」は獅子鵬に避けられ壁に刺さっていたが、同時に短針の示す方向、つまり、獅子鵬の背後からもジャガーフラッシュが放たれ、見事に獅子鵬の延髄に突き刺さったのであった。
「明大さん、やはりあんたは趣味が悪い。しかし、危機一髪で助かった」
ジャガーは二度までも明大の仕掛けに助けられたことを感謝したのであった。
「蛇真出て来い。余興はもう終わりにしよう。お嬢さんを返せ、そして勝負しろ」
「ジャガー、見事だ。私も武道家のはしくれ。では、相手をしよう。上にあがって来い。
いざ勝負だ」
「おう、望むところだ」
ジャガーはついに最後の試練のため、蛇真の待つ霊峰堂の最上階を目指したのであった。

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2008年4月 8日 (火)

第9章
  武蔵を超えろ!ジャガーVS蛇真 霊峰の戦い

第9章 (2)

ジャガーと聖華が座るソファーはレーザー光線で囲まれていた。少しでも動くとレーザーで腕や足を切り落とされるのであった。
「しまった」
「ハハハハ、ジャガー、どうだ」
テレビモニターに趙 蛇真の姿が映し出されていた。
「蛇真、汚い真似を。1対1で勝負しろ」
ジャガーは蛇真に吠えた。
「まあ、焦るな。いずれ剣を交えてやる。しかし、お前が私の用意した試練をすべてクリアしたうえでの話だがな。まずはお前が愛する女、聖華は私たちが預かる」
蛇真がそう告げると聖華の座るソファーの下の床が開き、聖華は地下室へと落ちて行った。
(ジャガー)
聖華のジャガーを呼ぶ声がこだました。
「おのれ、蛇真。お嬢さんは関係ない。俺と勝負しろ」
「そうはいかん、お前の腕は私が一番知っている。お前の弱点を探っていたら、お前がこの女に執着していることが判明した。この女にはお前が苦しむ姿を見てもらわなければな。それともうひとつ、この男を知っているか?」
画面に映しだされたのは鬼前組の熊田であった。
「こんなスパイをよこしてきたが、数日前に鬼前組に送り返した。ただし、もう立つことも喋ることもできないであろう。まあ、命だけは助けてやったがな」
「くそ~、どこまで汚いんだ」
「そうそう忘れていた。お前のお友達たち、ファイナルゲートとか言ったな」
スクリーンの映像が新宿歌舞伎町に切り替わり、
そこにはファイナルゲートの本部があるプールバーが燃え上がっていた。
「中山競馬場での格闘の前にな、先ほどのお嬢さんを拉致したとき、発信機を付けさせてもらった。そしてお前たちのアジトを探り、ビリヤードの客に扮した私の部下が爆弾を仕掛け爆破した。お友達たちは粉々だろう」
「くそ~」
ジャガーは言葉が出なかった。
「それではジャガー、始めよう。試練1だ」
趙 蛇真がそう告げると部屋の明かりが消された。
ジャガーはレーザー光線が放たれる椅子ごとコンテナーに入れられた。そのコンテナーは大型トラックに乗せられ運ばれて行った。そして、数十分後トラックは止まった。そして再び趙 蛇真の声がジャガーが詰められたコンテナーに聞こえてきたのであった。
「ジャガー、まずは試練1だ。果たして脱出できるかな?」
「蛇真、お嬢さんはどこだ」
「見事脱出できたら教えてやろう」
その言葉が終らないうちに、コンテナー内に水が入ってきた。コンテナーは利根川の上流に投げ捨てられたのであった。
「くそ~、動けばレーザーに切り刻まれる。どうすれば?」
ジャガーは絶対絶命であった。
その時、ジャガーは明大からもらった腕時計に気がついた。
「なりふり構ってはいられない。明大さんのことだ、趣味の悪い仕掛けがこの腕時計にあるに違いない。」ジャガーは腕時計の手首側に、何やらスイッチのようなものがついているのに気がついた。ジャガーはそのスイッチを押すために、ソファーに腕時計を押しつけた。すると時計の長針から同じようなレーザー光線が放たれたのであった。
「明大さん、恩にきるぜ」
ジャガーは時計の長針から放たれるレーザー光線で、ソファーの周りを囲むレーザー光線の発射装置を破壊した。そしてソファーから解き放たれたのであった。
ジャガーは今度はコンテナーの蓋をレーザー光線で破壊した。次の瞬間、川の水が一気にコンテナーに流れ込んで来た。ジャガーは慌ててコンテナーからその身を放りだした。
しかしながら、川の流れは速く、ジャガーは川の中をもがきながら、その意識はしだいに薄れていったのであった。そしてやがて気を失ったのであった。

それからどれだけ時間が経ったのであろう。
ジャガーは意識を取り戻した。
「ジャガーの旦那、大丈夫ですか」
ジャガーは見覚えのある男の顔が目の前にあるのに気がついた。
「お前は確か、新宿の公園にいる井森佐介」
「良かった、気がついて。我々の仲間が川の下流で見つけた時は意識不明で、心配しましたぜ」
「そうか、俺は何とか利根川から脱出できたのか。佐介たちが助けてくれたのか、恩にきる」
「何をおっしゃる、旦那こそ私の命の恩人」
「ところで今日は何日だ」「27日です」
「何、あれから2日も経ったのか。こうしてはおれぬ。お嬢さんを救出しなければ」
ジャガーは明大が開発した水の影響を受けない携帯電話を取り出し、ファイナルゲートに連絡をした。しかし、誰も応答するものはいなかった。
「やはり、あの映像どおり、門長たちも奴らにやられたのか?」
すると次の瞬間、ジャガーの携帯電話がなった。
「ハハハハ、どうやら生きているようだな、ジャガー」
「その声は趙 蛇真。お前の試練1とやらクリアーしたぞ、お嬢さんはどこだ」
「よかろう。約束どおり、今から10分後にお前のいる新宿の公園に迎えをやろう。そしてここに来い、お前の愛しい人もお待ちだ」
「蛇真、許さん」
「ハハハハ、ジャガー、では後で会おう」
そう蛇真は告げると、携帯電話は切れた。
「佐介、頼みがある。この手紙を横浜の鬼前組米山 猿まで届けてくれ、大至急だ。
それとこの携帯電話もだ。俺の衣服には液体発信機がついている。この携帯電話には俺の居場所が分かる探知装置がついている」
「分かりました」
佐介は口笛を二度鳴らした。
すると池袋の彩蔵がジャガーと佐介の前に現れた。
「彩蔵、ジャガーの旦那の頼みだ。足の速いお前なら、すぐに届けられるだろう」
「佐介、ジャガーの旦那。私に任せてください」
「頼むぞ、彩蔵」
彩蔵がジャガーの手紙と携帯電話を鬼前組に届けるためその場を去ってから数分後、新宿の公園には一台のヘリコプターがうなりをあげて降りてきた。
ジャガーはそのヘリコプターに一人乗り込んだのであった。
「旦那、気をつけて」
「佐介、世話になった。また会おう」
佐介はジャガーの乗り込んだヘリコプターを見上げ、ジャガーの無事を祈るのであった。

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2008年3月28日 (金)

第9章
  武蔵を超えろ!ジャガーVS蛇真 霊峰の戦い

第9章 (1)

「門長、内部告発者からの入電です」
「明大、画面を切り替えてくれ」
「了解しました」
その日、ファイナルゲートのメンバーは新たな内部告発者からの連絡を受けるため歌舞伎町のプールバーの地下にあるファイナルゲート本部に集まっていた。
「ファイナルゲートですか?」
「はい、こちらファイナルゲートです。私は清野聖華、ご安心を」
「私は陽関製薬の小川と申します。実は私の上司の中村主任研究員が2ケ月ほど前から行方不明で、会社もその件に関しては捜索しているみたいですが、いっこうに何も手がかりがなく」
「警察に連絡は?」
「いえ、それが何故か警察には会社は捜索願を出していないのです」
「陽関製薬の中村主任研究員は栄養剤研究の第一人者ですね」
龍志は中村主任研究員のことを知っていた。
「はい、西洋薬品の野呂主任研究員と並んで日本の誇れる研究者の一人です」
「野呂主任研究員。あのインフルエンザの即効薬を開発した」
「そうです」
ジャガーたちは数ヶ月前の中山競馬場でのブラックスネークとの戦いを思い出していた。
「これは極秘事項ですが、中村主任研究員はドーピングに引っかからない最強の筋肉増強剤を開発したのです」
「増強剤?」
「そうです。人の運動能力を1.2倍まで高めることのできる増強剤です」
「ちょっと待ってください。最近のスポーツの記録を見ると、100m走や砲丸投げにマラソンの世界記録の更新、世界最速球のメジャー投手、年間ホームラン記録更新などなどさまざまな記録と怪物選手が突然現れているが、もしかしてその薬が関係しているのでは?」
明大が質問した。
「その可能性は高いと思います。しかし、この増強剤はまだ未完成で、肝臓での有毒物質の分解、解毒が上手くいかない場合は死に足ります」
「待てよ。あの中山競馬場での有馬記念の優勝馬、大穴の『セイショウオウ』が突然倒れたのもその増強剤のせいか?」
ジャガーは呟いた。
「おそらく、『セイショウオウ』は実験に使われたのでしょう。ちょうど、有馬記念の2週間前に中村主任研究員の行方が分からなくなっています」
「ということは、今回の件はブラックスネークが黒幕」
ファイナルゲートのメンバーは、ブラックスネークとの決着が迫っていることを全員感じとっていた。
「実は、その行方不明の中村主任研究員から昨日、メールが届いたのです。
私は無事だ。しかしある組織に増強剤『ゴット・パワー』』を造らされている。
今、利根川の上流にある研究所にいると。ファイナルゲートのみなさん、どうか中村主任研究員を助けだしてください。増強剤は未完成です。これ以上使用すれば多くのアスリートたちが命を落とすことになります。一刻も早く阻止してください」
「小川さん、あなたの勇気に感謝します」
聖華が小川に一礼した。そして、小川はファイナルゲートとの通信を切ったのであった。「明大、どうだ」
龍志が質問した。
「はい、実は微かに嘘発見機の反応があったのですが問題ないと思います。私は問題ないと、彼の証言は正しいと判断します」
「いや、明大さん、あんたの判断は誤っている。あの小川という男、殺気を感じた。俺のこの額の傷がうずいた」
ジャガーが明大の意見に反論した。
「何だと。欧州のスナイパーの変装を見破れなかったお前の殺気の勘とやらは当てになるのか?」
「明大さんの嘘発見機も、他国の女スパイの罠を見破ることが出来なかったじゃないですか」
「まあまあ、ご両人」
式三が二人に割って入った。
「しかし、中村主任研究員が行方不明であるのが事実なら、我々としては救出に向かわなければならない。式さん、中村主任の家族を中心に事実確認を至急頼む」
式三は龍志の言葉が終わらないうちにファイナルゲート本部を出て行った。
「聖華とジャガーは利根川の上流の研究所に向かってくれ。場所は本部との情報交換で確定しよう」
「了解した」
ジャガーと聖華は急いでファイナルゲートを出ようとした。
「ジャガー、これを持って行け」
明大がジャガーに腕時計を渡した。
「明大さん、あんたの趣味の悪い仕掛けは当てにはしない」
「勝手にしろ」
ジャガーと明大は目を合わせることはなかった。そして、ジャガーは聖華とともに愛車の紺色のジャガーで利根川の上流の研究所を目指すのであった。
「ファイナルゲートゲートフォールディング」
龍志は高らかに今回のミッションを宣言した。
明大はその言葉と同時に、利根川上流付近を衛星カメラで探索するのであった。

ジャガーたちは陽関製薬の小川が言っていた、中村主任研究員が拘束されている利根川上流にある研究所に到着した。
「お嬢さん、今回の敵はブラックスネークです。私が一人で探索します。ここで待っていてください」
「何を言っているんですか。探索は私の仕事です。ジャガーは中村主任研究員を救出することだけを考えていなさい」
聖華は相変わらず強気だった。ジャガーはそうした聖華の一面が好きであった。しかし、同時に聖華を愛し始めていることを、恋愛をしたことのないジャガーは気づいていなかった。
今は聖華を守ることが生きている証であり、最大の目的であった。そのことはジャガーの胸に深く強く刻まれていることは言うまでもなかった。
「お嬢さん、周りを探索しましょう」
「何を言っているの、正面から行きましょう」
聖華はそう言うと研究所の正面玄関の扉を開け、研究所の中に入って行った。
研究所のロビーには誰もいなかった。呼び鈴だけが寂しく置いてあるだけであった。
聖華が呼び鈴を鳴らすと中から一人の白衣を着た男が出てきた。
「はい。何か御用ですか?」
「実は、私たちは人を探しておりまして」
「そうですか。では、奥の部屋へどうぞ」
ジャガーと聖華は研究所の1階の奥にある応接室に通されたのであった。
その時、聖華の携帯電話がなった。
「はい、聖華。そうですか、分かりました」
応接室のソファーに腰をおろしたジャガーに聖華は報告した。
「ジャガー、式さんからよ。やはり中村主任研究員はここ数ケ月家に戻っていないわ」
「そうですか」
その時ジャガーは額を抑えた。殺気を感じたのだ。
「お嬢さん、警戒してください」
しかし、その言葉はすでに遅かったのであった。

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2008年3月18日 (火)

第8章
  法令遵守の落とし穴

第8章 (4)

高平の放った銃弾は龍志の顔面に向かって飛んで行った。
龍志は間一髪のところでその銃弾を除けたのだ。
「今度は外さないぞ」
高平は再び銃弾を放とうとしていた。
その時であった。部屋に一人の女性が飛び込んで来た。
「銃を捨てなさい」
それは聖華であった。聖華もまた銃口を高平に向けるのであった。
「聖華」
「くそ~」
高平はベランダに逃げ、隣の部屋に移動した。そして部屋を出て非常階段から自らの車に乗り込んだのであった。
「車を出せ」
「はい」
高平は待機していた車の運転手に叫んだ。
そしてホテルの駐車場の出口に向かおうとしたその時、出口に一人の男が仁王立ちで立ちふさがっているのに高平の運転手は気がついた。
「次官、男が出口にいます。どうしますか?」
「えい~、構わん。突っ切れ」
運転手は躊躇っていた。
「代われ」
高平は後部座席から降り、運転手の襟首を掴み車から引きずり下ろしたのであった。そして、自ら運転席に乗り込み、アクセルを踏み込んで、出口に立ちはだかる男に突進していったのであった。高平はその男を引く寸前目をつぶった。そして、通り過ぎた後、一端ブレーキを踏んで車を止めたのであった。そして、バックミラーで男の死体がないか確認した。
しかし、後ろに横たわる男の姿はなかった。高平は気を取り直して、再びアクセルを踏んだが車は動かなかった。
「人の道外せばそこは地獄道、この先一歩も通しゃしねぇ~」
先ほどの男が高平の車の前に再び現れ、立ちはだかった。
高平は車を降り、銃口をその男に向けた。
「お前は誰だ?」
「俺か、人は俺をコンプライアンス・ジャガーと呼ぶ」
その男は高平次官の胸を右人差し指で差した後、その手で拳を握り締め、自らの胸元に引戻しながらこう言った。
「高平次官、あんたの良心取り戻しに来たぜ」
その男はジャガーであった。ジャガーは『ジャガーフラッシュ』を高平の車の四輪に投げ込みパンクさせ、走行できなくさせたのであった。
「ジャガー、噂のファイナルゲートの腕のたつ男とはお前のことか?」
「次官の耳にまで届いているとは光栄です」
ジャガーはそう告げると、長刀サイズの『ジャガーの爪』で高平の銃を跳ねとばしたのであった。
そこへ、警察庁の井上管理官が部下を20名ほど従えてやって来た。
「ジャガー、またお手柄だな」
井上監理官は高平次官を連行するよう部下に命令した。
その時、高平次官はジャガーに言葉をぶつけた。
「ジャガーとやら、もうすぐ『あのお方の三世』が復活する。そうすればお前やファイナルゲートなど、赤子の手を捻るより簡単に倒されるであろう。ハハハハ、その時を楽しみにしていろ」
ジャガーはその言葉の意味が分からなかった。
そこへ、龍志、聖華がやって来た。
「お嬢さん、式さんは」
「今はそっとしておいてあげて。石田さんを助けることのできなかった自分の無力さを
責めているわ」
「そうですか」
「お嬢さん、高平が最後に変なことを言ってました。『あのお方の三世』が復活すると」
ジャガーの言葉を聞いた龍志の顔色が変わった。
「お父様、遂に彼が目覚めたようですね」
ジャガーは聖華の言葉の意味が分からなかった。
「ジャガー、時が来たら、お話しします」
聖華はジャガーに答えた。
ジャガーは聖華の言葉を受け、龍志を見つめるのであった。
しかし、龍志はジャガーの視線に自らの視線を合わせようとはしなかったのである。

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2008年3月 7日 (金)

第8章
  法令遵守の落とし穴

第8章 (3)

ジャガーと式三は慌てて店を出て車に乗り込んだ。そして、裏口から逃げようとしている車を追ったのであった。
「どうやら、奴らは我々が何か探っていることに気がついたみたいですね」
「ジャガー、そうだな。お前と私では素人でも怪しいと気づくわ、ハハハハ」
式三は軽く笑った。
「式さん、あの車に補償者が乗っています」
ジャガーはアクセルを踏み込んだ。しかし、前の車はそれ以上にアクセルを踏み込んだのであった。紺色のジャガーと補償者が乗るアスリートは次から次へと車を追い越し、信号も無視し、カーチェイスが続いたのであった。
「式さん、こうなったら奥の手で行きます。しっかりシートベルトをしていてください」
ジャガーはアスリートの進む道を先回りした。
アスリートはジャガーを振り切ったと安心してスピードを弱めた。その時であった。
アスリートの後部トランクに横から追突する車が現れた。そして、アスリートは急ブレーキを踏んで、止まった。追突したのは先回りしたジャガーであった。
そしてジャガーもまたその場で停止したのであった。
「この野郎!」
アスリートから3人の男たちが降りて来た。
ジャガーはすかさず『ジャガーの爪』を長刀サイズにして、その男たちの前に立ちはだかった。三人の殺し屋と思われる男たちはナイフを振り回し、ジャガーに襲いかかったが、ジャガーの敵ではなかった。ジャガーは三人を倒すのに30秒と時間を要しなかった。そしてその中の一人を捕まえて、縛り上げた。
「おい、『しゃぶりの石松』はどこに居る」
「石松さんは...」
「そうか、ご苦労さん」
「ジャガー、補償者も無事だ」
「式さん、どうやら先ほどの話、本当みたいですね」
ジャガーと式三は補償者を無事救出し、そして『しゃぶりの石松』の居場所を聞き出したのであった。
「ジャガー、石田の命が危ない。我々が最後の補償者を救出したということは、石田は証拠を消すため命を狙われる。急ごう!」
「しかし、今のクラッシュで愛車が動かない」
「門長と聖華お嬢さんに至急連絡だ」
ジャガーは聖華と明大に、式三は龍志に、至急ことの真相を報告した。

その頃、ホテルオーサキの一室では国土交通省の高平次官と『しゃぶりの石松』こと石田松蔵が、香鐘堂の新商品発表会の前日に香鐘堂のスキャンダルを公表する計画を話し合っていた。
「香鐘堂にダメージを与え、将来的には外資の化粧品会社と合併させる。今回も上手くいきそうだな」
「高平さんも相当の悪ですね」
「何を言っているんだ。これもすべて日本企業のためだ」
その時、部屋の扉をノックする者がいた。
(コンコン)
「高平次官、私はファイナルゲートの清野と申します。お話したいことが」
「高平さん、ファイナルゲートとは?」
石田は警戒した。
「安心しろ、内部告発者対応の秘密情報部隊と聞いている。弁護士たちに何ができる」
高平は部屋の扉を開けた。
「失礼します」
「なぜ私がここにいることが分かった」
「はい、ある筋からあなたに不穏な動きがあると聞き、以前から送信機をあなたに付けさせていただいておりました」
「送信機?そんな機械は私には付いていないが」
「今や送信機は機械とは限りません。我々が開発した送信機は液体であり、貴方は毎日その液体の送信機の入った水をお飲みです」
「何?」
「貴方の秘書の出されるお茶には、我々の液状送信機が混入されています」
高平の顔色が変わった。
「話を短刀直入に申しましょう。あなたはそこにいる『しゃぶりの石松』こと石田松蔵に企業の内部情報のスキャンダルを探らせ、それをネタに企業を石松に脅迫させ、最後にはそのネタを元に企業を窮地に追い込み、困ったところに兼ねてから依頼を受けている企業からM&Aへと運ぶように影で操ってきた。最近の食品メーカーの合併、住宅建材メーカーの合併、すべてそれは貴方の仕業、そして今度は、化粧品会社ですか?」
「ハハハハ、いいか清野くん。この日本でコンプライアンス(法令遵守)など10年早い。どの企業や組織も何らかの弱みは持っている。それをすぐさま法令遵守などと言い出しても無理であろう。日本の企業のレベルではその弱みを隠すことしかできないであろう。
私はそうした愚かな企業を淘汰させ、そして企業として相応しい風格の組織を作っているのだ。しかし、これもすべてあのお方の考えなのだがな。
君は弁護士だったね。ところで私が今回の黒幕だという証拠はどこにあるのだね?」
「証拠?この入金データーを見てください。M&Aした会社、吸収された方も口止め料として振り込んでいる。そして吸収した会社も貴方に成功報酬を払っているじゃないですか」
高平は慌てて、龍志が突き付けた資料に目を通した。
「どうして、この資料が君の手に」
「だから説明したじゃないですか。貴方はマークされていたと」
「ハハハハ、清野くん。しかし、この事実を知っているのはどうやら君とこの石松だけだな」
高平はそう告げると背広の内ポケットから拳銃を取り出した。そして、龍志にその銃口を向けたのであった。
「動くな、清野くん」
そう高平は龍志に告げた次の瞬間、銃口は龍志の反対方向へと向けられ、銃弾が放たれたのであった。
「うっ~、高平さん、なぜ俺を撃つんですか?」
その銃弾は石松の心臓に命中した。
「だから言ったじゃないか。この件を知っているのはお前と清野くんだけだと」
そして、『しゃぶりの石松』は息絶えたのであった。
「では、今度は清野くんにも死んでもらおう」
高平は銃口を龍志に向けたのであった。

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2008年2月28日 (木)

第8章
  法令遵守の落とし穴

第8章 (2)

「式さん、どうしたんですか?その石松とやらと何か関係でも?」
聖華は心配しながら式三に質問した。
「実はその『しゃぶりの石松』いや石田松蔵(いしだまつぞう)は私の弟子です」
「何?」
今まで背を壁にもたれかけながら聞いていたジャガーも、式三の言葉にその背を壁にもたれかけるのを止めたのであった。
「門長、奴の居場所は私が知っています。必ず私がその最後の補償者の居場所を吐かして見せます」
「式三、では『しゃぶりの石松』への接触は任せます。ただ、ジャガーを同伴させてください」
「聖華は香鐘堂の他のモニターを当たってくれ。最後のモニターとの交遊はなかったのかどうか。明大は香鐘堂の伊達常務についてくれ。何か変化がないか?私は今回の件、どうやら何か裏で動いているものの気配を感じる。気になる組織を探ってみる」
「清野さん、俺は式さんではなくお嬢さんと同伴させてくれ」
「ジャガー、だめだ。お前は式さんに手を貸すのだ」
その時、明大がジャガーの横に近づいて来た。
「ジャガー、先ほどのストレートフラッシュ、気に入ったか?」
「ああ、あんたが俺に最初からカードを配ってくれたことか」
「何だ、気づいていたか?ところでお前、お嬢さんに惚れたんだろ、隠さなくていいから。」
明大は、ジャガーが聖華を愛しているからファイナルゲートに留まっていると勘違いしていた。
「この携帯電話を持って行け、この携帯電話にはチョイと仕掛けがあってな」
「明大さんよ、いつもの趣味の悪い仕掛けだろ?」
明大はジャガーにそっと携帯電話を手渡した。
「では諸君、ファイナルゲート、ゲートホールディング」
龍志が高らかに今回のミッションを宣言した。
式三とジャガーは足早に『しゃぶりの石松』のアジトに向かうのであった。

ジャガーと式三は『しゅぶりの石松』のアジトへと向かうため、ジャガーの愛車の紺色のジャガーをとばした。
「式さん、先ほど石松はご自分の弟子とおっしゃってましたが?」
ジャガーはハンドルを握りながらさりげ無く式三に質問した。
「いかにも。石田松蔵は私が新聞社の記者をしていた時の部下だった。あいつには双子の弟がいて、しかしその弟は若くしてガンに侵されてな。治療費を稼ぐため会社を辞めて、割のいいゴシップ紙の記者に転職したんだ。その甲斐もあって、弟さんも回復に向っていたんだ。しかし、その弟さんは、結局、自らの命を絶つ運命を選んだ。
あいつは金を稼ぐため相当ヤバい記事にも手を染めていてな、気がついた時には足を洗うことができなくなっていた。私は昔の上司として奴を助けるため、タブロイド紙を紹介してやったんだが、俺は裏の記事で生きていくとか言ってな。断りやがったんだ。その後、私も忙しさと共に奴のことは忘れていたが、ここ数年『しゃぶりの石松』という男が、企業の内情を探りその弱みをある組織と組んで脅しているという噂を耳にした。私も調べたのだが、どうやら奴と繋がっているのは国土通産省の高平次官という噂に行き着いた。門長は今その線を当たっていると思う。石田もその高平に利用されているだけであろう。時が来ればお払い箱となり、捨てられるのが目に見えている。私は石田を今度こそ助けたいのだ」
「分かりました、式さん。しかし、その前に香鐘堂の補償者は、おそらく奴らに拉致されているでしょう。彼らの救出を優先しましょう」
「ああ、ジャガー、すまん。取り乱してしまって」
ジャガーはいつになく興奮気味に話す式三に、冷静さを取り戻すように促した。
「ジャガー、ここが石田の経営するバーだ」
ジャガーは車を停め、そのバーに目をやった。
「うっ~」
ジャガーは自分の額の傷を抑えた。
「すごい殺気だ。式さん、このバーには数人の殺し屋がいます。うかつに動くのは止めてください。一流の殺し屋の中にはその殺気を消すことができる者もいます。しかし、この中には血に飢えたものどもの殺気が満ち溢れています」
「了解した」
ジャガーと式三は車を降り、『しゃぶりの石松』こと石田松蔵の経営するバーの扉を開け、その中に入って行ったのであった。
ジャガーと式三はバーのカウンターに着席した。
ジャガーは気がついていた。カウンターのバーテンダーはナイフを隠し持っていることを。
ウエイターは拳銃を所持していることを。
「ご注文は」
「ジントニックとブラックコーヒーを頼む」
「どうですか?このようなインテリアは」
ジャガーと式三はは打ち合わせ通り、バーを立ち上げしようとしているお客と工事請負の工務店の社員のふりをした。
「正邪さん、気に入りました。写真をお願いします」
「はい。あの~、すいません。この方は来年バーを開店する予定で色々見て歩いているんですが、どうやらこちらのインテリアが気に入ったみたいで、写真を数枚撮らせてもらってもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
ジャガーは明大から渡された携帯電話を取り出し、写真を撮り始めた。その携帯のカメラには仕掛けがあった。そのカメラは壁の向こう側を透視できるのだ。ジャガーはそのカメラで壁の向こう側の様子を眺めることができたのであった。
すると、どうやら補償者らしき女性が裏口から車に連れ込まれる様子が、カメラに写し出された。
「オーナー、時間がありません。次の店に行きましょう」
「そうか」

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2008年2月18日 (月)

第8章
  法令遵守の落とし穴

第8章 (1)

ジャガーは聖華にファイナルゲートのあるプールバーに呼び出された。
「お嬢さん、俺に話とは?」
プールバーは相変わらず、猫一匹いなくて閑散としていた。しかし、聖華の只ならぬ気配は店全体に立ちこめていたのであった。
「ジャガー、お父様と何があったのですか?答えなさい」
聖華は暁の銃弾事件から、ジャガーと父龍志の間に何かあったことを当然察していた。
「お嬢さん、お話することは何もありません」
「嘘をおっしゃい。お父様と一体何があったのですか?」
聖華の質問は繰り返された。
「では、質問を変えます。ジャガー、貴方はなぜそこまでしてファイナルゲートに留まっているのですか?お父様のため?それとも他の何かのため?確かに虎鉄おじ様の養子であるあなたは他に身よりがないため、親友であったお父様が引き取ったことは理解できます。しかし、お父様と何かあったにも関わらず、それでも、このファイナルゲートにいる理由が私には理解できません」
聖華の質問は鋭かった。ジャガーはただ、聖華の身を守るため、聖華と志を共にするためにファイナルゲートに留まっていたのであった。それも、亡き父虎鉄の命である聖華の身をを自分の命に変えても守るためであったのだ。
「お嬢さん、例えお嬢さんの質問であっても答えることはできません」
「分かりました。では勝負をしましょう。もし私が勝ったらすべてを話しなさい。もしあなたが勝ったなら、今日のところは諦めます」
人一倍気の強い聖華を抑えることはジャガーにもできなかった。
「仕方ない。お嬢さん、ではお手合せいたしましょう」
「では、ポーカーで勝負です」
(パチン)
聖華は右手の指を鳴らした。すると奥の扉から明大がトランプを切りながら出てきたのであった。
「私がディーラーをしましょう」
「明大さん、さっさと始めましょう」
明大はトランプを切りながら、カードを聖華とジャガーに5枚ずつ配った。
「私は2枚カードをチュンジします」
聖華は2枚のカードを明大から受け取った。
「ジャガーはどうだ?」
明大が質問した。
「俺はこれでいい」
「お嬢さんは」
「私もこれで勝負します」
「では、カードを拝見します」
「私はエースとキングのフルハウス」
聖華は自信満々にカードをオープンにした。
そのカードを見たジャガーは微笑んだ。
「お嬢さん、俺の勝ちです。俺はスペードの7~11までのストレートフラッシュ」
「えっ?」
聖華はジャガーのカードの引き運に驚いた。
すると次の瞬間、聖華、明大、ジャガーのいるカジノテーブルの周囲半径5mほどが床ごと地下へとエレベーターのように下がり始めたのであった。そして、ファイナルゲート本部に3人は到着したのであった。
「明大、内部告発者からの入電だ。画面を切り替えてくれ」
いつものように奥のテーブルに座っている龍志が明大に指示をした。
「門長、了解しました」
ジャガーは龍志を横目で見たが、その目は冷ややかであった。
聖華はその様子をそっと眺めるのであった。
画面には企業の幹部らしき男が映し出されていた。
「そちらファイナルゲートですか?」
「はい、ファイナルゲートです。私は清野聖華と申します」
「私が門長の清野龍志です。どうかしましたか?」
「清野先生、私は香鐘堂の常務 伊達 幹夫(だて みきお)と申します」
「香鐘堂といえば、あの昨年アジア進出を果たした、化粧品会社の?」
「はい、そうです」
「何か、気になることでも?」
「実は、弊社は新商品を開発するため、数名のモニターを使用しておりました。モニターには開発中の化粧品を使用していただき、効果などを試してもらうためです」
「はい、そうでしょうね。モニターなくして新商品などの開発はできないでしょうね」
「それが、昨年そのモニターの一人が皮膚の炎症を起こしたとして訴えてきました。私どもはモニターとの契約通り、補償を行い治療代をお支払いし、円満に解決したものと思っておりました。ところが、数日前に『しゃぶりの石松』なる人物から脅迫状が届いたのです」
「脅迫状?」
「実は、皮膚に炎症を起こしたのは、その訴えてきたモニター一人ではなく、他にも数名いたのでした。他の数名は当社に訴えがなかったので大丈夫だと思っていたのですが、調査の結果、実際は炎症を起こしておりました。彼女らは会社に言うまでもない、もし言ったのならモニターから外されると勘違いして、会社側に遠慮していたのです」
「なぜ、そこまでして彼女たちは報告しなかったのですか?」
「私どものモニターになるということは、女性の間ではひとつのステイタスなんです」
「商品のその後の改良は?」
「当然、一人のモニターからそのような訴えがあった以上、改良を進めました。そして、1週間後には新商品発表会がおこなわれるところまでこぎつけました」
「では、その石松とやらは、何を脅しているのでしょうか?」
「はい、会社が今回のモニターへの補償を怠ったことを公表すると。そうされたくなければ10億円を新商品発表会までに用意するようにと。モニターへの補償を怠ったのは事実ですが、問題はモニター側にもあります。つまり報告が会社にされなかったことです。しかし、それは言い訳にはなりません。会社としては筋を通すため、そのモニターたちへ補償をすることを正式に決断しました。だが、補償が終るまでにこのことをマスコミなどに嗅ぎつけられることは会社のイメージダウンにつながります。そこで皆さんにお願いがあります。
『しゃぶりの石松』の目論見を阻止していただきたい。今度の新商品発表会は当社の今後の社運をかけた一大イベントなんです」
「補償の進み具合は?」
「それが、あと一人だけ行方が分かりません。彼女が最後の補償者です。彼女への補償が完了すれば、我々も責任を果たしたことになる」
「門長、嘘発見機に異常はありません」
「明大、了解した」
「伊達常務、あなたの勇気に感謝します」
聖華が伊達常務に言葉をかけた。
「分かりました。我々が新商品発表会までにその最後の補償者を探しましょう」
龍志は伊達を安心させるように落ち着いて答えた。
「では、よろしくお願いします」
伊達常務は一礼をして、ファイナルゲートへの通信を切ったのであった。
「『しゃぶりの石松』、奴のことは私に任せていただけませんでしょうか?」
犬飼式三が珍しく、龍志に訴えたのであった。

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2008年2月 8日 (金)

第7章
  ジャガー誕生の秘密とサイキックブロガー

第7章 (4)

数ヶ月後、西川次郎が書いた新作のインターネットブログ小説は、インターネットブログ小説大賞を受賞し、そのことがきっかけで大海映画の「マナーのプライド」が西川の作品の盗作であることが世間に知れ渡った。「マナーのプライド」の製作者たちへの賛辞はなくなり、今まで築き上げた信用は取り返しがつかないほど失墜してしまったのであった。しかし、大海映画が西川の口を封じようとし、スナイパ―まで差し向けたことは知られてはいなかった。それは、ファイナルゲートの門長の清野龍志が大海映画の新家会長に進言し、もうこれ以上の恥をさらさないよう説得し、和解をもたらしたからであった。
ジャガーと猿、そして西川は、ことの終結と西川のインターネットブログ小説大賞の受賞を祝い、六本木のバーで酒を酌み交わした。
「乾杯~!」
「西川先生、大賞受賞おめでとうございます」
店の女性たちの声が響いた。
「何とか今までの努力が実りました。みなさんに感謝しています」
「ところで、西川さんに聞きたいことが」
ジャガーが西川に質問をしようとした時、西川は席を立った。
「ちょっとトイレに行ってきます」
西川は席を立ちトイレに行き、4~5分後に席に戻った。
「先生、新しい水割り用意しましたわ。どうぞ」
「君は?」
「はい、今日から入った雫(しずく)と申します」
一人の新人のホステスが、西川にグラスを渡した。
西川はグラスを受け取ると立ち上がった。
店中の店員と客が西川の行動を不思議に感じていた。
「西川さん、どこへ?」
米山 猿が西川を呼び止めたその瞬間、西川は数匹の高級な金魚が泳ぐ水槽の前で足を止め、水槽の中にグラスをゆっくり傾けながら、水割りを注いだのであった。
「キャー」
水槽の前にいたホステスが気が付いた。水槽を泳ぐ金魚たちが、次々と死んでいくことに。
「貴様~」
ジャガーは「ジャガーの爪」を長刀サイズにし、雫と名乗ったホステスにその刃を向けたのであった。
「動くな」
「ハハハハ~。こんな簡単にバレるとは」
すると、女は口から小さな針をジャガー目掛けて吹いたのであった。ジャガーはとっさにその針を避けたが、後ろにいたホステスの腕に刺さった。
針の刺さったホステスは次の瞬間、全身の力が抜け、床に倒れこんだ。
「猿、毒針だ。気をつけろ」
「兄貴、了解しました」
「キャー」
店はパニック状態となった。
「こい、女」
ジャガーは雫を挑発した。
雫は数十本の毒針を口から吹いたが、ジャガーは「ジャガーの爪」で全て跳ね返したのであった。
その時であった。店の明りが全て消され、店は暗闇となった。
ジャガーは感じていた。次の瞬間に勝負がつくと。
その時、風を切って一本の毒針がジャガー目掛けて飛んできた。ジャガーは数ミリの間隔で、その毒針を避けたのであった。
「今だ、食らえ~」
ジャガーは満を持して、金色のジャガーフラッシュを投げ込んだ。雫の毒針は、逆にジャガ―に雫の居場所を教えることとなったのであった。
店の明りが元に戻ると明りの下で仁王立ちする雫の姿があった。額に金色のジャガーフラッシャが突き刺さった姿で。
「兄貴、お見事」
「猿、後は頼む」
「わかりました」
ジャガーは落ち着きを取り戻し、水槽に隠れている西川のところに歩み寄った。
「西川さん、いやサイキックブロガー、もう大丈夫です」
「ジャガーさん、バレてしまったみたいですね」
「私があなたの前に現れることや、『レッド・サタン』がコンビニで老人に変装して襲うこと、そして、今夜新たな刺客に襲われることも全て予知していた」
「そう、私には特殊能力があります。自分の身の危険や、多大な影響を与えることを予知できる能力。実は私は小説を盗作されたことや、今回このような結果になることも、事前に予知していたのです」
「やはり」
「ジャガーさん、ありがとうございました。お礼に、私からひとつだけ忠告があります。私には見えます。一輪の優雅な花を守るため、ジャガーが牙を剥き、黒ヘビに立ち向かう姿が。あなたの身に危険が迫っています」
「そうですか、黒ヘビですか」
ジャガーは感じていた。ブラックスネーク総帥、趙 蛇真との最終決戦が近付こうとしていることを。
ジャガーはサイキックブロガーの予言を受け入れると共に両手の拳を強く握るのであった。

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2008年1月30日 (水)

第7章
  ジャガー誕生の秘密とサイキックブロガー

第7章 (3)

聖華は式三と合流し、映画「マナーのプライド」のプロデューサー、海老原類子に接触するため、大海映画の撮影スタジオを尋ねていた。
「海老原プロデューサー、はじめまして。私はファイナルゲートの清野聖華です。こちらは同じくファイナルゲートの犬飼式三です。いつも映画を楽しく拝見しています」
「噂は聞いております。ファイナルゲートとは内部告発者の秘密情報組織。その人たちが私に何か用ですか?」
「いえ、特別な用ではありません。しかし、最近欧州から凄腕のスナイパーが来日しており、我々も厳戒態勢を取っており、その依頼者に依頼を取り下げてもらおうと今、色々探っております」
「そのことが私と何の関係が?」
海老原類子の顔はこわばっていた。
「いえ、どうやら依頼者は芸能業界の人らしく、海老原プロデューサーなら顔が広いので、何か情報をご存じないかなと思いまして」
「いえ、私は何も知りません。すみませんが、このあと次の映画の打ち合わせがありますので、お引取りください」
海老原類子は聖華たちをスタジオから追い出したのであった。
「お嬢さん、少々強引では?」
「式三、彼女が思い止まってくれるのが、今回の件を一番早く解決させる方法なの」
「それは分かりますが」
そう会話をしながら、聖華と式三は大海映画のスタジオをあとにした。
「もしもし、『レッド・サタン』。急いでちょうだい。調べが入ったわ」
「はい。こちらも厄介なボディガードが付きましたが、明日までには片をつけます」
海老原類子は『レッド・サタン』に、催促の電話をしたのであった。
そして電話を切った瞬間、呟いた。
「もう一人、刺客を用意しなければ」

「そうか、猿。ということは、奴は今晩か明日、必ずターゲットを狙ってくるな」
「はい兄貴。『レッド・サタン』は、明日の夜のモスクワ便で逃げるつもりです」
ジャガーは米山 猿から『レッド・サタン』の情報を得ていた。
ジャガーは猿との携帯電話を切った時、西川次郎が出かけようとしているのに気がついた。
「西川さん、今、外に出るのは危険だ。『レッド・サタン』を甘くみてはいけない」
「ええ、充分分かっています。しかし、今晩の仕事に穴をあけることは出来ません。私はコンビニで働きながら執筆活動をしていますが、プロの作家になるのが夢です。しかし、コンビニの仕事を中途半端にしたくないんです。夢を追う仕事、生活のための仕事、全てに全力でいきたいのです。それに、あなたがついている。心配はありません」
ジャガーは西川の真剣な眼差しに、西川の行動を容認する決意をした。
「分かりました。私はあなたを必ず守ってみせる」
ジャガーと西川は、西川が働くコンビニへと向かったのであった。

西川はレジカウンターで仕事を淡々とこなしていた。ジャガーはコンビニの入口で、『レッド・サタン』が襲ってこないか見張っていたのであった。コンビニには若い男女や夜の仕事をしている女性、残業帰りのサラリーマンなど、さまざまな人々が出入りしたが、異常は何もなかった。そして午前5時を迎えた時、一人の老人が杖をついてコンビニにやってきた。ジャガーはその老人に殺気を感じなかったので、挨拶をして店の中に入っていくのを見ていたのであった。その老人は、腰を曲げながらペットボトルのお茶を冷蔵庫から取り出し、西川のいるレジで清算した。そして、帰ろうと歩き出した時、その瞳がブルーとなり、最後にレッドへと少しずつ変わっていたったのであった。
「しまった、『レッド・サタン』だ。西川さん伏せて」
ジャガーは慌てて店の中に入り叫んだ。
しかし、ジャガーの叫びは遅く、老人に変装した『レッド・サタン』は杖を構え、その先より西川目掛けて銃弾を発したのであった。銃弾は西川の右肩にあたり、西川はレジの奥にある厨房室へと吹き飛ばされた。
ジャガーは「ジャガーの爪」を長刀サイズにし、『レッド・サタン』に突進した。
数発の銃弾がジャガー目掛けて飛んで来たが、ジャガーはそれを「ジャガーの爪」でことごとく跳ね返した。次の瞬間、『レッド・サタン』はひとつのカプセルを床に叩きつけた。するとみるみるうちに煙がたちこめ、辺りはまったく見えなくなった。
「ジャガー、さらば、また会おう」
そう言い残し、『レッド・サタン』はその場から立ち去ろうとした。
「そうはさせないぞ」
ジャガーは胸の内ポケットからジャガーフラッシュを取り出し、見えなくなる寸前の『レッド・サタン』を目掛けて投げたのであった。
ジャガーフラッシュは見事、『レッド・サタン』の足に命中した。
その時、コンビニにひとりの男が入って来た。その男は鬼前組の米山 猿であった。
猿は、足を引きずる『レッド・サタン』と格闘した。そして、すでに銃弾を使い切った『レッド・サタン』は猿に捕らわれたのであった。
『レッド・サタン』が放った煙が徐々に薄れていくと、コンビニに大勢の機動隊員が雪崩れ込んできた。
「『レッド・サタン』を確保しろ」
リーダー格の機動隊員が命令した。
「兄貴、大丈夫ですか」
「猿、助かった。ありがとうな」
「はい、今回は組長から『レッド・サタン』に仕事をさせないよう命じられていましたが、なんとか任務を果たせました。それに、念願の『レッド・サタン』を捕まえることもできましたしね」
「俺は任務を果たせなかった。猿、急いで救急車を」
「ジャガーさん、それには及びませんよ」
ジャガーはその言葉に振り返った。
すると、レジの奥の厨房室から、何事もなかったかのように、西川がジャガーに笑顔をみせた。
「西川さん、あの銃弾を受けながらどうして?」
「これが身を守ってくれました」
西川はコンビニの制服を脱ぎ始めた。すると、なんと西川は防弾チョッキを中に着ていたのであった。
「奴の目的は半年ほどの怪我をさせ、しばらくパソコンに向えなくすること。私には致命傷は負わせないだろうと。おそらく狙うのは右の肩か腕。そして、奴は世界屈指のスナイパー。的を外すわけが無い。
だから防弾チョッキの下の右肩と右腕のあたりに鉄板も入れておいたんです」
「なるほど」
ジャガーと猿は、西川の読みの深さに驚いた。
「西川さん、あなた一体何者ですか?」
ジャガーは不思議な面持ちで西川を眺めるのであった。

その翌日、大海映画「マナーのプライド2」の制作発表がホテルであった。記者から映画に対しての質問が飛んだ。プロデューサーの海老原類子や主演の長山光子は、作品への自信に満ちた表情で受け答えをしていたのであった。
「海老原プロデューサー、今回のパート2も興行収入50億円超えが目標ですか?」
「いえ、私どもは視聴者に楽しんでいただける作品を提供するのが目的です。あくまでも興行収入は単なる数字でしかありませんので、別に気にしてはいません」
海老原プロデューサーは淡々と答えた。
「それは、嘘だな」
記者席の後ろから一人の男が段上に向かってゆっくりと歩いて来た。
「人の道、外せばそこは地獄道、この先一歩も通しゃしねぇ~」
「あなたは誰?」
「コンプライアンス・ジャガー推参!」
ジャガーは海老原プロデューサーの胸を右人差し指で差した後、その手で拳を握り締め、自らの胸元に引戻しながらこう言った。
「あんたの芸術家としての良心、取り戻しに来たぜ!」
「何を訳のわからない事を言うの。、映画業界は興行収入が全てなの。あなたに何がわかるの?この男を摘み出してちょうだい」
海老原プロデューサーは動揺していた。そして、いつになく取り乱していた。
記者たちは、先ほどの回答と全く正反対の言葉を発する海老原プロデューサーに驚いた。
「言われなくても、出ていくさ。しかし、これだけは言っておく。人のものを盗んで何がうれしい。悲しくないか?人の想いを傷つけ、大勢の人を欺き、賛辞を得ても何が残る。哀れさだけだ」
ジャガーはそう告げると、その場を立ち去ったのであった。
記者たちは何が起こったのか分からず、ただ呆然とするだけであった。

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2008年1月29日 (火)

第7章
  ジャガー誕生の秘密とサイキックブロガー

第7章 (2)

「やはり、ここに居たか」
「清野さん、俺は今日まで何のために生きてきたのだ。あんたの都合のためか?それとも親父の意志を継ぐためか?」
ジャガーと龍志は虎鉄の眠る墓の前で再会した
「1ケ月前に銃弾の嵐を浴び、俺は無くしていた幼少の記憶を取り戻した。あんたに連れられて虎鉄の親父に預けられたことを。そして静かに母と暮らしていたあの日、銃弾の嵐が俺と母の住む家に非情なぐらい撃ち込まれ、母はその銃弾で命を落としたこともな」
「そうか、思い出したか。では真実を話そう。私と虎鉄は全く正反対の違う道を歩みながらも目指すものは一緒だった。それは、この世にある悪を、いや、罪と言った方が適切かもしれないが、人間の罪を無くす世界を創ることを理想としていた。法律とは所詮人間が自らを罰するために創った最低限の規則でありルールでありモラルである。しかし、法で罪を暴かれてもそうでない理不尽なことはこの世には無数に存在する。私と虎鉄は人間が本来忘れてしまった人としての道を取り戻すため、法律など無くとも、誰しも心から豊かで幸ある生活を営むことの出来る社会を創ることを目指したのだ」
「それが俺となんの関係が?」
「私は当時そうした社会を創るには権力が必要と考えていた。そして政略結婚で愛してもいないのに、政界に力を持つ人物の娘と結婚した。その娘、佐代子こそお前の母親だ。安心しろ、私はお前と血の繋がった父親ではない。佐代子は私とは再婚でな、お前の父親は違う人物だ。その後、佐代子の父親は病死、佐代子はお前をたいそうかわいがって育てていたが、私は当時、日弁連での地位を得るため必死だった。佐代子とお前の待つ家には週に1日帰れればよい日々を過ごしていた。そんなある日、虎鉄の鬼前組はヤクザの抗争に巻き込まれた。鯨海組長の求心力も鬼前組の強さであったが、当時の鬼前組の真の強さの象徴は虎鉄のその並はずれた腕にあった。その抗争中の相手は虎鉄を倒すことが、鬼前組を潰す近道と考え、虎鉄の妊娠中の許婚にまで魔の手を伸ばし始めた。私は親友の虎鉄に頼まれ、虎鉄の許婚である華世(はなよ)さんを預かったのだ。そして、華世さんと誤認されて、お前の
母親であり、私の妻であった佐代子が銃弾の嵐を浴び亡くなったのだ。お前はそのショックが消えるまでそれまでの記憶を無くした。」
「その華世さんとは、聖華お嬢さんの真の母親か?」
「そうだ。聖華はヤクザの抗争の巻き添えで佐代子が亡くなったことを後に知った。
しかし、聖華は華代が実の生みの親であるとは知らない。佐代子を実の母親と思い込んでいる。そして、暴力を憎み、私と同じ弁護士の道を目指したのだ」
「お嬢さんの母親、華世さんは?」
「訳あって亡くなった」
「なぜあなたがお嬢さんを育てている?」
「今は勘弁してくれ。しかし、これだけは言っておく、私は聖華を実の娘だと思っている」
「なぜ、俺を虎鉄の親父に託した?」
「それはお前の母親の佐代子の願いでもあった。雅を不動明王のように育てたいと」
「不動明王?」
「そうだ、その形相と強さで悪を懲らし、我々人間が人の道を外さないように、地獄道の入り口でその睨みを利かす存在にと。私は佐代子が銃弾に撃たれ、怯えるお前を見た時、その言葉を思い出した。そして、虎鉄ならお前を不動明王のごとく育て、導いてくれると。
虎鉄は無言でお前を養子として預かってくれた。そして、いつの日か、私と虎鉄の目指す世を創るときに一緒にその道を進むことを夢見ていた」
「俺の真の親父は今どこに?」
「私も知らん。これが真実だ。お前が私を憎もうと、人の道を外す輩はあとを絶たない。私は立ち止まっている暇はない。これからはお前の人生。お前が決めるがよい」
「清野さん。俺の親父は誰が何と言おうと正邪虎鉄、他の誰でもない。その父親の命が私の全て、そして親父の命である聖華お嬢さんを守り、その志を共にするのが、俺の仁義だ」
ジャガーは龍志にそう告げると虎鉄の墓に水を掛け、静かに手を合わせ、一礼し、その場から立ち去ったのであった。

その頃、聖華は椿山荘(ちんざんそう)の1Fにあるラウンジに来ていた。
目的は『レッド・サタン』に狙われているインターネットブログ小説家、西川次郎(にしかわじろう)に会うためであった。聖華は、庭園の見える奥の席で静かに読書をしている西川と同じテーブルの椅子に着席した。
「西川さん、失礼します。私はファイナルゲートの清野聖華と申します。今、あなたに怪我を負わせようと、凄腕のスナイパーがあなたを狙っています。しばらく私はあなたの護衛として、同行させてもらいます」
西川は読書を止め、聖華の方に視線をやった。
「あなたが来ることは知っていました」
「えっ」
聖華は隠密に行動しているはずなのに、なぜ西川が知っているのか疑問をいだき、驚いた表情をした。
「西川さん、しばらくこの腕時計をしていてくれませんか。これは、私どもファイナルゲートの技術担当が開発した「レーザースコープ警報装置」が搭載されている腕時計です」
西川は珍しそうにその時計を眺め、そして腕にはめたのであった。
「この腕時計は半径1m以内にレーザースコープが当たったとき、警報が鳴る仕組みになっています。あなたを狙うスナイパーは『レッド・サタン』という男で、あなたを狙撃しようとするとき、必ずレーザースコープであなたを標的として狙いを定めます。警報が鳴ってから3秒以内に避難してください」
西川は聖華の説明を、如何にも他人ごとのように聞いていた。
「そうですか、3秒。大海映画も、そこまでして盗作を隠し通したいのですか。しかし、私を狙うのはお門違いです。別に、私は盗作されたことをそんなに気にしていないし、今は掲載中の作品を完成させることで精一杯なんです」
「西川さん、残念ながら、相手は相当あなたの動向を気にしています。盗作した映画「マナーのプライド」は当初、20億円前後の興行収入で充分だったのでしょう。しかし、大海映画の予想を裏切り、うれしいことに興行収入は50億円を超える、今年の大ヒット映画になってしまいました。この結果により、世間のこの作品への注目は一変しました。そして、ドル箱映画として続編を製作しなければならなくなったのです。表面的には先ほど申したとおり、うれしいことのようですが、盗作がバレた時、賛辞はなくなり、今まで築きあげた信用は失墜することでしょう。この作品が最後まで成功を収めるには、無名の作者の作品を盗作したことは隠し通さねばならなくなったのです。そこで、あなたを凄腕のスナイパーに狙わせ、続編が終了するまで口を封じる手に出たのです。あなたの作品は、徐々にインターネットで話題になってきています。もうすでに数百名の読者が、あなたの実力と、あの映画があなたの作品の盗作である事実に気がついているでしょう。相手はもうこれ以上の噂の流出は絶対阻止してきます。そして、情報の発信源である、あなたを狙ってきているのです。相手は真剣です。そのことは肝に命じてください」
「わかりました。清野さん、よろしくお願いします」
聖華は西川に注意事項を説明した。そして、西川を自宅で待機させることにしたのであった。聖華は西川とともに椿山荘を出ようと、ガラスの自動ドアの前に立った。
次の瞬間であった。
(ビー、ビー)
西川の腕時計の警報装置が荒々しく鳴った。
「まずい。『レッド・サタン』だわ。西川さん伏せて」
聖華は西川にそう告げると椿山荘の表に出た。そして辺りを見回した瞬間、うなりを上げて銃弾が飛んで来たのであった。
「お嬢さん、危ない」
「ジャガー」
ジャガーはその銃弾を「ジャガーの爪」で跳ね返したのであった。
「今までどこにいたの?心配したわ」
「お嬢さん、心配かけました」
「あそこか」
ジャガーは、椿山荘に隣接するビルの屋上にいる『レッド・サタン』を発見した。
しかし、『レッド・サタン』は慌てる様子はなく、ライフルを構えるのを止め、その姿を消したのであった。
ジャガーは、椿山荘の入口に伏せている西川に声をかけた。
「もう大丈夫です。奴は姿を消しました。あそこであなたが出てくる瞬間、狙撃するつもりだったのでしょう」
「あなたは?」
「申し遅れました。正邪 雅と言います。聖華お嬢さんと同じファイナルゲートの一員です」
「あなたがジャガーさん」
ジャガーは西川がジャガーを以前遭ったことのあるような表情で見つめることを不思議に感じた。
「しかし、もう奴も気づいているでしょう。こちらが「レーザースコープ警報装置」をつけていることを。おそらく、次は至近距離から狙ってくる。「レーザースコープ」がいらない距離で」
「ジャガーさん、大丈夫です。こんな脅しには、私も負けません」
「それを聞いて安心しました。急いで自宅に戻り、待機しましょう」
「お嬢さん、西川さんの護衛は私がします。お嬢さんは式三と大海映画を当たってください」
「分かったわ。ジャガー、西川さんを頼みます」
ジャガーと西川は、西川の自宅に向かったのであった。

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2008年1月28日 (月)

第7章
  ジャガー誕生の秘密とサイキックブロガー

第7章 (1)

ジャガーが失踪してから既に1ケ月の月日が過ぎていた。
その日、聖華はある男を成田空港で待っていた。
「お嬢さん奴はどうやら次の到着便にいるらしいです」
「猿、情報ありがとう」
「いや、礼なら組長に言ってください」
「豹牙さんも意識が戻り除々に回復に向かってひと安心ね」
「ありがとうございます。それにしても、ヨーロッパのスナイパーが来るとは、殺しのターゲットは誰でしょうかね」
「彼に依頼をするとは、相当な組織か金がある人物ですね」
「お嬢さん、出てきましたぜ」
その男は、サングラスを掛けた中肉中背の金髪で鷲鼻をもつ白人であった。そしてゆっくり歩きながら聖華の前で足を止めた。
「ファイナルゲートの清野聖華か、久しぶりだな」
「欧州のスナイパー、通称『レッド・サタン』。あなたのその瞳がブルーからレッドに変わった時、狙った獲物は必ず狙撃し、その命を奪う腕の持ち主。今回のターゲットは誰なの。政治家か、それとも経済人か、それとも闇の首領か」
「相変らず用心深いな。まあ、私の腕など大したことはない」
「そうかしら?2年前の食品メーカー偽装事件の内部告発者の口止めはあなたの仕事ね」
「冗談を?証拠はあるんですか?今回はただの観光ですよ」
「『レッド・サタン』、あなたは完全に見張られている。2階を見て。あそこからあなたを当局が監視しているわ。そして1階からも。」
聖華は指を指しながら指摘した。
「それは忠告ありがとう。ただの観光なので関係ないね。ハハハハ~」
『レッド・サタン』と呼ばれた男は、笑いながら聖華の前から立ち去ったのであった。
「お嬢さん、私もこれで。奴が今回来日した目的を探ります」
「猿、何か分かったらファイナルゲートに知らせてください」
鬼前組、猿山 米も足早に聖華の前から姿を消したのであった。
その時であった。聖華の携帯電話が鳴ったのであった。
「こちら、聖華」
「聖華、ファイナルゲートに来い。16時に今回の内部告発者からの連絡が入る」
「お父様。了解しました」
聖華も足早に成田空港をあとにし、ファイナルゲートのある新宿歌舞伎町へと向かったのであった。
聖華はファイナルゲートの本部がある歌舞伎町のプールバーに到着した。店には相変らず猫一匹いなかった。聖華は店の奥へと進んだ。すると、ビリヤード台にレーザーガンが置かれているのに気が付いた。聖華はそのガンを手に取った。
すると次の瞬間、店は暗闇となり、銃を持った殺し屋のバーチャル映像が出てきた。
聖華はそのレーザーガンで、バーチャルの殺し屋を次から次へと撃ち倒したのであった。
最後の一人を倒した瞬間、聖華の立っている床の1m四方がエレベーターのように地下に降りて行った。そして、地下にあるファイナルゲートの本部へと到着したのであった。
「お嬢さん。相変わらず、射撃の腕は一流ですね」
「明大さん、私は人を傷つけることは嫌いです。この射撃の腕はあくまでも護身のためです」
「わかってますよ」
「聖華も来たか。これで全員揃ったな」
しかし、式三も明大もそして聖華もジャガーのことが気がかりだった。
奥のデスクの椅子に腰を掛けた龍志が、振向きながら言った。
次の瞬間、地下室にベルが慌しく鳴ったのであった。
「お父様、内部告発者からの連絡です」
聖華が龍志に告げたのであった。
「明大、画面を切り替えてくれたまえ」
「了解」
そこには、一人の中年の男性が映し出されていた。
ファイナルゲートの四人のメンバーは、その画面に目をやった。
「こちらファイナルゲートです。どうしました?」
聖華がモニターの中年の男性に質問した。
「ファイナルゲートですか?」
「そうです。私はファイナルゲートの清野聖華。安心してお話しください」
「はい。私は大海映画で演出をしている北 宏紀(きた ひろき)と申します。実は、今春私どもが公開した映画『マナーのプライド』についてのことなんですが」
「『マナーのプライド』マナースキルの達人のおばちゃんが、流行らない結婚式場を立て直す映画で、興行収入は確か50億円を超えていましたね。その大ヒット映画について何か?」
「はい。その映画は脚本家のオリジナル作品とされていますが、実はある小説を基に作った作品なんです。単刀直入に言いましょう。あの映画は盗作なんです」
「えっ~」
聖華は驚いた。
「北さん、事情はわかりました。それで、今回はその盗作を告発されると」
「いや、違います。私も芸術の世界にいる者。盗作は許される行為ではないことは分かってますが、会社からはそのことを公にするなと強く言われております。もし今バレたなら、映画制作会社としての信用は失墜してしまいます。」
「では、なぜこのファイナルゲートに相談を」
「はい。今回の盗作を主導した映画のプロデューサーが、その盗作した小説の作者の口を封じるため、海外からスナイパーを呼び寄せたことをお知らせしたくて」
「盗作した作品は、その作者のインターネットのブログ小説の処女作で、現在次の作品を公開中です。
まだまだ人気が出ていないみたいですが、徐々に読者も増えつつあります。彼が有名になることは我々の盗作がバレてしまうことに繋がります。『マナーのプライド』は、この冬続編を制作することが決定しました。続編の公開が終わるまでは、彼の口を封じなければなりません。スポンサーも出演者もすでに押えてあります。続編が終わるまで、決して盗作のことはバレないようにしなければ。続編が終われば、視聴者も映画の興味も薄れ、たとえ騒がれてもとぼければ良いし、法的に争っても手を回せば勝つことができるまもしれません。しかし、今のタイミングで世間にバレることだけは絶対に避けたいのです。
そこで、海外からスナイパーを呼び寄せ、誰にも分からないように彼に数ヶ月間、続編が終わるまで怪我を負わすことを依頼したのです」
「そこまでして、わざわざ海外からスナイパーを呼ばなくても」
聖華が呟いた。
「それは私もわかりません。なぜそこまでするのか」
「門長、彼の証言に嘘は無さそうです」
明大は、自身の開発した嘘発見機を操作しながら龍志に報告した。
「いずれにしても、私はそこまでして盗作を隠し通すやり方が気に入りません。ましてや、その作者に怪我まで負わせようとしている行為もです」
「北さん、貴方の勇気に感謝します」
聖華が北に言葉を掛けた。
「では、よろしくお願いします」
大海映画の北は頭を下げた。そしてモニターの接続は終わった。
「お父様、そのインターネットブログ小説家の護衛は、私にやらせてください」
聖華が龍志に言った。
「そのスナイパーはおそらく『レッド・サタン』。彼にこれ以上仕事はさせません。私が必ず作者を守りきってみせます」
「よし、分かった。護衛は聖華に任せよう。式さんは大海映画の制作スタッフを見張ってくれ。特にプロデューサーの海老原 類子(えびはら るいこ)をマークしてくれ。私は大海映画の新家(しんけ)会長に会ってくる。そして明大はそのインターネットブログ小説家の身辺を調べてくれ」
「プロデューサーは海老原類子なの。お父様、詳しいじゃない?分かった。お父様は確か『マナーのプライド』の主演の長山 光子(ながやま みつこ)のファンだったわね?」
「えっ」
聖華、式三、明大が一斉に龍志に目をやった。
「聖華、悪い。もし長山 光子に会ったらサインもらってきてくれ」
「はあ~」
「冗談だ。では諸君、今回のミッション、気を引き締めて行こう。ファイナルゲート、ゲートホールディング」
龍志は高らかに今回のミッションを宣言した。
「お父様が一番気を引き締めないと」
聖華はそう言いながら、明大から渡された腕時計を受け取り、足早にファイナルゲートを出て行ったのであった。

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2007年12月18日 (火)

年末年始休載のお知らせ

コンプライアンス・ジャガーは年末年始休載します。
いよいよ物語は後半へ

ジャガー誕生と聖華の出生の秘密とは?
蛇真対ジャガーの最終決戦!
そしてファイナルゲートの前に現れる新たな敵の影

次回の掲載を期待してお待ちください。

■1月28日(月)追記--------------------

1月28日(月)コンプライアンスジャガー第7章掲載開始しました。

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2007年12月10日 (月)

第6章
  少女の命を救え 暁の銃弾の嵐

第6章 (4)

「清野君、仮にジャガーが銃弾に倒れても、我々警察はその死を伏せる。分かっているな」
「井上監理官、奴もそのことは充分承知しています。それに私は、いや、親友の虎鉄はジャガーをこんなところでやられる男に育ててはいないでしょう」
井上監理官は龍志の言葉に引っかかった。しかし、あえてそのことに触れることはしなかった。そして、静けさの漂うショッピングモールの入り口の向こうに、太陽がこれから起こる格闘を知ることなく、いつもと何も変わらずに昇り始めたのであった。
「作戦決行!」
井上監理官の合図がこだました。
ジャガーは暁の太陽を背に、ショッピングモールの入り口に立った。
その時、ジャガーの足元に銃弾が一発叩きこまれた。それは犯人たちからの、ジャガーへの威嚇であった。
「おい、そこの坊主頭の男、それ以上近づくとこの機関銃でハチの巣にしてやる、動くな」
犯人の一人の言葉が終わらないうちにジャガーは、明大が開発した「新ジャガーの爪」を両手に握り一直線に走りだしたのであった。
それに驚いた犯人グループは、ジャガー目がけて銃弾を撃ち込んだ。
ジャガーはその銃弾を「新ジャガーの爪」で弾き返しながら、犯人たちのいるショッピングモールの一番奥にある玩具店へと突進していったのであった。
犯人たちはジャガーの剣さばきに、慌てて銃弾を間髪入れることなく見舞ったのであった。
玩具店までの距離30mとなった時、犯人たちの一撃をジャガーは「新ジャガーの爪」で跳ね返したが、剣に亀裂が入ったのが分かった。ジャガーは亀裂の入った剣を放り投げた。容赦なく銃弾はジャガーを狙って撃ち込まれ、もう一本のジャガーの爪もSATの新型機関銃の威力に負け、はじき飛ばされたのであった。
ジャガーは犯人たちを目の前にして丸腰になってしまったのだ。
「しまった。「新ジャガーの爪」はまだ完成型ではなかった」
その光景を見ていた明大が呟いた。
「ジャガーが危ない」
龍志が叫んだ。
その瞬間、聖華は対策本部を抜け出し、ジャガーの元に駆け寄った。
ジャガーは聖華が近付いて来るのに気がついた。
「お嬢さん、止まってください」
ジャガーは聖華に背を向けながら叫んだ。そして犯人たちに、これ以上抵抗しない意思表示をして両手を上げたのであった。
「ハハハハ、馬鹿な男と女だ。わざわざ殺されに来るとは」
犯人グループの三人は機関銃を構えながら玩具店から出てきた。
「お前たちの勇気に敬意を表して、この一発で仕留めてやる」
犯人グループのリーダーと思われる男は機関銃を構えた。
その瞬間、ジャガーは銃口と昇り始めた太陽との対角線上に素早く身を移動させた。
ジャガーの狙い通り、太陽の光が犯人たちの構える機関銃のスコープに飛び込んで来た。
ジャガーはその瞬間を見逃さなかった。
(バシ~ン)
犯人たちがジャガーを狙った銃弾は、眩しさのため的はずれの方向へと放たれた。
その時、上空からSATの特殊部隊が降りてきた。そのスピードはジャガーに気を取られていた犯人たちには、電光石火の動きに感じられた。
「くそ~」
「ジャガー」
聖華はジャガーに長刀サイズの「ジャガーの爪」を投げ渡した。
「お嬢さん」
「お前、これ以上近づくな、撃ち殺すぞ」
「殺せるものなら撃ってみろ」
犯人たちは機関銃の引き金を引いたが銃弾は放たれなかった。
「お前たちの銃弾は各10発ずつの計30発。もう打ち止めだ」
ジャガーは聖華から受け取った「ジャガーの爪」で犯人たちを一撃で倒したのであった。
SATは人質の野田親子を救出し、緊急救護チームは素早く美沙子ちゃんへの治療を開始したのであった。
「ジャガー、さすがね」
「お嬢さん、助かりました」
聖華は、事件は解決したが、何故かジャガーがさえない表情をしているのに気がついた。
「ジャガー、悪かったな、まだ未完成で」
「ああ」
駆け寄ってきた明大の言葉にもジャガーは虚ろだった。
「どうした、ジャガー」
ジャガーの異変に気がついた龍志が、ジャガーに駆け寄った。
その時、ジャガーはまるで敵を見るような目つきへと変貌した。
「清野さん、今の銃弾の嵐で思い出しました。あの記憶を...」
龍志はその言葉を聞いて凍りついていた。
「お嬢さん、式さん、明大さん、ファイナルゲートを辞めさせてもらいます」
「えっ~」
ジャガーの言葉に聖華たちは驚いた。
そして、ジャガーは龍志に冷たい視線を残し、暁の太陽を背にその場から去って行ったのであった。

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2007年11月28日 (水)

第6章
  少女の命を救え 暁の銃弾の嵐

第6章 (3)

「井上監理官、もう一度我々の話を聞いてください」
「清野君、くどいぞ」
井上監理官は龍志の言葉に耳を貸す気配はなかった。
「井上監理官、中には腎臓透析の必要な美沙子ちゃんが居ます。24時間後では彼女、命が危ないのです。貴方はそれでも人の命を守る警察官ですか?」
聖華は井上監理官に、今にも飛びかかろうとするぐらいの勢いでまくしたてた。
「貴方は?」
「私の娘です」
「そうか、清野君の娘さんか。私たちの立場も分かってくれたまえ」
「立場?」
井上監理官は冷静に説明をし始めた。
「今回の機関銃立てこもり事件は、確かに我々警察のミスだ。三波重工業から新型のSAT用の機関銃を輸送途中、3人の輸送警官が女に誘われ車を離れた瞬間、車ごと盗まれた。
まさに恥としか言いようのない不注意が原因だ。だからこそ、我々はこの機関銃での犠牲者を決してだしてはならぬのだ。あの機関銃の標的への精度と威力を知る我々だからこそ、あの機関銃を発砲させてはならぬ。もしあの銃での犠牲者が出たら、もう二度とあの銃の使用が出来なくなる。日本中で今、さまざまな事件が発生している。その中には凶悪な事件もある。このSA
T用の新型機関銃は、その凶悪犯を撃退するために開発されたものだ。この機関銃をわれわれは失ってはいけないのだ。今回の犯人逮捕は確実に成功させなければならない。犯罪分析班のシュミレーションによると、犯人たちの体力と集中力が衰える、20時間から24時間後の突入が成功率90%と分析された。その少女には悪いが、この突入の時期を変えるわけにはいかない。日本の犯罪撲滅の犠牲となってもらうしかない」
「ふざけないでよ。美沙子ちゃんはまだ5歳よ、彼女の人生が始まったばかりよ、そんな彼女一人助けられないで、何が犯罪撲滅の新型機関銃よ、SATの腕はその程度なの?犯罪分析班の成功率なんて当てにはならないわ」
聖華の怒りは頂点に達した。
「聖華、落ち着け」
龍志は聖華の肩に手をかけた。
その時、一人の男が対策本部に入って来た。
「人の道、外せばそこは地獄道、この先一歩も通しゃしねぇ~」
「お前は誰だ?」
「俺か。ファイナルゲートの正邪 雅、人は俺をコンプライアンス・ジャガーと呼ぶ!」
ジャガーは井上監理官の胸を右人差し指で差した後、その手で拳を握り締め、自らの胸元に引戻しながらこう言った。
「警察の良心、取り戻しに来たぜ!」
「お前か、他国の女スパイやブラックスネークの陳 忠将を倒した男は」
井上監理官はジャガーのこれまでの活躍を知っていた。

「井上監理官、俺のことを知っているとは光栄だ。俺に良い案があるが、聞いてくれ」
井上監理官はあえて反応はしなかった。
「今から12時間後に、俺はこのショッピングモールの入り口から犯人たちが立てこもる玩具店まで走り抜け突入する。新型の機関銃は間違いなく俺を標的に火を噴くであろう。その隙にSATは上空から玩具店に潜入し、人質の保護と犯人の制圧をお願いしたい」
「はははは…ジャガー、俺は正直お前の活躍を耳にして一目を置いていたが、こんな単なる命知らずの馬鹿とは思わなかった。残念だ」
「井上監理官、それは違います」
その時、対策本部にもう一人男が入って来た。
「明大さん」
聖華が明大に気がついた。
「ジャガー、依頼の品を届けに来たぞ!」
「明大さん、ありがとう」
明大はジャガーに頼まれた、新型の「ジャガーの爪」を届けに来たのであった。
今までの「ジャガーの爪」は長刀サイズであり、重量もあった。しかし、新型の「ジャガーの爪」はむしろ短刀に近いサイズで、薄く鋭利に出来ていた。
「この新型の「ジャガーの爪」はたとえSATの新型機関銃の銃弾でも傷ひとつつけることなくはねのけることができる。それと軽量化されているため、素早く剣を操ることができる特徴もある。最大の特徴は、爪を二本に増やし、今までジャガーが鍛錬してきた二刀流を使えるということだ。」
「ジャガー、お前、いつの間に二刀流に?」
龍志が質問した。
「門長、趙 蛇真の「百蛇剣」を破るには二刀流しかないと思い、虎鉄の親父と、今日まで研究を重ねて来ました。昨日の蛇真の剣を目の当たりにし、その考えに間違いのないことを確信しました。新型機関銃の銃弾など、蛇真の「百蛇剣」に比べればハエがとまるぐらいのスピード。そのスピードに俺がついていけなければ、蛇真に勝つことはできないでしょう」
「それともうひとつ、12時間後に突入にした意味があります」
「そうか、分かったわ」
聖華は明大の言葉に反応した。
「つまり、12時間後は日が昇る時間。犯人たちが立てこもる玩具店までの直進の道の背に太陽の光があるということ。眩しくて簡単に標的を狙えないということね」
「さすがお嬢さん」
その時、井上監理官の眉がピクリと動いた。
「ジャガー、お前、あの国際窃盗団ブラックスネーク総帥、趙 蛇真を本当に倒せるのか」
「もう一度言う。俺は虎鉄の親父とそのために鍛練を重ねてきた」
「今から長官の了解を得る。ジャガー、そしてファイナルゲートの諸君、12時間後の作戦開始の準備を頼む」
「了解した」
かくして、ジャガーの突入作戦は12時間後、暁の午前5時と決定したのであった。

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2007年11月19日 (月)

第6章
  少女の命を救え 暁の銃弾の嵐

第6章 (2)

「清野君、どうやら君の耳にも、今回の事件が伝わったみたいだな」
「井上監理官、事態は深刻です。厳戒体制の発令を」
「それには及ばない。新型の機関銃を盗んだ一味は、先ほど調布のショッピングモールに立てこもった。犯人は3名。どうやら先日逮捕された連続ハイジャック班、平松正裕(ひら?まつ まさひろ)の部下のようだ。犯人たちは、平松の釈放と逃亡用のセスナと食糧、それに燃料を要求してきている」
「人質は?」
「30歳前半の母親と5歳の女の子が人質となっている。現在、調布の街を閉鎖した。もちろん、マスコミも近づけないようにしている。SATの特殊部隊が現場に直行した。君たちの出る幕はない。我々はこの犯人たちを24時間以内に逮捕する」
「井上監理官、分かりました。SATが出動しているのなら制圧も成功するでしょう。
しかし、念のため、その人質の母親と娘さんの氏名を教えてください」
「おそらく、病院へ向かう途中にショッピングモールに寄った親子で、母親の野田まさみと娘の美沙子ちゃんと思われる」
「いかん!」
その時明大が叫んだ。
「門長、その野田美沙子ちゃんは腎臓透析患者です。おそらく、透析を受けるため病院へ向う途中で人質にされたことが推測されます」
「明大、つまり、その少女の命が危ないということか?」
「そうです。後12時間以内に透析をしなければその少女の命は・・・」
「井上監理官、24時間以内という悠長なことは言っていられなくなりました。12時間以内に制圧してください」
「清野君、それは出来ない。SATは犯人たちの体力が消耗する、20~24時間後に突入するシュミレーションを組んでいる。我々も失敗が許されないのだ」
「しかし、少女の命が」
「清野君、この件に関しては口外しないでくれたまえ、分かったな」
そう言い残し、井上監理官はファイナルゲートとの回線を切ったのであった。
「お父様、行きましょう」
聖華が龍志に進言した。
「もちろんだ。少女の命を見殺しにはできない。明大はここに残ってくれ。聖華、式さん出動だ」
「了解」
「ファイナルゲート、ゲートフォールディング」
龍志が今回のミッションを高らかに宣言した。
かくして、龍志たちは調布のショッピングモールに向かったのであった。

「事情は分かった、明大さん。俺も調布のショッピングモールに向かう。それと明大さん、ひとつお願いがあるんだが」
「何だ、ジャガー?趣味の悪い俺でも役に立つことか?」
「ごめん、明大さん。今日は冗談に付き合っていることは出来ない」
ジャガーは明大にある要請をし、携帯電話を切った。そして龍志たちが向かった、調布のショッピングモールを目指したのであった。
ジャガーは愛車の紺色のジャガーを飛ばした。そして数十分で調布のショッピングモールに到着することができた。
辺りは警察以外の関係者を立ち入り禁止としていた。ジャガーはファイナルゲートの一員としての身分を明かし、ショッピングモールの駐車場に設置された対策本部へと入っていった。
「ジャガー、その体で大丈夫か?お譲さんの話では、大量の輸血で明日まで安静が必要と聞いているぞ」
対策本部にすでに到着していた式三が、心配そうにジャガーを見つめた。
「式さん、お気遣いありがとうございます」
「ジャガー、今お父様が、井上監理官と話し合っております。SATの突入を早めてもらうように」
その時、対策本部の奥から龍志が出てきたのであった。
「門長、交渉は?」
「ダメだった。警察はSATの突入を、24時間後の明日の午後5時と決定した。それまでに犯人たちの要求を呑むふりをして、少しずつ要求の品を揃えるつもりだ。つまり、持久戦を取る方針だ。確かにその方法であれば、犯人逮捕は確実だ」
「お父様、中の人質の美沙子ちゃんの命はどうなるの?」
「警察は犠牲者を最小限にするため、24時間後の突入の作戦をとる。少女の命はその犠牲にするつもりだ」
「式さん、中の様子は」
ジャガーは式三に質問した。
「犯人たちは、ショッピングモールの一番奥の玩具店に立てこもっている。玩具店まではショッピングモールの入り口から100mある。下手に近づいたら、SATに納入するはずであった新型機関銃で蜂の巣にされる」
「門長、SATの突入作戦は?」
「おそらく、入口に煙幕をはり、玩具店の天井部から侵入し犯人たちを制圧する予定だろう。式さんが言ったとおり、入口から進入することは、犯人たちの機関銃が常時見張っている以上、不可能だ。また、立てこもっている以上、外からの射撃も難しい。間違って人質に当たることも想定される」
「分かりました。門長、もう一度交渉をお願いします」
その時、ファイナルゲートの全員がジャガーに視線を向けた。
「俺が一人で突入します」

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2007年11月 8日 (木)

第6章
  少女の命を救え 暁の銃弾の嵐

第6章 (1)

「豹牙は?」
「兄貴、危ない状態です」
趙 蛇真の『百蛇剣』を受けた鬼前豹牙は病院に運ばれ、緊急手術を受けていたのであった。手術は1時間にも及んだ。そのとき、手術室の扉が慌ただしく開いたのであった。
「すいません。O型の血液が足りません。O型の人はいませんか?」
「俺はO型だ」
ジャガーは豹牙と同じO型であった。
「お1人だけですか?」
「私もO型です」
「お嬢さん」
聖華もO型であった。
「私の血も使ってください」
看護士はジャガーと聖華に、手術室の隣の部屋に移動するように指示した。
「兄貴~」
鬼前組、米山猿が心配そうにジャガーを見つめた。
「猿、大丈夫だ。豹牙は俺と同じで虎鉄の親父に鍛えられた男、そう簡単に死にはしない。それより門長、式さん、蛇真の追跡を」
「ジャガー、分かった。あとは私たちに任せろ」
「お父様、お願いします」
聖華と龍志は、目と目で確認し合ったのであった。
ジャガーと聖華は輸血のため、手術室の隣の部屋に移動した。龍志と式三は蛇真の足取りを追うため、病院をあとにしたのであった。
それから数時間が過ぎた。ジャガーは大量の輸血に協力したため、深い眠りについていたが、優しく強く、まるで生命を復活させるような夕日の光を浴び、目を覚ましたのであった。
「兄貴~、組長は助かりました」
「そうか、よかった。ところでお嬢さんは?」
「それが2時間ほど前に慌てて病院を出て行かれました」
「何かあったのか?」
ジャガーは起き上がろうとした。その時、珍しくめまいを起こしたのであった。
「兄貴、安静にしてください」
猿の言葉と同時に、看護士がノックをして部屋に入って来た。
「正邪さん、しばらく安静にしてください」
「いや、俺は大丈夫だ」
「ダメです。あと一日はこの部屋で休んでください」
「看護士さん、豹牙の容態は?」
「命は取り留めましたが、まだ危ない状態は続いていますが、私たちに任せてください」
「豹牙のことをお願いします。申し訳ないが、俺はファイナルゲートに戻る。どうもいやな予感がする」
ジャガーは先ほどのめまいを忘れるほど、すくっと立ち上がったのであった。
「正邪さん、だめです」
「看護士さん、俺の心配より豹牙のことをお願いします。猿、豹牙のことを頼んだぞ」
「兄貴、任せてください」
ジャガーは看護士の制止を振り切り、ファイナルゲートへと向かったのであった。
「こちらジャガー、門長、今そちらに向かっています」
ジャガーは携帯電話でファイナルゲートに連絡した。
「ジャガーか、大丈夫か?」
「その声は明大さん」
「門長たちは今、調布のショッピングモールに向かった」
「何かあったんですか?」
「1時間前にファイナルゲートに送られた内部告発者の映像を今からお前の携帯電話に送信する。説明はその後だ」
明大はそう答えると、ジャガーに映像を送信したのであった。
ジャガーの携帯電話に明大からの映像が送られてきたのであった。その映像には背広姿の男性が映し出されていた。
「ファイナルゲートですか?私は三波重工業株式会社の川上と申します」
「三波重工業?あの警察庁の拳銃を生産している三波重工業ですか?」
川上と名乗る男に答える龍志の姿も映像に映っていた。
「実は、昨日SATに納める、新型の機関銃を何者かに輸送中に盗まれました」
「えっ、新型の機関銃が?」
「はい。3丁ほどの試作を納入するために車で輸送中に盗まれたのです」
「そのことは警察は?」
「当然知っています」
「しかし、そのニュースは流れていないが」
「実は、その輸送中に盗まれたのは警察のミスなのです」
「どういうことですか?」
「通常、銃は警察が厳重注意を払い輸送します。しかし今回輸送中に、警察の輸送班が車から離れたその隙に、車ごと盗まれたのです」
「まだニュースになっていないということは?」
「おそらく、自分たちのミスを開示することをためらっているのでしょう」
「しかし、機関銃だけでは何もできまい」
「それが、その試作品には各10発ずつ銃弾も装備されていたのです」
「何~、ということは。それは大変なことだ」
「我々、三波重工業の事情を知るものは警察から口止めされていますが、ファイナルゲートの皆さんにはお伝えすべきと、私の勝手な判断で連絡しました」
「貴方の勇気に感謝します」
その時、ファイナルゲートに聖華が姿を現したのであった。
「門長、警察庁の井上監理官から連絡が入っています」
明大が龍志に報告した。
「川上さん、通報ありがとうございます。あとは我々にお任せください」
龍志は川上に一礼し、その回線を切った。そして、井上監理官からの連絡の映像に切り替えるように、明大に指示したのであった。

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2007年10月29日 (月)

第5章
  因縁の対決 馬上の決闘

第5章 (4)

中山競馬場は、超満員の競馬ファンの熱気で溢れていた。
競馬場の個室のVIP室に「有馬記念」を観戦するためブラックスネークの趙 蛇真が到着した。
「総帥、こちらへ」
一人のブラックスネークの幹部が蛇真を案内していた。
「手はずは万全か?」
「はい。陳 隊長自ら、ワクチンを本命馬 カイザンに注入するため、最前列でFM4を操作されております」
「そうか。それと、もうひとつのワクチンの準備は」
「はい、『ゴット・パワー』は大穴馬、セイショウオウに既に注入しております」
「よし、馬券の購入は?」
「セイショウオウから通して、購入しております」
「よし、今回の実験は成功しなければならない」
その時、「有馬記念」レース開始のファンファーレが会場に流れた。競馬場のファンたちは、その音に熱気で呼応した。
そして、各馬はゲートインした。
次の瞬間、蛇真の個室の扉は蹴り上げられ、開いたのであった。
「趙 蛇真、お前の命、いただきに来た」
「お前は?」
「鬼前組 5代目組長 鬼前豹牙」
「お前が鯨海の息子か?果たして私を倒せるかな」
「うるせぇ~」
豹牙が日本刀を抜いたと同時に「有馬記念」のレースが始まった。
そして、個室に乗り込んだ鬼前組数十名と個室にいるブラックスネークの戦いもきって落とされた。
最前列にいるブラックスネーク陳 忠将は、FM4で既に馬インフルエンザウィルスを本命馬カイザンに注入する任務を終えていた。そしてレースの結果を確認していたのであった。
「人の道、外せばそこは地獄道、この先一歩も通しゃしねぇ~」
「その声はジャガー?」
陳は辺りを見回した。
「コンプライアンス・ジャガー推参。良心のかけらもないお前たち、しかし今日はあえて言わせてもらう。、あんたの良心取り戻しに来たぜ!」
ジャガーは陳 忠将の後ろに居た。陳は身動きができなかった。
「陳、馬インフルエンザ菌の注入は無駄だ」
「何?」
「お前がインフルエンザ菌をカイザンに注入したそのすぐ後に、俺たちファイナルゲートが、西洋薬品野呂主任研究員が開発した即効薬を注入した。右斜め45度を見ろ」
そこには龍志、聖華、式三、そしてFM4を操縦する明大の姿があった。
「野呂主任研究員は私達が監禁していたはずだ。」
「陳、残念ながら聖華お穣さんが睡眠薬に負けずに液体発信機を野呂主研の白衣に付着させてくれたお蔭で、先ほど野呂主研は救出した。そして即効薬を頂き、お前のインフルエンザ菌注入の後に、俺たちが即効薬を注入したということだ」
「ハハハハ、さすがファイナルゲート、しかしお前たちは私達の本当のねらいは知らないだろう」
「本当のねらい?」
「ジャガー、レースを観ていろ」
その時、「有馬記念」のレースは第四コーナーを回った最後の直線に入っていた。
先頭はカイザンに3馬身のリード、誰もがカイザンの勝利一着を確信していた。その時最後方から一頭の馬が猛スピードで前を走る馬をごぼう抜きしていた。
「あれは、大穴馬 セイショウオウ」
「ハハハハ、実験は成功だ」
そして先頭のカイザンもゴール前でセイショウオウに抜かれたのであった。
(バリン~、キャー)
競馬場の最上席の上、VIP席である個室の窓が割れた。そして、中から日本刀と中国刀を持った数十人の男たちが会場になだれこんで来た。
辺りは騒然となり、競馬ファンたちは逃げ惑うのであった。
その騒動に気を取られたジャガーの隙を縫って陳 忠将は馬場に入り、騎手を中国刀で脅し、一着の馬セイショウオウに騎乗したのであった。ジャガーも陳を追い、そして惜しくも敗れたカイザンに騎乗したのであった。
乱闘している豹牙、蛇真も観客席から馬場に降り、騎乗した。
ここに馬上決闘が始まった。ジャガー対陳 忠将、豹牙対趙 蛇真。
「豹牙、蛇真の『百蛇剣』には気をつけろ。お前の父、三代目を殺めた剣だ」
「兄貴、承知した。俺はこの戦いを待っていたのだ。行くぞ蛇真」
豹牙は馬の横腹を蹴り、蛇真に突進した。
「愚か者め」
すると、蛇真の両腕は、クマドリの羽のように高速で回転しだした。そう『百蛇剣』であった。
「いかん、あの間合いでは豹牙がやられる」
豹牙と蛇真が接触する瞬間、ひとつの銃弾が撃ち込まれた。それは聖華が放った銃弾であった。聖華の放った銃弾をかわすため、蛇真の『百蛇剣』に隙ができた。
豹牙はその隙に切り込んだのであった。そして見事、蛇真の額にその刃を切りつけた。
「ハハハハ、女、舐めた真似を」
しかし、蛇真の傷はかすり傷であった。
豹牙が再び蛇真に切り込むため突進した。
「いかん」
ジャガーが陳と戦いながら叫んだ。
突進する豹牙に蛇真の『百蛇剣』、何百もの剣の突きが炸裂した。
その剣をまともに受け、豹牙は血飛沫を上げて落馬した。
「組長~」
猿山 米が豹牙に駆け寄った。
蛇真は次に聖華を襲おうと、馬を走らせた。
その様子に気づいたジャガーは、「ブルージャガーフラッシュ」を蛇真が乗る馬の足元に放った。次の瞬間、馬は急停止したのであった。
そして、上空からヘリコプターがやってきた。そのヘリコプターからロープ式の階段が蛇真に投げられたのであった。
蛇真は馬上からそのロープに捕まり、逃げようとした。
「陳、捕まれぇ~」
蛇真はジャガーと戦う陳に手を伸ばしたのであった。
陳はジャガーとの間合いを置いた瞬間、蛇真の手を掴もうとした。しかし次の瞬間、陳の乗るセイショウオウが突然倒れ、陳は蛇真の手を掴むことが出来なくなり、落馬したのであった。それを見ていたジャガーは「ジャガーの爪」をもったまま馬を降り、陳に突進していた。
「総帥、私はここでジャガーを倒します。お逃げください」
「陳、後は頼む」
陳はジャガーとの戦いに命をかける決意だった。
陳は突進してくるジャガーに中国剣でジャガーの胴を狙い、剣を打ち込んだ。
その瞬間、ジャガーは大きくジャンプし「ジャガーの爪」を陳の頭に打ち込んだのであった。
それはまさしく巌流島で宮本武蔵が佐々木小次郎に放った、大木の面であった。
(ウッ~)
陳、は高層ビルがまるで崩れ落ちるかのように、ゆっくりと倒れこんだ。
「この馬場であれだけの跳躍ができるとは、ジャガー恐るべし。あの男なら私の『百蛇剣』を破るかもしれん」
ジャガーと陳との戦いの様子を見ていた蛇真は呟いた。
「ジャガー、大丈夫?」
聖華が駆け寄った。
「聖華お嬢さん、ありがとうございます」
「あの女、ジャガーの女か?ハハハハ、どうやらジャガーの弱点が分かったぞ。
よし、上海に引き上げる」
蛇真はヘリコプターからジャガーの様子を眺め、聖華に対するジャガーの想いが強いことを察したのであった。
ヘリコプターはジャガーたちの視界からも、追うことができなくなった。
「お嬢さん、豹牙は?」
「お父様と式三さんが救急車で鷹山病院に運んだわ。危ない状態よ」
「おのれ、趙 蛇真。ウオ~」
ジャガーは両手を広げて叫んだのであった。
ジャガーは叫ぶことでしか、怒りをぶつけることができなかった。
ファイナルゲート、鬼前組 対 ブラックスネーク、ジャガー対蛇真の最終決戦の日は近付いていたのであった。

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2007年10月18日 (木)

第5章
  因縁の対決 馬上の決闘

第5章 (3)

ジャガーと龍志は上海に飛び、そして国蛇公社の本社に潜入したのであった。
「いいか、ジャガー。私達は西洋薬品の営業マンだ。お前は風貌からして素性がバレ易い。このカツラと眼鏡をつけて、ただうなずいていろ、分かったな」
「門長、了解した」
ジャガーと龍志は奥にある応接室に通された。
しばらくすると、国蛇公社の営業窓口の男性が2名応接室に入って来た。
「どうも、はじめまして、本日はお時間を頂きありがとうございます。私は西洋薬品の営業部長の浅野と申します、こちらは正木です。本日は弊社が新開発した、インフルエンザ即効薬『ジャガー・ドラゴン』の開発成功のご報告と、今後の御社とのお取引をお願いしたく参りました」
国蛇公社の営業窓口の男たちは、龍志のインフルエンザ即効薬の話に顔を見合わせた。
「いや~、浅野さん、インフルエンザ即効薬は出来たのですか?我々の情報ですと、まだ完成には至っていないと」
「さすがお詳しいですね。まだ、公にはしておりませんが、先週うちの主任研究員が開発に成功しまして、いち早く御社にご報告してお取引を進めさせていただければと思いまして」
「それは何より。では、一度そのワクチン『ジャガー・ドラゴン』を持ってきていただけませんか」
「分かりました。早速日本に帰り、持参いたします」
龍志とジャガーはその男たちと握手を交わし、応接室を出たのであった。
「門長、上手く行きましたね」
「ああ、これで何とか奴らの目的を探れそうだ」
帰ろうとするジャガーと龍志とは逆に、応接室に通されるための廊下をゆっくり歩いてくる一人の男がいた。
ジャガーはその男が何者か、すぐに気が付いた。
その男は変装をして潜入している、鬼前組の熊田であった。
ジャガーはすれ違う数秒の間に熊田の唇の動きを読み取った。そして、ジャガーも応えを返した。
熊田も奥の応接室に通されたのであった。
「門長、どうやら趙 蛇真は、明後日の「有馬記念」のレースを中山競馬場で観戦するするそうです」
「ジャガー、どうしてそれが分かる」
「今すれ違った男は鬼前組の熊田です。組長の豹牙の命令で、商社マンに変装してこの会社に潜入しています。門長には悪いが、熊が信用を得るため、俺たちの素性をバラスように、指示しました。急ぎましょう」
次の瞬間、数十人の男たちが慌てて部屋から出てきた。そして、ジャガーたちを追いかけてきたのであった。
ジャガーと龍志は逃げようと走った。しかし、受付の正門も男たちに固められていた。
「門長、あの扉から外に出ましょう」
その扉は非常用階段に繋がる扉であった。
ジャガーは追ってくる国蛇公社の男たちの足もとに、明大から授かった『ブルージャガーフラッシュ』を投げ込んだ。
『ブルージャガーフラッシュ』は床に刺さると液体を出した。その液体は超強力接着剤であった。その液体を踏んだ国蛇公社の男たちは、その場から動けなくなったのであった。
「明大さん、こういう仕掛けか。やっぱりあの人趣味悪いな」
ジャガーはそう呟きながら、龍志と共に国蛇公社からの脱出に成功したのであった。
「ジャガー、なぜ我々の素性を熊田にバラスように指示した?」
龍志は空港に向かう車の中で、ジャガーに質問した。
ジャガーはハンドルを握りながら龍志に答えた。
「熊は潜入には成功したものの、最後のところで信用を得ていないようだった。我々のことを国蛇公社に告げれば、間違いなく信用されるでしょう。これから潜入しようとする我々より、熊の方が情報を取るのが早いと判断したからです。こうすれば我々ファイナルゲートも、鬼前組も情報を入手できる」
「なるほど、分かった。お前、先ほど趙 蛇真が日本に現れると言ったな」
「はい。FM4で馬インフルエンザをばら撒くつもりなんでしょう。そしておそらく、そのレースで一儲けしようとしているのでは?」
「ということは、野呂主任研究員が危ない。聖華にこのことを告げなければ」
龍志は慌てて携帯電話で聖華に連絡するのであった。

丁度その頃、聖華は西洋薬品の野呂主任研究員に会っていた。
「野呂さん、貴方の開発したインフルエンザワクチンが狙われています」
「清野さん、心配しないでください。この研究所は厳重なセキュリティーで守られています。私はこの研究所から一歩もでませんので安心してください」
その時、聖華と野呂主任研究員が会話している部屋に、野呂の助手が青ざめた顔をして入ってきた。
「どうした、柴田くん」
「野呂主任、ちょっと来てください」
その時、聖華の携帯電話が鳴った。
「お父様」
「聖華、ブラックスネークは明後日の「有馬記念」でFM4を使って馬インフルエンザをばら撒くつもりだ。奴にとって、野呂主任が邪魔なはずだ。必ず野呂主研を狙ってくるだろう。彼のそばを離れるのではないぞ」
「了解しました」
聖華は慌てて、助手の柴田に呼ばれて部屋を出た野呂主研の後を追った。
「柴田くん、何をするんだ」
廊下では柴田助手と野呂主研が揉み合っていた。柴田助手は野呂主研を研究所の外に連れだそうとしていたのであった。
聖華は柴田助手の目を見た時気がついた。
「あれは、催眠術でマインドコントロールされている人の目」
聖華は揉み合う野呂主研と柴田助手のもとに走った。しかし、体の力が徐々に抜けていくのに気がついた。
「しまった、さっきのお茶に睡眠薬が」
聖華は柴田助手に出された、睡眠薬入りのお茶を飲んでいたのであった。
聖華はだるくなっていく体に鞭うちながら、ハンドバックから銃を取り出した。そして意識が朦朧とするなか、液体発信機入りの銃弾を放ち、野呂主研の白衣に付着させたのであった。
そして次の瞬間、聖華はその場に倒れ込み、身動きが取れなくなった。
その耳には、揉み合う野呂主任と柴田助手の声が、微かに聞こえていたのであった。

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2007年10月 9日 (火)

第5章
  因縁の対決 馬上の決闘

第5章 (2)

ジャガーたちは真夜中であるにもかかわらず、慌しく扉を開けた。ファイナルゲートの本部があるプールバーは相変らず誰もいなかった。
「お父様、いつものモニターがあります」
「そうか」
聖華と龍志は、店の真中の天井から降りて来た大画面のモニターに気がついた。するとモニターから声が出てきた。
「門長、現在までの記録3分18秒です。今日は何番をお選びになりますか?」
「そうだな、今日は7日なので7番で行こう」
龍志がそう答えると、モニターはチェスが配列された画面へと変わった。
「では、門長、はじめます」
すると、龍志はモニターの前にたち、超猛スピードでモニタータッチして、チェスを動かし、7番のコンピューターと対戦していた。
「これは?」
ジャガーは驚いた。
「お父様はいつも頭のウォ-ミングアップに、コンピューターと超高速チェスをしているの。いままでの最高記録は3分18秒で勝利。今は3分の壁を破るのが目標よ」
「チェック・メイト」
「明大、記録は?
「3分18秒です」
「くそ~、またしても同タイムか」
龍志が悔しがった瞬間、床が開き、地下につながる階段が現れた。
「よし、行くぞ」
「はい」
龍志は悔しがりながらも聖華とジャガーに声をかけ、地下に繋がる階段を駆け降りたのであった。
ファイナルゲート本部には、すでに明大と式三がジャガーたちを待っていた。
「内部告発者からの通報は?」
龍志が明大に質問した。
「はい、先ほど5時15分にありました。その映像を録画しておりますのでご覧ください」
すると巨大モニターが天井から降りて来た。そして映像は内部告発者を映し出していた。
「私は、河田技研株式会社のロボット開発部の高村と言います。実は、私が発明した蚊のロボット、通称FM4を中国の商社に1台だけ売りました。このFM4は遠隔操作で蚊と同じように飛び、映像を送ることができる超小型ロボットです。その最大の特徴は蚊と同じく小さな吸収針があり、この針を刺して、液体を送り出すことができるのです。次に、この映像を見てください。これは先日の中山競馬場のレースです。
この7番の馬の足に注目してください」
明大はモニターをズームアップした。
すると一匹の蚊が馬の足まで飛んで行き、そして数秒足に止まり、その後どこかへ飛んで行ったのであった。
「お分かりいただけましたか?私の開発したFM4を使って、馬インフルエンザの菌をレース前の本命馬に打ち込み、そして、その後そのた競走馬からインフルエンザを拡大させ、競馬そのものの開催を危うくする」
「思い出した。この7番の馬は本命馬で、確か、結局走らないで、途中棄権したのを覚えている。そして、その翌日、あの馬インフルエンザ騒動が起きた。JRAの対処が早かったので大事には至らなかったが、少しでも手を打つのが遅れたら大変なことになっていた」
式三が呟いた。
「ファイナルゲートの皆さん、お願いです。私はFM4をこんなことのために開発したのではありません。人が近付くことのできない場所を探索し、薬を与えるために開発したものです。中国の商社、国蛇公社には騙されました。会社も、このことが公になったら企業イメージが失墜することを恐れ、動こうとしておりません、ただ、脅え、静観しかできないのです。お願いです、彼らの悪事を阻止してください」
河田技研株式会社高村からの、内部告発の映像はそこまでであった。
「明大さん、すまないが、映像を巻き戻してくれないか」
ジャガーは明大に頼んだ。
「分かった」
「ストップ!明大さん、この画面の客席のズームアップを」
すると、映像には客席の最前列でFM4の遠隔操作リモコンを操る男が映し出されていた。
「陳 忠将」
ジャガーは叫んだ。
「門長、先ほど高村さんは、国蛇公社に売ったと言っていましたね。国蛇公社の取締役には、あのブラックスネークの趙 蛇真の名があります。国蛇公社はおそらく、ブラックスネークの息がかかった商社ですね」
式三が龍志に言った。
「ということは、今回の相手はブラックスネーク」
ファイナルゲートの全員が硬い表情となった。
「みんな動揺するな、我々は正義のために戦っている」
龍志がメンバーに言い放った。
「よし、冷静に対策を練ろう」
「お父様、馬インフルエンザは確か、西洋薬品の野呂主任研究員が、即効ワクチンを開発したと、噂を聞いたわ」
「その話は公にはなっていないが、私も知っている。今回の話でブラックスネークの真の目的はまだ分からないが、馬インフルエンザの即効ワクチンは、彼らにとって厄介なはずだ。よし、聖華は野呂主任研究員をあたってくれ。明大は本部に残り、情報の中継点を。式さんは陳 忠将の足取りを。私とジャガーは上海に飛び、国蛇公社を探る。いいな、今回の敵はあのブラックスネークだ。充分注意しろ」
「了解」
「ファイナルゲート、ゲートホールディング」
龍志が高らかに今回のミッションを宣言した。
「ジャガー、この『ブルージャガーフラッシュ』をもっていけ」
明大がジャガーに青色のジャガーフラッシュを渡した。
「この『ブルージャガーフラッシュ』は的に当たった後、ある液体が出てくる。まあ、その液体は内緒だがな」
「明大さん、あんた趣味悪いから、あまり期待せずに頂いとくぜ」
ジャガーは微笑みながらその『ブルージャガーフラッシュ』を受け取った。
ファイナルゲートのメンバーは、夜明けと共に行動を開始したのであった。

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2007年9月28日 (金)

第5章
  因縁の対決 馬上の決闘

第5章 (1)

「ジャガー、それ以上近寄るな」
鬼前組 三代目組長、鬼前鯨海(きぜん けいかい)の声が宝石店にこだました。
「趙 蛇真)、いや中国の窃盗団ブラックスネークの総帥、もうこれ以上この浜の街での悪戯、許しはしねぇ~」
「鯨海(けいかい)、この宝石全てとお前の命、本日いただきに参上した。ブラックスネークはこの日本の経済を肥やしに、これから巨大組織となる。しかし、その前に立ちはだかるお前たち鬼前組は目障りだ。この機会を与えてもらったことに感謝している」
時は1990年代前半、日本はバブル経済の真っ只中、まだ小さな窃盗団にすぎなかった中国のブラックスネークは、横浜の街を荒らしていた。そんなある日、鬼前組は組長の鯨海(けいかい)と当時若頭であった虎鉄の2班に分かれ、横浜の街を巡回していた。そして宝石店に窃盗で入った趙 蛇真に遭遇したのであった。ジャガーは当時まだ小学生であり、ヤクザの世界に入る前であったが偶然、宝石店で争う鬼前組とブラックスネークを見かけ、鬼前組を援護に来たのであった。ジャガーは店に入る前に携帯電話で父虎鉄に加勢の要請をしていた。
鯨海は手に持っていた日本刀を抜いた。次に蛇真も、自分の右腕である陳 忠将から剣を2本受け取ったのであった。
「忠将、手をだすな」
「総帥、心得ております」
ジャガーはそのやり取りを、身動きすることなく見ていたのであった。
鬼前組三代目組長 鬼前鯨海 対 ブラックスネーク総帥 趙 蛇真 の戦いが始まった。二刀流の蛇真は鯨海の鋭い剣の応酬に耐えるのみであった。
「どうした、蛇真、お前の剣は守るだけか?」
「鯨海、さすが鬼前組の組長、その鋭い剣、われも耐えるので精一杯だ。しかし、もう遊びはここまでだ。こちらからの攻め、お前は守れるか?」
蛇真はニヤリと笑いを浮かべた。その時であった。蛇真の二本の腕が、まるで空を飛ぶクマ鳥の羽のように高速回転をしだしたのであった。そしてその二本の手に握られた剣の動きは、全く肉眼では見ることは出来なかった。
鯨海に焦りの色が見えた。
「いかん、今攻撃したらやられる」
「どうした、鯨海、攻撃はしないのか。ならばこちらから行くぞ」
そう蛇真は告げると何百の黒ヘビが襲うがごとく、高速回転しているが故に起きる蛇真の数百の剣の刃が鯨海を襲ったのであった。そしてその一振りが鯨海の右肩を貫いたのであった。鯨海は日本刀を握ることは出来なくなった。
「ハハハハ、どうだ『百蛇剣』の威力は。ではその命、頂だいしよう」
蛇真はそう告げると、再び自らの腕を高速回転させたのであった。
「組長がやられる」
ジャガーはその場から鯨海のもとに走りだした。そして鯨海の日本刀を拾った。
その瞬間であった。鯨海に向けて蛇真が撃ち放った何百という剣が、一度に襲いかかったきた。
(カキ~ン)
ジャガーの剣が蛇真の剣を受け止めた。
「何~」
蛇真や忠将は驚いた。
「小僧、お前何者だ」
「鬼前組 若頭 正邪虎鉄の息子 雅、通称ジャガー」
「小僧、わが『百蛇剣』を受け止めたのはお前がはじめてだ。このまま生かしておく訳にはいかんな」
再び蛇真はその腕を高速回転はじめたのであった。そして、蛇真の剣は鯨海とジャガーを襲い、次の瞬間、ジャガーは額に蛇真の剣を受けたのであった。ジャガーの真赤な血が噴出した。
「ジャガー」
「おのれ、蛇真」
鯨海は再び立ち上がり、気を失っているジャガーが握っていた剣を拾い、蛇真に飛びかかっていった。
「おっお~」
しかし、鯨海は蛇真の剣を全身に浴びたのであった。鯨海は宝石店の床に大の字に倒れた。
「総帥、お見事」
「忠将、あのジャガーとかいう小僧を始末しろ。あの小僧『百蛇剣』の唯一の弱点を見抜いたかもしれん。この先あの小僧が成長した時、我々の邪魔となることは必然だ」
「分かりました。総帥、そろそろ警察が来るかもしれません。早くお逃げください」
「忠将、あとは頼む」
蛇真はそう言い残し、宝石店から盗んだ宝石とともに数名の手下を従え、足早にその場を去ったのであった。
陳 忠将は床に落ちている剣を拾い、ジャガーの足もとに立ち、その剣でジャガーの胸を突こうとした。
陳の刃がジャガーの胸を貫こうとした次の瞬間、ジャガーはとっさにその剣を避けたのであった。そして、額から血を流しながらも、再び立ち上がったのであった。
「貴様~」
陳は、ジャガーの類を見ないほどの闘争本能に驚いたのであった。
「陳 忠将、そして総帥 趙 蛇真。ブラックスネークは俺が倒す」
その時であった。虎鉄が残った鬼前組の組員を連れ、宝石店に入ってきた。
「小僧、いやジャガー、また遭おう」
陳 忠将もジャガーにそう言い残し、その場を去ったのであった。
宝石店に到着した虎鉄は、鯨海の姿に驚いた。
「組長~」
「虎鉄か~」
「すいません、援護が遅くなって」
「それはいい。いいか、良く聞け。俺はもうだめだ。鬼前組はお前に託した、そして浜の街を守ってくれ、頼む」
「組長~、しっかりしてください」
「あと、わが息子豹牙を頼む、あやつはジャガーと違ってひ弱だ、たくましく育ててくれ頼む」
鬼前組三代目組長 鬼前鯨海は、ブラックスネーク総帥 趙 蛇真との戦いにその命を落としたのであった。

「組長~」
ジャガーは飛び起きた。全身に汗をびっしょりかいていた。
「また、あの夢か?」
ジャガーは夢をみていた。
「『百蛇剣』なぜ俺はあの剣を見切ることができたのか?」
ジャガーは趙 蛇真の『百蛇剣』をなぜ見切ることができたのか、憶えていなかった。単なる闘争本能の偶然か?それとも他に理由があったのか?
ジャガーは趙 蛇真との因縁の対決が近付いていることを本能で感じ取っていたのであった。
その時であった。ジャガーの部屋をノックする者がいた。
「ジャガー、龍志だ、新たな内部告発者の通報の連絡が入った。ファイナルゲートに集合だ」
「了解した」
ジャガーは龍志と聖華と一緒に、龍志の渋谷の住まいからファイナルゲートに向うのであった。

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2007年9月18日 (火)

第4章
  ファイナルゲートVSバンパイヤーハウス

第4章 (4)

聖華は指示どおり、その日の午後10時、新メディチホテルの10階1013号室に入った。
部屋ではレディードラキュラと呼ばれている長身の女が待っていた。そして、聖華は一枚の契約書にサインをするよう説明された。その契約書にはアダルトビデオへの出演の了解が記されており、当然出演料の振込み口座も記入するような内容であった。
「磯山聖華さん、貴方がこの契約を了解すれば内定はそのままとし、松葉保険グループに入社できます。しかし、契約にサインしない場合、内定は取り消します。それともうひとつ言い忘れました。このことを他言したら、貴方をはじめ貴方の家族が大きな事故に巻き込まれるということだけは忠告しておきます。さあ、どうなさいますか?辞めるのはご自由です」
聖華は言葉を発することなく、その契約書に署名した。
「ありがとうございます、ご理解いただきまして。では私はこれで失礼します」
レディードラキュラと呼ばれるその女は、契約書をカバンに仕舞い部屋を出て行った。
その時、部屋に狼の仮面を被った男とビデオカメラを持った男が入って来た。
「キャー」
聖華は叫んだ。
狼の仮面を被った男は聖華に襲いかかった。そしてその模様をビデオカメラを持ったもうひとりの男が撮影しだしたのであった。
(ビリ~)
聖華は抵抗するが服を脱がされ、ベツドに押し倒された。
「なかなか大柄な女じゃないか、気に入った」
狼の仮面を被った男はそう呟くと、聖華のブラジャーをもぎ取ろうとした。その瞬間、「おっさん、重たいんだよ~」
聖華はその狼の仮面を被った男の股間を蹴り上げたのであった。たまらずその男は股間を押さえ、ベッドの横でのたうち回ったのであった。
その隙に、聖華はその狼の仮面を剥ぎ取ったのであった。そしてその素顔を携帯で写真に写し、ファイナルゲートの本部に送信したのであった。
その光景を見たビデオカメラを持った男は、部屋を逃げ出そうとした。次の瞬間、部屋に女性が入ってきたのであった。
それはもう一人の清野聖華であった。
「逃がしはしないわ」
「どうゆうことだ、同じ顔の女が部屋に二人」
すると、狼の仮面を被った男に襲われた聖華が言い放った。
「明大さん、この特殊メイクかゆいんだよ」
そう言いながら、聖華の顔の特殊メイクをとったのであった。するとその特殊メイクの下からはジャガーの素顔が出てきたのであった。
「明大さん、こりゃ~夏向きじゃないな。全身メイクもかゆくてかゆくて」
「ジャガー、どうだ、俺の変装メイクは?」
「やはり、あんた趣味悪いわ」
「ところで、その狼の仮面の男は、松葉保険グループ執行役員の三上優造(みかみ ゆうぞう)だ」
「このビデオは証拠のため没収します」
後から入って来た本物の聖華が、カメラの中のビデオテープを没収した。
「さあ、三上執行役員、詳しく説明してもらいましょう」
聖華とジャガーの表情は、鬼の形相と変化したのであった。

横浜球場の外野席入口前の道路に、高級外車が3台停まった。そして真中の車から,高級スーツに身を包み、両脇に派手ないでたちの女性を3名ほど引き連れた男が降りてきた。
そして、その後の車からは10名ほどのヤクザものも、それぞれの車から降りて来たのであった。
「赤木社長。今日はスポンサー契約の準備のため、球場の視察をお願いします」
「そうだな。バンパイヤーハウスもアダルトの世界から芸能プロダクションへと進出し成功するためにも、野球放送のスポンサーは悪くない話だ」
球場に添ってゆっくり進むバンパイヤーハウス一行の前に、一人の男がたちはだかった。
「兄貴~」
一行の一人、叶 麟童はその男に気がついた。
「お前が噂の元鬼前組組長代理 正邪 雅、いやジャガーか?」
赤木社長はサングラスを外しながらジャガーに目をやった。
「人の道、外せばそこは地獄道、この先一歩も通しゃしねぇ~」
「なに?」
「コンプライアンス・ジャガー推参!」
そして、ジャガーは赤木社長の胸を右人差し指で差した後、その手で拳を握り締め、自らの胸元に引戻しながらこう言った。
「あんたの良心、取り戻しに来たぜ!」
「どうやら、お前は私に喧嘩を売りに来たな?」
「赤木社長、お前はバンパイヤーハウスでビデオ制作と販売を手掛けているが、アダルトビデオに出演する女優は、大手企業に就職を希望している女性たちだ。お前は大手企業の幹部向けに『ウルフマンクラブ』という会員制クラブを創設した。そのクラブこそアダルトビデオに出演できる男優の会員制のクラブで、一人3,000万で加入できる。オヤジたちの欲望につけこんだクラブだ。そして、就職を願う女性たちを抱かせ、ビデオをとり販売し、儲けるという仕組みだ」
「ジャガーくん、君は想像力豊かですね?そんな証拠がどこに?」
「先日、松葉保険グループの三上執行役員がすべてゲロしたぞ。それにここに証拠のビデオもある。会員の大手企業の幹部たちは、そうしてビデオに出演した女性を自分たちの企業に就職させ、優秀な男性社員と結婚させる。『ウルフマンクラブ』の会員たちはそのことをネタに、妻となった女性たちに自分たちの手足となって働くことを結婚した夫に進言させる。そして、自分たちは優秀な部下を増やし出世するという筋書きだ。お前たちバンパイヤーハウス、そして『ウルフマンクラブ』会員である大手企業の幹部の実力のないスケベオヤジたちには、これ以上おいしい話はないからな」
「ジャガーくん、その腕の傷では、どうやらここが君の死に場所になるね」
赤木社長はニヤリと微笑んだ。
その時である。横浜球場では場外ホームランが飛び出した。そしてジャガーの頭上にそのホームランボールが落ちてきたのであった。ジャガーはそれを気配で感じ取り、「ジャガーの爪」を長刀サイズにし、自分目掛けて飛んで来たボールを右手一本で打ち返したのであった。ジャガーの打ち返したボールは再び球場に戻り、ホームへと飛んで行った。そして、ホームランを放ってホームインしようとしている選手の横の、キャッチャーの頭上に戻っていた。キャッチャーは驚いた表情で、そのボールを慌ててキャッチしたのであった。
「何~」
赤木社長の微笑みが冷や汗に変わった。
「お前たち、ジャガーをやれ」
赤木社長がそう告げると、10人ほどのヤクザものがジャガーに襲いかかったのであった。
「麟童~、逃げろ。俺はお前とは戦いたくない」
「兄貴~、今の話は本当なのか~」
麟童は赤木の命令にためらっていた。
「本当だ。赤木を信じてはいけない」
10人ほどの赤木の取巻きがジャガーに襲いかかっているとき、赤木の車から銃口をジャガーに向けるものがいた。
「兄貴、危ない」
次の瞬間、銃弾がジャガー目掛けて飛んでいった。
「ウッ~」
ジャガーに当たる寸前、麟童が身をていして銃弾を浴びたのであった。
「麟童~」
ジャガーは叫んだ。そして麟童のもとにジャガーは駆け寄った。
「兄貴~、ごめん、最期まで迷惑かけて」
「そんなことはないぞ麟童、しっかりしろ~、麟童」
「うっ~」
麟童はジャガーの胸の中で息を引き取ったのであった。
「くっそ~」
ジャガーはゆっくりと立ちあがり、赤木の取巻きたちを睨みつけた。
銃弾を発した車から、レディードラキュラと呼ばれている女が現れた。
その前に一人の女性が立ちはだかった。
「あなただけは許さない」
「あら、磯山聖華さんじゃないの」
「私は清野聖華、ファイナルゲートの一員です。私の親友、君原瑠璃子の仇、打たせてもらうわ」
「面白いわ」
そう言いながらレディードラキュラは銃を捨てると、隠し持っていた鞭をブーツから取り出したのであった。
鞭は容赦なく聖華を襲ったのであった。しかし、俊敏な聖華はその鞭をかいくぐり、レディードラキュラに右ストレートのパンチを食らわしたのであった。その戦闘法はまさにジャガーの戦い方であった。辛うじて立ち上がったレディードラキュラであったが、
立ち上がるやいなや、今度は聖華の右回し蹴りが炸裂した。そしてレディードラキュラは完全に聖華にKOされたのであった。
一方、ジャガーは赤木の手下を全て片付け、赤木を追い詰めたのであった。
「ジャガー、勘弁してくれ、欲しいものなら何でも渡そう。金か、女か、そうそう、この間六本木にとても感度のいい女がいたぞ、紹介しよう」
「赤木、お前の命もらった」
ジャガーはそう赤木に告げると、「ジャガーの爪」を振りかざした。
「ジャガー、止めなさい」
「しかし、お嬢さん、こいつはお嬢さんのご親友と麟童の仇」
「赤木の命を奪っても瑠璃子は帰ってこないわ。それより、今回の悪事は全て白状してもらい、二度と瑠璃子のような犠牲者を出さないようにしたいの」
「くっそ~、分かりました、お嬢さん」
ジャガーは「ジャガーの爪」で赤木を峰打ちにした。
その時であった。神奈川県警と龍志が横浜球場前に到着した。
「赤木、観念しろ。詳しくは警察で聞こう」
赤木社長はじめ、バンパイヤーハウスのメンバーは一人残らず、神奈川県警に連行されて行ったのであった。
ジャガーは、そっと麟童の遺体に手を合わせるのであった。
「聖華、ジャガー、我々の前には、まだまだ掃除をしなければならないホコリやゴミの山が沢山ある。友の死を決して無駄にしないためにも、我々には立ち止まっている時間はない」
龍志が二人に声をかけた。
「門長」
「お父様」
ジャガーと聖華は涙を堪えながら拳を強く握った。そして、人の道を外した悪に立ち向かう決心をより強くするのであった。

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2007年9月 7日 (金)

第4章
  ファイナルゲートVSバンパイヤーハウス

第4章 (3)

翌日、ファイナルゲート本部に再びメンバー全員が集合した。
「何かわかったか。ではまず、式さんと明大の報告を聞こう」
「では門長、私から報告します」
式三は明大と調べたバンパイヤーハウスについて報告を始めた。
「バンパイヤーハウスの社長、赤木 大吾(あかぎ だいご)はかつて解体業をしていました。どうやらこの時、闇の世界の依頼で何らかの事情で殺された人の骨を、建物の解体と同時に土地にばらまく仕事をしていたようです。警察もこの件に関してシッポを掴もうとしていましたが、既にその時には解体業を廃業しています。そして、そこで得た資金を元手にバンパイヤーハウスを設立し、アダルトビデオの制作と販売を始めています。会計監査人に問い合わせてみたんですが、そのビデオに出演した女優へのギャラの未払いもなく、契約書もしっかりしているようです。しかし、その女優たちがビデオに一度しか出演しないのは謎のままです。経理的にも粉飾決算などはないのですが、気になるのが赤木社長の羽振りの良さです。愛人を4~5人持ち、常に海外で豪遊しています。アダルトビデオが好調とはいえ、あれだけ遊べる金は入ってこないとみています。おそらく、解体業の時と同じく他の収入源が必ずあるはずです。それも決して表にでることのない何かが」
「そうか、叩けば大きなホコリが出そうだな」
「聖華は、瑠璃子さんのことで新たに分かったことは」
「はい、お父様。瑠璃子は高校時代もそうでしたが、共生国際大学での成績は決して優秀ではなかったです」
「しかし、その成績では松葉保険グループには入れないだろう?」
「そうです、お父様。瑠璃子はおそらく何らかのコネで松葉保険グループに入った模様
です」
「彼女が口にしていたレディードラキュラとは何者かわかったか?」
「はい。就職サイトの掲示板でこんな書き込みがありました。『私もレディードラキュラに声を掛けられないかな~、そうすればどんな大手の会社でも就職できるのに』しかし、この書き込みはわずか数分で掲示板から消されています。何者かが情報をもみ消そうとしているのがうかがえます」
「聖華の報告から推測するには、瑠璃子さんは松葉保険グループに入るのにコネを使った。そのコネと、就職するときレディードラキュラに声を掛けられたことが結びつく可能性があるということか?そして、そのことがバンパイヤーハウスのビデオ出演に繋がるということか?」
龍志は腕を組みながら言った。
「ジャガー、昔の弟分はどうだった?」
「はい、門長。麟童は赤木のことを信じて働いています。鬼前組を辞めたあと、解体業の用心棒をしていた時に赤木に出会ったみたいです。麟童には父親が作った多額の借金があり、その借金もバンパイヤーハウスの仕事をするようになってから全額返済しています。麟童の目には、赤木が悪の道に手を染めていることは見抜けないでしょう」
「そうか。では私からの報告だが、バンパイヤーハウスの出演女優からの相談についてだが、やはり数件ある。残念だが、具体的内容は各弁護士とも守秘義務があるため明かしてくれないがな」
「門長、俺をバンパイヤーハウスに潜入させてくれ」
ジャガーは龍志に申し出た。
「ジャガー、今回はだめだ。赤木はお前が想像している以上に用心深い。それにその左腕ではまともに戦えまい」
「しかし、赤木のシッポを捕まえるには潜入が早いのでは」
「お父様、これを見てください」
聖華は龍志にある書類を見せた。
「これは松葉保険グループの中途採用の求人か」
「そうです。私は身分を隠し、この中途採用試験を受けてみます。その時レディードラキュラが声を掛けてくれば、全て謎が解けます」
「お嬢さん、それは危険だ」
ジャガーは聖華の提案に反対した。
「お父様、お願いします。瑠璃子を死に追いやった原因を知りたいの。そして、二度と瑠璃子のような犠牲者を出したくないんです。私にやらせてください」
「よし、分かった。聖華をおとりにレディードラキュラに接触する。ジャガーは聖華のボディーガードを、式さんと明大は赤木の動向を引き続き探ってくれ」
「お嬢さん」
ジャガーは聖華の横顔を見ながら、言葉に表すことの出来ない不安にかられるのであった。

聖華はその日、身分を偽り松葉保険グループの中途採用試験に臨んだ。筆記試験ではわざと回答を間違え、面接試験などでは的はずれな回答をしてみせたのであった。
そして、試験を終え松葉保険グループの本社ビルを出たときであった。
「磯山聖華(いそやま せいか)さん」
聖華は磯山という偽名を使っていた。
「はい」
聖華はその言葉に振向いた。
そこには長身で髪が長く、黒のスーツに身を包んだ、細面の女性が立っていた。
「歩きながら話しましょう」
「はあ」
聖華とその長身の女性に歩調を合わせた。
「あなた、松葉保険グループに入社したい?」
「もちろんです」
「しかし、残念ね。試験は出来た?」
「ダメでした」
「そうでしょ。だけど安心して、私が特別枠で入れてあげる」
「ほんとうですか?」
「でも、条件があるわ」
「条件?」
「その条件を飲めば、貴方を内定にしてあげる」
「何ですか、その条件とは?」
「今は教えることはできないわ。いいこと、明日貴方のお宅に内定通知書を送るようにしてあげる。ただし、約束のその条件を飲まなければ内定は取り消すわ。どう?ハハハハ」
長身の女性はそう言い残すと姿を消したのであった。
「あの女こそレディードラキュラ」
聖華は両手の拳を強く握るのであった。

翌日聖華はレディードラキュラの言ったとおり、松葉保険グループの採用内定通知を受け取った。しかし、その内定通知書には、同封されているある指示事項があった。
『本日午後10時、新メディチホテルの10階1013号室に来ること』
ファイナルゲートの本部にメンバー全員が揃っていた。
「お嬢さん、これ以上は危険だ」
「ジャガー、心配しないで。今回は私の力で解決したいの」
「聖華、ジャガーの言うとおりだ。これ以上は危険だ」
「お父様まで。レディードラキュラに接触でき、このチャンスを逃しては瑠璃子の無念を晴らすことはできないわ。お願い、私を行かせて」
「門長、私に良い案があります」
「明大」
ファイナルゲートのメンバーは一斉に明大に目をやった。そして、生駒明大はその案を自信ありげに語るのであった。

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2007年8月28日 (火)

第4章
  ファイナルゲートVSバンパイヤーハウス

第4章 (2)

ビデオには、ひとりの女性が狼の仮面を被った男性にレイプされる映像が写っていた。
嫌がる女性の服をもぎ取り、抵抗するが無理やりベッドに押し付けられた。しかし、その狼の仮面を被った男が女性の耳元で何やら呟いた途端、女性は抵抗するのを止め、その男の行為を受け入れるのであった。
そしてその女性の顔がアップに映し出された。
「瑠璃子~」
まさにその映像は自殺した瑠璃子がアダルトビデオに出ている映像であった。
「これは、バンパイヤーハウスの闇のビデオですね」
「式さん」
「バンパイヤーハウス。闇のビデオ制作、販売を手掛ける会社で、国内海外を問わずアダルトビデオでかなり儲けている。マニアには、容姿端麗の素人女優が毎回出演するこのシリ―ズが特に人気だ。しかし、それに出演した女優は一度しかビデオに出演しないのが、マニアの中では謎とされている」
式三は映像を観ながら呟いた。
「これは酷い映像だ」
「明大さん」
式三と明大もファイナルゲートに来たのであった。
そしてビデオが終了したその時、瑠璃子のメッセージが流れた。
「私は訳あってこのビデオに出演しました。あの日、レディードラキュラの誘いさえ断ればこんな想いはしませんでした。このことが幸彦に知られることが怖いの。幸彦の出世の妨げになることだけは避けます。それは私が命を絶ち、このことを封印すること。聖華、このビデオを観て驚いたでしょう。だけど、このビデオを観ている時には私はもうこの世にはいないかも。
このことは幸彦にはくれぐれも秘密にしてください。だけど、許せない。このことをネタに幸彦の仕事に影響を与えようとするなんて。聖華お願い。私だけでなく、このことで脅され苦しんでいる女性は他にもいるはずよ。助けてあげて、聖華~」
それは、瑠璃子から聖華への命をかけた依頼であった。
聖華は瑠璃子の遺書を握りしめ、再び大粒の涙を流したのであった。
「バンパイヤーハウスの後ろの組織は危険だぞ」
「お父様」
その時、ファイナルゲート門長の清野龍志もファイナルゲート本部に姿を現した。
「聖華、これは危険なミッションだ。覚悟は出来ているな」
「もちろんです。瑠璃子は命を掛けて私に訴えてきた。他にも瑠璃子と同じように苦しんでいる人が、今この時にもどこかにいる以上、バンパイヤーハウスの面の皮を剥がし、必ずその罪を暴いてみせます」
「よし、分かった。では、式さんと明大はバンパイヤーハウスをあたってくれ。聖華は瑠璃子さんの身辺の再調査だ。特にビデオで彼女が口にしたレディードラキュラとは何者なのかを突き止めるんだ」
龍志はその時、うかない顔をしているジャガーに気がついた。
「どうしたジャガー?」
「バンパイヤーハウスには、昔俺の弟分だった男がいる」
「えっ~」
聖華はジャガーに冷たい視線を浴びせた。
「門長。俺はかつての弟分、叶 麟童(かのう りんどう)に会ってくる」
「いいか、ジャガー。お前はもう裏の人間ではない、表の人間だ。そのことだけは明かすのでないぞ」
「心得てます」
「よし。私は同じような相談依頼が来ていないか、弁護士、警察のルートをあたってみる。各人情報収集後、再集合だ。ファイナルゲート、ゲートホールディング」
龍志は今回のミッションを高らかに宣言した。
そして、ファイナルゲートのメンバーは情報収集に向け、足早にファイナルゲート本部を出て行ったのであった。

ジャガーは六本木のバーにかつての弟分、叶 麟童を呼び出していた。
「兄貴、お久しぶりです。お元気そうで。その左腕はどうしたんですか?」
「ああ、これか。ちょっと遊びでボクシングの達人と喧嘩してな、相手さんが本気になるもんで怪我してな」
「相変らず、兄貴らしいな。そしてその喧嘩のお相手は?」
「ビビッて、国に帰ったらしい。まあ、もう裏の遊びは懲りたと思うがな。ところで麟童、借金は返済したのか?」
「お蔭様で、去年なんとか返済しました。鬼前組を辞めた後、解体業者でトラブル防止の用心棒をして、その縁で今バンパイヤーハウスにいます」
「バンパイヤーハウス?あのビデオ制作販売のか?」
「兄貴、さすが詳しいですね。そうです。うちの社長はかなりのやり手で儲けまくってますよ。それもあって、俺の借金も返済できました」
「お前、ヤバイものに手出してるんじゃないだろな?」
「兄貴、止めてください。アダルトビデオ制作と言っても、ちゃんと女優さんとは契約書も交わしてますし、問題ないですよ。俺は販売担当だから制作サイドのことは詳しく知らないけど、女優さんたちもかなりのギャラを貰っているらしいですから」
「それなら、いいんだが」
「それより、虎鉄組長はお亡くなりになったそうですね」
「そうだ」
「組長には迷惑かけました」
「親父も、お前には何も力になってやれなかったと、お前が組を出て行ったとき呟いていたな」
「いえいえ、命を救ってもらっただけでも感謝しております。俺の親父がギャンブルで作った借金で俺が命を絶とうとしたとき、兄貴があの橋の上で俺の自殺を止めてくれて、そして鬼前組に入れてくれた。借金を虎鉄組長が肩代わりしてくれて、あの時は本当にに助かったし、今でも感謝しています。しかし、親父が亡くなった時に借金が膨らんでいたことはどうしても許せなかったし、もうこれ以上、組長や兄貴に迷惑をかけることだけはできなかった」
「ああ、わかっているぞ、麟童」
「ところで、兄貴は鬼前組の組長に?」
「組長は豹牙が継いだ」
「豹牙?兄貴は?」
「俺は鬼前組を辞め、今はある人のボディガードをしている」
「そうだったんですね。ところで今日は」
「いや、今の仕事が終わったら、次の口を見つけないとな。そこでお前に相談をな」
「なんだ、そんなことですか。お安いことです。うちの社長は腕のたつ兄貴なら大歓迎だ」
「そうか、それは安心した。今度一度俺に紹介してくれないか?」
「わかりました」
「頼んだぞ、麟童」
ジャガーと麟童はその後、昔話に話が弾んだのであった。

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2007年8月17日 (金)

第4章
  ファイナルゲートVSバンパイヤーハウス

第4章 (1)

「ジャガー、急いでちょうだい」
聖華は冷静さを失っていた。
ジャガーはアトミックホークとの死闘で左腕に深い傷を負っていた。左腕はハンドルに添えることしか出来なかったが、聖華の焦りを感じ取ってか、少しでも速く行き先に到着するよう、真夜中の静けさが漂う街にためらうことなくアクセルを踏み込んだ。
「ジャガー、ここで待ってて」
聖華はそうジャガーに告げると、世田谷にある病院に慌てて入っていった。
その病院に入るや否や、聖華は奥にある集中治療室に走っていった。
「聖華ちゃん」
「おばさん」
「瑠璃子に何があったの?」
その時、聖華の目には薄いベッドに横たわり、顔に白いハンカチが掛けられている高校時代の親友、君原瑠璃子(きみはら るりこ)の冷たい姿が目に飛び込んできた。
「瑠璃子、どうして相談してくれなかったの。瑠璃子~」
瑠璃子の遺体は聖華の呼びかけに当然答えることはなかった。
「おばさん、なぜ、なぜ瑠璃子が薬を飲んで自殺を」「私たちにもわからないわ。でも、ここに私達両親と夫、幸彦さん、そして聖華ちゃんに宛てた遺書があるわ。それと貴方にはこのビデオテープもね。私達への遺書には私達両親への感謝が綴られていたわ。幸彦さんも出張先から今こちらに向かっています」
その時だった。一人の男性が聖華と同じようにその集中治療室に飛び込んできた。
それは瑠璃子の夫で、大手保険会社に勤務する君原幸彦であった。
「瑠璃子~、どうしてだ。昨日出張に出かける時、いつもどうり笑顔で見送ってくれたじゃないか。どうしてだ~」
幸彦は泣き崩れていた。
「幸彦くん、瑠璃子は幸せだったんだな」
瑠璃子の父親が幸彦に声を掛けた。
「もちろんです。来年には赤ちゃんを作ろうって、これからの夢を語りあったばかりだったのに」
「幸彦さん、ご無沙汰しております」
「聖華さん」
「瑠璃子に何も変わったことはなかったのですか?」
「ええ」
幸彦は泣きながら答えた。
聖華はそっと瑠璃子から聖華宛ての遺書が入った封筒を開け、遺書に目を通したのであった。そこにはこう書かれていた。
「聖華へ。元気ですか。新しい弁護士のお仕事、大変ね。聖華は私の憧れだったわ。勉強も運動もおしゃれも、聖華には負けてばかり。でも聖華にひとつ勝ったことがあったわ。それは、幸彦と出会えたこと、そして彼と結婚できたこと。幸彦は私を大切にしてくれたし、深く愛してくれた。短い期間だったけど幸せだったわ。ごめんね聖華。これからも聖華とはいっぱいおしゃべりして、遊んで、時には喧嘩したりして過ごしたかった。だけど、私には幸彦さんの足を引っ張ることはできない。こんな道を選んでしまったことは許されることではないけれど分かってちょうだい。聖華、高校時代から貴方が私を励ましてくれて認めてくれたこと、本当に感謝しています。これからもそっと応援していますから、体こわさないように頑張ってね。そして良い人みつけて、早く幸せになってね。 瑠璃子」
聖華の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「どうして、瑠璃子、こんなことを」
聖華はやり切れない感情を、自らの拳を床に叩きながらぶつけるしかできなかった。
その時、遺書と一緒に置いてあった一本のビデオテープに気が付いた。
聖華はそのビデオテープを手にとった。そのテープにはタイトルも記載されておらず、ただ小さく極秘と記されていた。
「聖華さん、まずはお引取りください。家族で通夜や葬儀の準備もありますし、それにこんな時間でもありますので」
瑠璃子の父親は何とか冷静さを保とうとしていた。そして、聖華を気遣い言葉を掛けた。
聖華はその極秘と記されているテープがむしょうに気になっていた。
そして、そのテープに親友瑠璃子の死の原因が隠されていることを感じ取っていたのであった。
「おじさん、ありがとう。では、通夜と葬儀の場所が決まったら教えてください」
「はい、こちらこそ」
聖華は、瑠璃子の両親と夫幸彦が瑠璃子の遺体をそっと見守る集中治療室を後にしたのであった。
聖華は病院の表で待つジャガーの愛車、紺色のジャガーに戻った。
「お嬢さん、ご親友は?」
「亡くなったわ」
「そうですか」
ジャガーは掛ける言葉を探していた。
「ジャガー、私への気遣いはいいわ。それより、瑠璃子は衝動で自殺するような人ではないわ。どうやらよっぽど事情があってのこと。両親や夫に内緒の秘密があったはずよ。このビデオテープにそのメッセージがあるはず。ジャガー、この足でファイナルゲートに向かってちょうだい」
「聖華お嬢さん、了解しました」
聖華は悲しみに堪え、瑠璃子の自殺の原因を探るべく、瑠璃子から託されたビデオテープを手に、ジャガーとともにファイナルゲートを目指すのであった。

ジャガーと聖華は新宿歌舞伎町にあるプールバーに入っていった。そう、そこはファイナルゲートの本部でもある。
ジャガーと聖華はプールバーの扉を開けた。相変わらず店には誰一人いなかった。
次の瞬間、天井に設置してあるダウンライトが点灯した。
そしてその下にはミニ型のボウリングのピンが10本並んでいた。
ジャガーと聖華は気付いた。足元に置かれているボウリングのボールでそのピンを1投で倒したとき、ファイナルゲートの本部に繋がる扉が開くことを。
ジャガーはそのボールを取ろうとした。
「ジャガー、私に任せて」
聖華はジャガーを制止し、ボールを取った。そして、ボールの穴に指を入れ、投げる体制をとった。
聖華は静かにボールを投げた。ボールはゆっくり暗闇でスローモーションのVTRでも観ているかのようにジャガーの目には映った。
ボールはピンに吸い込まれるように転がり、見事にストライク。10本のピンを倒した。するとその奥の壁が開き、扉が現れたのであった。
「お嬢さん、お見事」
「ジャガー、行くわよ」
「はい」
聖華は迷うことなく扉に飛びこんでいった。ジャガーはその後を追うのであった。
ジャガーと聖華は地下にあるファイナルゲートの本部に到着した。
ファイナルゲートには聖華とジャガーしかいなかった。
「お嬢さん、皆を呼びましょうか?」
「いいえ、待って。このビデオを確認してからにして」
聖華はジャガーにそう指示するとビデオのテープを再生機にかけたのであった。
「これは?」
ジャガーと聖華はそのビデオに映し出されている映像に息を飲んだのであった。

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2007年8月 8日 (水)

第3章
  消された年金

第3章 (4)

ジャガーはアトミック・ホークとの決着のため横浜アリーナに到着した。
「いいかジャガー、島谷さんの身の安全を第一優先にしろ。そのデーターは最悪、敵に渡しても致し方ないであろう」
「門長、ホークの黒幕の狙いはあくまでもこのデーター、島谷さんの命ではないはず。このデーターをみすみす奴らには渡しませんよ」
「ジャガー、くれぐれも慎重にな」
龍志と明大はファイナルゲートで待機していた。そしてジャガーが掛けているネックレスからの映像で指示を送るのであった。
「ジャガー、先輩を助けて」
「お嬢さん、私に任せてください」
聖華と式三は、ジャガーを横浜アリーナの玄関まで車で送った。そして、車の中で待機していたのであった。
ジャガーは島谷から預かった、マイクロデーターを手に握り締め、横浜アリーナの扉を開いた。その中央には特設リングが設置されていた。ただし、観客は一人もおらず、静寂だけがジャガーを待っていた。
「ジャガー、怖気つかずよく来たな」
会場内にホークの声が聞こえた。
「よく聞け。リングに上がり裸になりトランクスとグローブをつけろ。そして、リング中央にあるボックスに例のデーターを入れろ。心配するな、島谷からいただいたこちらのデーターもその中に既に入れてある。つまり、俺とお前の勝者がそのデーターを持ち帰るということだ。それとお前、俺との約束をひとつ破ったな」
「ホーク、俺は約束を破ってないぞ」
「これでもそう言い切るか?」
すると会場のスポットライトがジャガーの入って来た扉の横に当てられた、そこには聖華の姿があった。
「聖華お譲さん」
聖華はジャガーの後を追って会場内に入ってきたのであった。
「ホーク、島谷先輩の身柄を渡しなさい」
「よかろう、ただし条件がある。もし、俺がジャガーに勝ったら、今晩お前は俺と付き合う約束を交わせばな」
「いいでしょう。では私からも条件があります。ジャガーが勝ったら貴方の黒幕の名を教えると」
「ハハハハ、気の強い女だ。気に入った。その条件のもう。島谷は池袋の雀荘屋の2階に監禁している。これで約束は守ってもらおう。ジャガーを倒し、横浜の繁華街で味わった屈辱、今宵すべて晴らすことができる。ハハハハ」
「式さん、聞いた?島谷先輩は池袋の雀荘屋にいるわ」
「お嬢さん、了解した。今すぐ救出に向かいます」
その間にジャガーはトランクスを履き、グローブを付け、リング中央にあるボックスにマイクロデーターを入れたのであった。そのボックスは、ジャガーがマイクロデーターを入れたと同時に、リングから5m上に上がっていった。
ジャガーはその光景をみながら自身のコーナーポストにネックレスを掛けた。
それは、龍志と明大にホークとの戦いの映像を送るためであった。
「では始めよう」
すると、ジャガーの入ってきた扉の反対側から、既にグローブをつけ、臨戦態勢のホークが微笑みを浮かべながら歩いてきた。そしてリングに上がったのであった。
「ホーク、俺はお前に恨みはない。しかし、この国に住む人々の道を守るためお前を倒す」
「ほざいたな、ジャガー。お前の命も今日までだ」
ジャガーとホークの因縁の戦いが始まった。聖華はその戦いをジャガーのコーナーの下で見守るのであった。
ホークの鋭い左ジャブ、右ストレート、そして左フック、ワンツーがジャガーを襲った。しかし、ジャガーはホークの拳を全てかわしていた。
その時であった。
(ブゥーン)
ホークは左前蹴りをジャガーに放ったのであった。そして次は右後ろ回し蹴り。ジャガーは間一髪のところでかわしたのであった。
ジャガーに焦りの色が見えた。
「ハハハハ、どうだ。ジャガー俺は以前のパンチだけの男ではないぞ。お前を倒すため、ムエタイのキックを身につけたのだ」
容赦なくジャガーに、パンチと蹴りの嵐が注がれた。
その映像を見ていた明大から聖華に連絡が入った。
「お嬢さん、このままではジャガーはやられます。私がこのファイナルゲートのコンピューターで分析した結果、ホークの弱点は見つかりません。ただ、右の後ろ回し蹴りが他のパンチ、蹴りに比べると威力はありますが、スピードがない。この部分しか、つけ入る隙がありません」
「ありがとう、明大さん。ジャガー~」
聖華はジャガーの名を叫んだ。
「ホークの右の後ろ回し蹴りに気をつけて」
その言葉にホークは笑みを浮かべた。そして右後ろ回し蹴りをジャガー目掛けて蹴り込んだのであった。
「今だ」
ジャガーは自らの左腕でその廻し蹴りを受け止めた。
(ギシ~)
ジャガーの左腕から骨の砕ける音がした。しかし次の瞬間、ジャガーは両腕でホークの右足を抱え込んだのであった。そしてホークをリングの床に倒し、腕ひしぎ逆十字固めの変形足番である、足ひしぎ逆十字固めに持ち込んだ。
(ギシ~、ゴキッ~)
今度はホークの右足から骨が軋む音がした。ホークの右足は既に骨折をしていた。そして立つ事もできない状態であった。最後の力を振り絞り、ホークは立ち上がった。
「ホーク、お前は確かに素晴らしい格闘家だ。しかし、我々裏の世界で命を掛けて戦っているものの相手ではない。お前は自分が傷つくことを恐れている。我々裏の人間は、例えこの命が無くなろうと戦いに恐れることはない。俺は左腕を犠牲にしてお前の動きを止め
た。そしてこの戦いに勝利を収めた。『肉を切らして骨を絶つ』これが命を掛けた真剣勝負の極意だ」
ジャガーはホークにそう言い放つと右ストレートをホークの顔面に打ち込んだ。
ホークはジャガーのパンチを食らい、自らのコーナーへと吹き飛ばされた。
「ホークよ、お前の負けだ。そして二度と裏世界に足を踏み入れるな」
「ジャガー、俺の負けだ」
「ジャガー」
聖華はジャガーの名を呼び、そして『ジャガーの爪』を投げ渡した。それを右手で受け取ったジャガーは、リング中央上空のマイクロデーターが入っているボックスを真っ二つに割った。
二枚のマイクロデーターは聖華の元へと飛んだ。そしてそのデーターは聖華の手の中に握り締められたのであった。
「約束だ、ホーク。黒幕を吐いてもらおう」
それから数時間後、赤坂の料亭で二人の代議士が密会をしていた。
「義仲先生、お連れ様がお越しになられました」
「新宮くん、遅いではないか」
「例のマイクロデーターは間違いなく手に入るな」
「義仲先生、お約束通り、私の手の者がもうそろそろこちらに届けに来ます」
「そうか、これで君もわが党に復党できるな」
「義仲先生こそ、このデーターをネタに安藤内閣を倒し、森下派を牛耳り、次期総裁、いや総理へと上るおつもりで?」
その時、一人の仲居が二人の代議士の部屋へ入って来た。
「先生方、これが本日の献立です」
「おう、見かけない仲居だな、なかなかの美人ではないか?」
「ありがとうございます」
そう言いながら二人は差し出された料亭の献立を見た。そこにはこう書かれていた。
人の道、外せばそこは地獄道、この先一歩も通しゃしねぇ~
「なんだこの献立は」
義仲と新宮は激怒した。
「私はファイナルゲートの清野聖華と申します。ファイナルゲートの門長から一言進言が御座います。」仲居に変装した聖華は、テーブルにワンセグ携帯を置いた。その画面には龍志が映し出されていた。
「義仲先生、新宮先生、あなた方の思惑は私達ファイナルゲートが阻止いたしました。あなた方が手に入れたかったマイクロデーターは、私達がしかるべき処理をいたしますのでご安心ください。そして、年金問題に関しては、島谷公平君に今後ますます尽力していただく所存です。今回の件は目をつむります。しかし、再び悪い考えは起こさないでください。その時はまた、我々ファイナルゲートがあなた方の前に立ちはだかります」
その時料亭の庭から二本のダーツが投げ込まれた。そして、義仲、新宮の議員バッチに命中し、バッチは真っ二つに割れたのであった。
「何者だ」
庭には、左腕に包帯を巻いたジャガーの姿があった。
「あなた方の政治家としての良心、取り戻しに参りました」
「うっ~」
もはや、義仲と新宮は唸ることしか出来なかった。
「ジャガー、行きましょう」
聖華とジャガーはそう言い残し、二人の代議士とは対照的に、紫陽花が誇らしげに咲く赤坂の料亭を後にしたのであった。

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2007年7月27日 (金)

第3章
  消された年金

第3章 (3)

「島谷先輩、どうしたんですか?何があったんですか?」
聖華は巨大モニターに写し出された島谷に向かって言った。
「島谷さん、私がファイナルゲートの門長の清野龍志です。そして、聖華の父でもあります。いかがしましたか?」
「清野先生、お噂は聞いております。私は厚生労働省に勤務する島谷公平と申します。私の勝手なお願いを聞いていただけませんでしょうか?」
「どうぞ遠慮せずに」
「聖華さんに送ったデーターは厚生労働省の極秘データー、通称『ダーク・ファイル』と呼ばれるものです」
「ダーク・ファイル?」
ファイナルゲートの全員が呼応した。
「今、社会保険庁の年金記録漏れの問題が世間を騒がせているが、実はそれ以上の問題が社会保険庁いや政府にはあるのです。それは、国民から集めていた年金を流用していたということです。この日本は戦後様々な危機を乗り越えてきました。オイルショック、バブル崩壊、不良債権処理などはその代表的な出来事でした。実はその危機の際、経済いや日本社会の建て直しの資金に年金が使用されていたのです。それを知る人間は政府でも数名しかいません。私の父はかつて、厚生労働省の官僚、事務次官でした。その時その年金の使用、いや流用の帳簿を記録作成していたのです。しかし、それが時の政府に見つかり、廃棄を命ぜられその原簿を廃棄いたました。しかし、父は必ずその原簿の審議を問う日が来ると原簿の複写データーを密かに隠していたのです。父亡き後、その複写データーは私が管理していました。もちろん、誰一人として気づかれることなく」
「ということは、国民が納めてきた年金は、実はこの国を救う危機に使われてきたということですか?」
ジャガーが島谷に質問した。
「そうです。しかし、そのことは明かすことの出来ない事実なのです」
「では、この送られたデーターはその原簿の写しの金額の部分ですか?」
「そうです。私がその金額の対象となる項目が記載されているデーターを持っています」
「島谷先輩、なぜ、我々にそのデーターの一部を預けたのですか?」
聖華は心配そうな表情で島谷に質問した。
「先日、我が家に新しいお手伝いさんを雇いました。しかし、このお手伝いさんはどうやら何者かのスパイであったのです。我が家の金庫を開けた形跡がありました。私はこの『ダーク・ファイル』を金庫ではなく、いつも違う場所に隠しているため、盗まれることはありませんでしたが、確かに何者かがこの『ダーク・ファイル』を狙っています。そこで、危険を回避するため、父が私に託したこのファイルを守るため、あなた方ファイナルゲートにこのファイルの一部を預けたのです」
「よく分かりました」
龍志はうなずきながら答えた。
「門長、彼の発言に嘘はありません」
「明大さんよ、大丈夫か?この間のようなことはないだろうな?」
「ジャガー、先日、他国の女スパイにはこの嘘発見機が通用しなかったが、それからまた新たに改良したよ。今度は、皮膚の色や呼吸から推定される外傷や健康面などの変化がないかもチェックしている」
「島谷先輩、貴方の勇気に感謝します」
聖華が島谷に言った。
「清野、私は今から姿を隠す。そのデーターを守ってくれ!みなさんよろしくお願いします」
最後に島谷はそう告げると通信を切ったのであった。
「島谷先輩~」
聖華の心配した声がこだました。
「門長、島谷氏に危険が迫っています」
「そうだ、ジャガーの言う通りだ。その『ダーク・ファイル』を狙う族から彼を守り、データーを決して渡してはならぬ。しかし、我々が動いてはそのデーターの一部を我々が預かっていることを知られてしまう。ことに当たるには慎重さが必要だ」
「門長、ここは俺に任せてもらえないか?」
ジャガーは龍志の机の前に出た。
「門長、聖華お譲さん、明大さん、式三さん、おそらくあなた方はこのファイナルゲートとして、面は既に知れ渡っている。新入りの俺ならその可能性が低いであろうし、ヤクザ者が違う件で嗅ぎまわっているとでも思うかもしれない」
「式さんの意見は?」
「そうですね。ここは先ずはジャガーに任せてみては、ただし、我々も目立たぬように彼を後方支援すればよいと思います」
「明大は?」
「ジャガーには超小型カメラを、今回付けてもらいます。このカメラで彼の情報を我々も入手し、情報を一元化し対応すればよいと思います」
「聖華は?」
「先輩の命を守るのが優先だと思います。ジャガーにはくれぐれも慎重な対応を頼みます」
「よし、意見が一つになった。ジャガー頼むぞ。ファイナルゲート、『ゲートフォールディング』龍志が今回のミッションを高らかに宣告した。
「ジャガー、このネックレスを持っていけ。このネックレスを首に掛けた一番下の部分に超小型カメラが設置してある」
「明大さん、あんたの発明は素晴らしいが、小物の趣味が悪すぎるな」
ジャガーはそう言いつつ、ネックレスを首に掛け、足早にファイナルゲートを後にしたのであった。

ジャガーは新宿にある公園に来ていた。その目的は、島谷公平の隠れ家を探すためであった。
ジャガーは口笛を鳴らした。すると、見覚えのある男がジャガーの前に現れた。
その男は、その公園で路上生活をしている井森佐介であった。
「ジャガーの旦那、お呼びですか?」
「佐介、あの節は世話になった。今日もまたある男を捜していてな、皆の情報を得たくてここに来た」
「そうですか、旦那は運がいい。今日はたまたまボランティアの皆さんの炊き出しの日で大勢の仲間が来ております。旦那の要望に答えられると思います」
そうか、では皆を呼ぶぞ。ジャガーはそう佐介に告げると、口笛を2回吹いたのであった。
すると、どこからともなく大勢の路上生活者がジャガーの前に現れたのであった。
「おお、皆すまない。実は訳あってこの男を捜している。名は島谷公平、年は27歳、職業は厚生労働省の公務員だ」
ジャガーはそう説明しながら、島谷の写真を集まった路上生活者たちに見せた。すると、一人の路上生活者がジャガーの前に出た。
「この男なら知ってるぞ。一昨日、うちの界隈の雀荘屋の二階に入って行ったところを見たぞ」
「池袋の彩蔵、間違いないか?」
佐介がその彩蔵と呼ばれる男に確認した。
「旦那、どうやらこの男は池袋の雀荘屋にいるみたいで」
「佐介、彩蔵、助かった」
ジャガーは皆に礼を言った。
「いやいや旦那、わし等が役立つことはこれぐらいしか」
「いや、俺には心強い仲間だぞ。警察もお前たちの情報をもっと活用すれば、捜査で得ら
れない情報を入手できるのにな」
ジュガーは佐介、彩蔵に別れを告げ、池袋の雀荘屋を目指したのであった。
ジャガーは池袋の雀荘屋に到着した。その雀荘屋はファイナルゲートのプールバーと同じ
く、誰一人客の居ない店であった。
「邪魔をする」
ジャガーはその店の奥にゆっくり進んだ。
「いらっしゃいませ」
店の中から老婆が出てきた。
「店のものか?」
ジャガーが質問した。
「はい、正邪 雅さん、いやジャガーさん。主人がお待ち申しておりました」
「うっ、この殺気は」
ジャガーは額の傷を押えながら、店の奥から漂ってくる凄まじい殺気を感じ取っていた。
ジャガーは臨戦態勢を取った。
「正邪、久しぶりだな」
店の奥から肌の黒い大男が出てきたのであった。
「お前は確か、ボクシングのミドル級元世界統一チャンピオン、アトミック・ホーク(原爆の拳を持つ鷹)」
「憶えていてくれたか、それは光栄だ」
「元世界チャンピオンが俺に何の用だ?」
「何の用、お前忘れたとは言わせないぞ」
「ああ、憶えている、あの3年前の横浜の繁華街でのことをな」

3年前、鬼前組の若頭として、ジャガーは日課でもある横浜の繁華街の見回りをしていた。
「豹牙、猿、変わったことは」
「兄貴、異常はありません」
その時であった。
「キャアー」
キャバクラから肌の黒い大男が、一人のキャバクラ嬢を肩に抱えて店から出てきたのであった。
「助けて~」
そのキャバクラ嬢は助けを求めていた。
「おい、お前待て」
ジャガーはその大男を呼び止めた。
「うむ~」
その大男は足を止め、振り返った。
「お前か、俺を呼び止めたのは」
「そうだ、俺は鬼前組の若頭、正邪 雅、女が嫌がっているではないか?」
「鬼前組、ジャパニーズ・マフィアか?この女は貰った。今夜は体力が余っている、この女で楽しませてもらう」
その時、鬼前組の米山 猿がその大男の正体に気がついた。
「お前は先ほど、横浜アリーナで挑戦者の坂本 一(さかもと はじめ)をわずか1ラウウンドでKOした、ボクシングの世界ミドル級統一チャンピオン、アトミック・ホーク(原爆の拳を持つ鷹)」
「そうか、猿、ボクシングのチャンプさんか。しかし、チャンプといえども、何でも許されるということではない」
ホークは抱いていた女を地面に下ろした。ホークは格闘家として感じていた、ジャガーの闘争心に火がついていることに。
「豹牙、猿、手出すんじゃねえぞ」
「兄貴、相手は世界チャンプだ」
「豹牙、心配するな」
すると、ホークの鋭いジャブがジャガー目掛けて飛んできた。しかし、ジャガーはその拳を見事かわしたのであった。続いて、右ストレート、左フック、ワンツー、ジャガーはホークの拳を全て見切っていた。
「お前、何者だ」
「チャンプさん、もう攻撃は終りか?」
「ウォ~」
ホークはジャガーに突進して行った。
「今だ」
ジャガーは突進してくるホークに対し、自らも突進して行ったのであった。そして、ホークの拳がジャガーの顔面をとえる瞬間ジャガーはホークの股間にすべり込んだ。そしてホークの後ろに回った。
(バッシ~)
慌てて振り向いたホークの顎に、ジャガーの下からの右ストレートが炸裂した。
「ウォ~」
「貴様、憶えていろよ」
そう言い残し、ホークは顎を抑え、横浜の繁華街に消えていったのであった。
「あれから、俺は次の防衛戦に望んだ。しかし、お前に砕かれたこの顎は、その後俺の弱点となりガラスの顎となった。結果は逆転のKO負け、そして俺はボクシング界を引退した。その時俺は誓った。必ずお前に復讐するとな。そして、ついにその日が来たのだ。俺をボディガードに雇ってくれたボスに感謝しなくてはな。ハハハハ」
ジャガーは『ジャガーの爪』を長刀のサイズにした。
「おい、ジャガー、その長刀は俺たちの戦いでは反則だぞ。いいかよく聞け。お前が捜している島谷公平は、昨日俺が確保した。今日の午後9時に横浜アリーナのリングに一人で来い。ただし、武器を持たず丸腰でな。さもなくば島谷の命はないと思え。そうそう、肝心なことを言い忘れた。お前たちが島谷から預かっているデーターも必ず持ってこい。お前と俺の決着に相応しい場所だろう。これもボスのお蔭だ。ハハハハ~、では、ジャガー、リングであおう」
そう言い残し、アトミック・ホークは店を素早く立ち去ったのであった。
ジャガーは『ジャガーの爪』を仕舞い。数時間後に迫った、ホークとの決戦に不安を募らせるのであった

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2007年7月18日 (水)

第3章
  消された年金

第3章 (2)

遡ること5日前、聖華は母校早春大学の講演のパネリストとして招かれていた。それは「年金問題を考える」という議題で、聖華をはじめ、有識者数名と学生たちを交え討議するものであった。
弁護士であり、社会保険労務士である聖華はその依頼を快く引く受けた、ジャガーは聖華のボディガードとして、講堂の舞台の袖から講演を観ていたのであった。
話は社会保険庁の年金の記録漏れ5,000万件について、また、過去の年金帳簿を廃棄した問題などをとりあげて、社会保険庁のあり方などについてであった。
「清野弁護士は年金についてどうお考えで」
司会の学生が聖華に発言を求めた。
「先ほどの議論の通り、年金の記録を1年以内にすべて照合し、その対象者に通知をすることは今の社会保険庁のすべき最低ラインの仕事だと思います」
「社会保険庁の今後のあり方はどう思われますか?」
「今の社会保険庁を解体し新しい組織を作ったとしても、国が責任をもって管理するのが公的年金のあり方です。何でも民営化すればよいというものではありません」
「清野弁護士は、公務員が引き続き社会保険の管理をすべきと」
ひとりのパネリストが質問した。
「そうです。年金記録などの管理は公務員がすべきです。ただ、そのチェック機能、例えば『社会保険監視局』などを創設し、有識者や我々弁護士、社会保険労務士がその中身を常にチェックするべきと思います。それと話は戻りますが、社会保険庁の職員の給与に成果主義を導入してはどうでしょう」
「公務員の給与に成果主義ですか?」
パネリスト全員が驚いた。
「すでに総理大臣が1年間で年金記録の照合を終えると公約している以上、その目標を達成できなければ給与が最低給与でもおかしくないでしょう。危機感のない、ずさんな管理にメスを入れるにはそれぐらいしないと照合は終わらないと思いますが。それとその目標において、ぜひ年金加入期間だけでなく、過去いつに、いくら保険料を納めたか、現段階でいくら年金が貰え将来どう推移するのかシュミレーションできるところまでデーターを整備してもらいたいものです」
「歴代の総理や大臣の退職金などの減額案もでていますが?」
「それはそれでやればいい。しかし、一番すべき事は健全な体質や仕組みを作り上げること。責任はそれからでも遅くはありません」
「なるほど」
パネリストたちはうなずいた。
「では次に、年金財政についてはどうお考えですか?ある党では税金と共に徴収する案が出ていますが」
「その党には悪いが、その考えは年金が何たるかを分かっていない人の考えと思います」聖華の強い口調にパネリトは驚いた。
「よくこのような質問をテレビや雑誌で耳や目にし、そしてその答えを聞きます。『あなたはなぜ年金保険料を払わないのですか?』その答えの大半は『自分が年金を貰えるか分からないからです』と答えています。これは全くもって間違った答えです。厚生年金の積立額は2006年度末約161兆円あり、給付支出した額は32.9兆円です。国民年金にいたっては積立額10.6兆円、給付に支出した額は4.5兆円です。極論を言えば、国民が今、全員保険料の納付を拒んだら、年金は5年も経たずに破綻するということ。つまり、言い換えれば今、国民が支払っている年金保険料で、今、年金をもらっている人たちを支えていると言っても過言ではないでしょう。結論を言いましょう。年金制度とは『世代間相互扶助の精神』の上に成り立っているのです。今、年金保険料を納めることは、自分たちの前の世代とその前の世代に年金が給付されることを意味し、自分たちが貰えるかは自分が決めるのではなく、自分たちの次の世代が決めることなのです。従って、先ほどの質問の答えは的外れであるということです。しかし、一番恐ろしいのはその本当の答えを誰も教えようとしないことです。年金制度とは、前の世代から次の世代にバトンを渡すリレー走なのです。ある間の世代がバトンを受け取ることを拒否したらどうなりますか?」
「リレーであれば失格です」
「おっしゃる通り、年金も同じです」
「それと年金財政とどう関係が?」
「つまり、税金の丼勘定に入れては決していけないものなのです。年金保険料で徴収したものは年金給付のみに使われるべきものであり、余分な施設を建てたり、道路を作ったりするお金に使われてはならないのです。私は提言します。年金の個別財務諸表を毎年作成し、国民に開示することを。年金保険料は年金給付のみに使われていることを確認するため。そして、この考えは社会保険全体にも活用すればよい。健康保険、国民健康保険そして介護保険へと、将来的には社会保険連結財務諸表へとすればよい。
保険料で徴収することは併せて重要な意味も含んでいます。それは先ほど申し上げた精神的な面です。つまり、年金保険料は前の世代の人たちへの年金として、しっかり給付されているという『世代間相互扶助の精神』を確かめ合うためのものです。税金の使い方が疑問視されている今の財政に、大切な年金を丼勘定として突っ込むのは極めて危険だということをご理解いただけましたか?」
「次に制度について、厚生年金と国民年金の制度の統一などについてどうお考えで?」
「私はまず制度がどうのこうのという前に、なぜ年金の精神を政府が国民に訴えないのか疑問です。私は政府が年金についてほんとに知識があり理解しているのであれば、年金制度の精神『世代間相互扶助の精神』をもっと訴えるべきだと思います。その精神無くして、一元化など論議に入るのは『仏作って魂入れず』になる可能性があると思います。
当然、複数の年金制度が複雑に絡む現行の制度がよいとは思いません。ある党が提案する、制度をひとつにまとめ年間所得に対して保険料を徴収し、給付を行うのもひとつの考えでしょう。いずれにせよ、どんなよい制度を構築しても、その精神の啓蒙なくしてその制度など成り立たないということです」
「次に、支給年齢と給付のあり方についてどう考えますか?」
「給付については公的年金である以上、確定給付であるべきと思います。ある有識者の方は確定拠出の導入、または一部導入を論じる方がいますが、年金制度は冒頭に申し上げた通り国が責任を持つ制度です。現行通り確定給付で当然だと思いますが。給付額については現行より減額されることはいたしかたないと思います。ただ、基礎年金部分は国民一人一人が生活できる、最低限の給付額は確保すべきであると思います。それと、報酬比例部分には最低給付総額の基準を設けるべきと考えます。これはあくまでも一例ですが、自分の納付保険料が保険料支払時の長期国債の利回りで運用され積立てられた額を、報酬比例部分の給付総額の最底ラインにするとか。最低基準がないから国民も不安を募らせるのです。支給開始年齢は65歳超に変更することは好ましくないと思います。定年を将来的に65歳とするまでは致し方ないと思いますが、人間の体力に目覚しい進歩があるとは思いません。定年を70歳にし年金支給開始年齢を70歳にするなど、少子高齢化を背景に考えるかもしれませんが、老後を楽しむ余裕を与えない制度にすることは避けたいと思います。保険料の増加については、何度も言いますが制度の精神、制度の透明性、安心性を高めれば国民は納得すると思います。自分の年金保険料がおじいちゃんやおばあちゃんや、ましてや両親に支給されているのであれば納得しないわけがありません」
「では、最後に年金制度について他に提案はございませんか?」
「昨年より政府が提案している年金辞退制度は賛成です。しかし、もっと柔軟性が必要と思います。高所得や財産家が年金を簡単に辞退するとは考えにくいです。例えば、辞退という形ではなく、『次世代に廻す』という位置づけにしなければいけません。『次世代に年金を廻した人』は勲五等を与えるとか、親子二代に渡たって『次世代に年金を廻した家族』はその上の勲四等、三代に渡たっ場合はその三代を勲三等にするとか、褒章制度と絡めるのもひとつの案ではないでしょうか。また、社会保険料と税金の未納のない国民に、貢献賞を与えるとかあっても決して不思議ではないと思いますが」
「それは大変面白い発想ですね」
「頭の古い政治家や固い官僚では思いつかないでしょうね」
ハハハハ~、会場内から笑い声が響いた。
「あと、年金そのものをお金だけで渡す必要はないと思います」
「清野弁護士、それはどういう意味ですか?」
「例えば、年金を現金とサービスポイントに選択して給付できるようにしてもらいたい。サービスポイントは現金で支給されるより10%増額するのもよいと思います。つまり、サービスポイントで受け取り、そのポイントを旅行費用や老後の余暇活動費などに活用できるようにすれば日本経済の活性化にもなります」
「それは、今までに聞いたことのない発想ですね」
「いずれにせよ、年金制度は国民生活の柱のひとつです。政府には真実を語り、真の姿の年金制度再構築に向けて、早急に動いてもらいたいものです」
パチパチパチ、会場には割れんばかりの拍手が聖華に送られた。
その時であった。ひとりの男が花束を持って、舞台にいる聖華のもとに近付いた。
ジャガーはその男に殺気を感じなかったため、その光景を落ち着いて眺めていた。
「清野、すばらしい発言だった。俺もうれしいぞ」
聖華はその花束をもって来てくれた人物に気がついた。
「島谷先輩」
聖華は島谷の花束を受け取った。
島谷は聖華に握手を求めた。聖華は快く島谷の差し出す右手を握った。
「清野、後は任したぞ」
島谷はそう聖華に言い残し、足早に会場を出て行った。
講演は無事終了した。
「聖華お嬢さん、あの男は?」
「大学時代の私の先輩。島谷公平(しまたに こうへい)さん。確か今、厚生労働省の官僚だけど」
ジャガーと聖華は、島谷の淋しげな背中が妙に気になったのであった。

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2007年7月 9日 (月)

第3章
  消された年金

第3章 (1)

その日ジャガーはある男に会うため浅草に来ていた。
「兄貴、お久しぶりです」
「猿、達者でなにより」
ジャガーが呼び寄せた男とは、鬼前組の組員、米山 猿であった。ジャガーと猿はブラックスネークと戦った日以来の再会であった。
ジャガーと猿は浅草の商店街の和菓子屋に入り、同じ席には着かずお互い隣の席に着き背を向けながら会話をしていた。
「猿、鬼前組に変わりはないか?」
「へい、五代目は大変行動的で、浜の人たちからも信頼を得つつあります」
「それはよかった」
「しかし、ひとつだけ気になることが」
「気になること?」
「兄貴と共に戦ったあの日以来、熊の兄貴を中国に行かせ、ブラックスネークのことを探らせています。五代目は実の父 三代目の仇をとるおつもりではないでしょうか」
「趙 蛇真に戦いを挑むということか。猿、それはいかん、豹牙もわが父虎鉄に鍛えられたとはいえ、趙 蛇真の敵ではない。蛇真の『百蛇剣』(ひゃくじゃけん)、恐ろしい技だ。
俺も親父もあの剣を破るため、ここまで腕を磨いた。正直、あの剣と戦ったことのある俺でさえ、蛇真に勝てる自信はない。もう一度あいまみえた時、この額の傷だけではすまないだろう」
猿は弱気な発言をするジャガーを見るのは初めてであった。しかし、それが逆にブラックスネークの総帥 趙 蛇真の恐ろしさだと感じていた。
「いいか、猿、豹牙にブラックスネークにこちらから仕掛けさせるな。戦いの時は必ず来る、その時を待てと伝えてくれ。いいか分かったか」
「へい、了解しました」
「猿、また会おう」
ジャガーはそう猿に告げると席を立ち、店を出た。
その時であった。ジャガーの携帯電話が鳴ったのであった。
「こちら、ジャガー」
「ジャガーか、今すぐファイナルゲートに来い」
その声の主は清野龍志であった。
「門長、直ぐそちらに向かいます」
ジャガーは愛車の紺色のジャガーに乗り、ファイナルゲートに向かった。
ジャガーはファイナルゲートのある新宿歌舞伎町のプールバーに到着した。店には相変わらず客はひとりもおらず、入口の横に、新たに入ったスロットルマシーンが5台横一列に並んでいた。
ジャガーは横目をそのスロットルマシーンにやった。その瞬間5台のスロットルマシーンが一斉に動きだしたのであった。
ジャガーはすぐに気がついた。この5台のスロットルマシーンの絵柄を全て揃えることがファイナルゲートの入口を開く鍵であることを。
ジャガーは迷うことなく、左から一台一台、スロットルマシーンの絵柄を合わせていった。
5台ともクリアーするのに10秒もかからなかった。
最後の一台の絵柄を合わせた時、スロットルマシーンの後ろの壁と床が回転し、壁が内側へと移動した。そこには地下室へと繋がるエスカレーターがあった。ジャガーはそのエスカレーターに乗り地下室へと向かった。
地下室では龍志、聖華、式三、明大がすでに到着していた。
「これで全員、揃ったな」
奥の椅子に座る龍志が言った。
「門長、相変わらず手の込んだ入口の鍵だな」
ジャガーが龍志に言った。
「それにしてもジャガー、さすがだな、あの高速スロットルマシーンをわずか10秒で全てクリアーするとは」
「あんな子供のおもちゃ、戦いでの剣や拳に比べれば、ゾウの動きにしか見えないぞ」
「分かった、ジャガー、その辺りで我慢してくれ。では、今回のミッションを説明する。先日、聖華の元に一枚のマイクロデーターが送られてきた。そのデーターは何やら帳簿の数字、いや金額が記載されているものだった。おそらく、1冊の帳簿の金額欄だけを送ったものだと推測する。それと、本日ファイナルゲートに連絡を入れる、と一枚の手紙が添えられていた」
「その送付人は誰ですか?そして、なぜ聖華お嬢さん宛てなんですか?」
ジャガーが質問した
「その答えはすぐ分かるであろう」
その時、地下室にベルが慌しく鳴ったのであった。
「お父様、内部告発者からの連絡です」
「明大、巨大モニターを作動してくれ」
「了解」
そこには一人の男性が映し出されていた。
ファイナルゲートのメンバーはその画面に目をやった。
「こちらファイナルゲートです。どうしました?」
「あなたは?」
ジャガーはその男に見覚えがあった。
「確か、聖華お嬢さんの先輩でしたよね」
ファイナルゲートのメンバーは聖華を一斉に見た。

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2007年6月28日 (木)

第2章
  守れ六本木ツインタワー

第2章 (4)

「式さん、様子は?」
「ジャガー、お前の言う通りだった。どうやら、国外脱出をするみたいだ」
ジャガーは六本木ツインタワーでの戦いを終えた後、すぐに成田空港に向かい、到着した。
「式さん、清野さんに連絡を、あとは私がけりをつけます」
「分かった。だが、気をつけろ、奴は本物のスパイだ、腕のたつ日本人より危険かもしれない」
「式さん、心得た」
ジャガーは式三にそう告げると、塔乗口に向かう途中のテレビモニターを見ている人物に近寄った。
「お前の望むニュースは流れてないぞ。桜井洋子、いや他国の女スパイ。ファイナルゲートの嘘発見器に引っかからないのはさすがだな。しかし、俺の目は騙せない。お前のその首にある傷、それは聖華お嬢さんを誘拐した時にお嬢さんの指の爪により受けた傷。日本人桜井洋子の姿に整形し、『ハニートラップ』を伊藤陸曹長に仕掛け、この国を変えようとしている伊藤陸曹長をクーデターへと仕向けた。伊藤陸曹長はお前に騙されていた。粒子爆弾は六本木ツインタワーだけを爆破できる威力と思い込んでいた。戦いの時、粒子爆弾が首都を消滅させることのできる威力と気づいた時、剣にその隙が生じたのが何よりの証拠」
「ハハハハ、お前のような男がまだこの国には居たとはな、誤算だった。私は5年前、粒子爆弾を仕掛けた女スパイの妹。姉は人質とされていた私と母の釈放と
引き換えに粒子爆弾の起動暗証番号を国に持ち帰る予定だった。
しかし、粒子爆弾を設置したことを防衛省に見つかり逃げた。しかし、命と共に暗証番を持ち帰ることは出来なかった。その後私は釈放され、姉と同じスパイとして鍛えられ姉の遣り残した仕事をするためこの国に潜入し、桜井洋子に成りすまし、この美貌を利用して伊藤陸曹長に近づいた。そして伊藤陸曹長を私の虜にし、伊藤陸曹長の心に潜む国家への不満を利用し、粒子爆弾を起動させようとした。また、伊藤だけではなく、夜の街で働きながら木村防衛参事官にも近付き、木村防衛参事官と肉体関係を結び、防衛省の極秘情報を入手した。この国を守る者は、いとも簡単に私の仕掛けた『ハニートラップ』にはまった。それは赤子の手をひねるよりも容易だったわ。
ハハハハ~」
桜井洋子、いや女スパイは高笑いをした。
「お前の目論みは失敗した。伊藤陸曹長を確保し、当然、粒子爆弾もあと数分で撤去される。あとはお前を始末するだけだ」
「さー、果たしてできるかな?」
すると、女スパイは手に持っていたペットボトルの液体を飲み干した。そして次にカプセル状の固体を飲み込んだ。
「ハハハハ、これでこの空港を吹き飛ばしてやる」
「何~」
ジャガーと女スパイとのやり取りを、高感度ピンマイクを通して度聞いていたファイナルゲートにいる生駒明大はジャガーに話し掛けた。
「ジャガーどうした?」
「女スパイがペットボトルの液体を飲み、その次にカプセル状の固体を飲み込んだ」
「ジャガー、その液体はγ粒子だ。おそらくカプセル状の固体は透過爆弾だ。つまり、女スパイの胃の中がγ粒子の貯り場となり、飲み込んだ透過爆弾が完全に溶けたとき起爆する。自らの体を爆弾とした自爆テロだ」
「明大さん、どうすればいい?」
「よく聞けジャガー。お前に渡したダーツに金色のダーツがあったはずだ。そのダーツは銀色のダーツより10倍威力があり、先端にミクロン単位の針がついている。そのダーツで女スパイの胃にある透過爆弾を射抜け」
「しかし、明大さんよ、胃の中なんて見えないぞ?」
「安心しろ、あのサングラスを掛けてみろ」
「あの趣味の悪いサングラスか?」
ジャガーは明大から渡されたサングラスを掛けた。
「ワアオ~、女スパイの骸骨ヌードが拝めるぜ。やはり、趣味の悪いサングラスだったな。明大さんよ!」
そのサングラスは高性能のX線搭載のサングラスであった。
ジャガーには女スパイの胃袋の中の透過爆弾がX線サングラスを通して見ることができた。
「シャア~」
ジャガーは「ジャガーの爪」を長刀サイズにし、女スパイに突進して行った。
(バ~ン、バ~ン)
女スパイは服の内ポケットから銃を取り出し、ジャガーに放った。
ジャガーは「ジャガーの爪」で銃の玉を数発跳ね返した。
(キャアー)
空港は騒然となった。
ジャガーは次の瞬間飛び上がった。そして金色のダーツ「ジャガーフラッシュ」を放ったのであった。「ジャガーフラッシュ」は女スパイの胃を貫いた。そして見事に透過爆弾を射抜いたのであった。
「ウッ~」
女スパイは目を開いたまま仁王立ちしていた。しかし、心臓は停止していた。
その時、自衛隊の特殊部隊と聖華、そして清野が空港に到着した。
「ジャガー、見事だ」
「清野さん、危ないところであった」「そうだな、危うく日本でテロ行為が実施されるところだった」
「お父様、しかし、防衛省に『ハニートラップ』対策をしてもらわなければ、第二第三のテロ行為が起こるかもしれません」
「そうだな。これだけ防衛省が『ハニートラップ』に弱いとは。こんな状態では米国との共同防衛システム構築など出来やしない。すぐに大臣に進言する」
「それにしても、聖華お嬢様の勇気には恐れ入りました」
「ジャガー、貴方の腕も確かね」
聖華は初めてジャガーに笑顔をみせた。
「ジャガー、お前を今日から正式にファイナルゲートの一員とする。いいな、聖華」
「お父様、どうぞ」
「ジャガー、そういうことだ」
「了解しました。このジャガーの腕をお嬢さんが必要とするなら」
ここにジャガーは聖華に認められ、正式にファイナルゲートの一員になったのであった。

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2007年6月18日 (月)

第2章
  守れ六本木ツインタワー

第2章 (3)

眩しい夕日は、明日への希望を与えているのと同時に、なぜか寂しげに話しかけているようにも見える。車を運転するジャガーの目にはそう映っていた。
ジャガーと龍志は六本木ツインタワーの入口に到着した。
誘拐犯の要求は、二人同時に東西のタワーに分かれ最上階に来ることであった。
「うっ~」
「どうしたジャガー?」
「どうやら、西にあるアミューズメント棟から殺気がする。俺は西の棟に上る」
「わかった、私は東のオフィス棟に上ろう」
ジャガーは西のアミューズメント棟、龍志は東のオフィス棟の、外から見えるガラス張りのエレベーターに同時に乗った。そしてお互い最上階を目指したのであった。
ジャガーは西のアミューズメント棟の最上階に到着した。そこはホテルが経営し、都内が一望できるスカイバーラウンジになっていた。
ジャガーはゆっくりそのスカイバーラウンジに入って行った。

ジャガーはスカイバーラウンジの奥に、日本刀を持った一人の男が仁王立ちしているのに気が付いた。
「伊藤陸曹長か?」
「お前か、β粒子爆弾の起動暗証番号を持っている男は」
「人の道、外せばそこは地獄道、この先一歩も通しゃしねぇ~」
「お前は誰だ?」
「コンプライアンス・ジャガー推参!」
そして、ジャガーは伊藤陸曹長の胸を右人差し指で差した後、その手で拳を握り締め、自らの胸元に引戻しながらこう言った。
「あんたの良心、取り戻しに来たぜ!」
「ファナルゲートに腕のたつ男が入ったと聞いたが、どうやらお前のようだな」
「こんな形で、剣道全日本選手権三連覇を果たした貴方とお手合わせできるとは思ってもみませんでした。しかし、それは単に竹の棒を振りまわす世界での日本一、人を斬ったことのない貴方は私の敵ではない」
「ほざいたな!そのビックマウスも今日限りだな」
「伊藤陸曹長、なぜです。なぜ貴方がこんな真似を、貴方は国を守る自衛官ではないですか?」
「ジャガーとか言ったな、今のこの日本を見ろ。格差社会が生じたことによって、貧しいものは一生貧しいままだ。貧しさから抜け出し成功した者など皆無であろう。
たとえいたとしても、そんな人間は鉱山で金を見つけるように数少ない。人生の再チャレンジなど本当にあると思えるか?
そして成功したものを見よ。手に入れた富をもっともっと増やそうとしている、己の私欲だけのためにな。
今の日本経済の象徴、つまりこのビルを見よ。当初は公園を建設する予定だった。しかし、経済発展を理由に、いつのまにか高層ビルを建ててしまった。地下に粒子爆弾があるとも知らずに。愚かなものだ。こんな日本を守る価値があると思うか?」
「だからと言って、都民を危険にさらさなくても、他にも方法があっただろう?」
「都民を危険にさらす?なら聞こう。防衛省が、粒子爆弾を仕掛けられたことを知った時の対応はどうだった?都民に何も情報を開示していないではないか?その方がよっぽど危険ではないのか?防衛省のメンツのために都民を危険にさらす、自業自得だ。俺は今日この高層ビルを破壊する。この国の今の経済の象徴をな、この命と引き換えに。そしてこの国に、再び共存共栄の時代が来るための礎となるのだ」
「狂っている」
「何とでも言え。では暗証番号を教えてもらおう」
伊藤陸曹長はそうジャガーに告げると、右手に持っている携帯電話を操作した。
すると、屋上のクレーンの先端に、宙ずりにされている聖華の姿がジャガーの目の前に現れた。
「ジャガー、お前が暗証番号を教えなければ、この女は高層ビルの真下に落下する。さあ番号を教えろ」
クレーンに宙ずりにされている聖華はジャガーに気がついた。
「ジャガー教えてだめ~」
聖華が叫んでいた。
伊藤陸曹長は表情を変えることなく、もう一度携帯電話を操作した。
するとジャガーの耳に、東のオフィス棟の最上階に上っている龍志から連絡が入った。
「ジャガー、木村防衛参事官は電気椅子に座らされている。今電流が流れ始めた。どうやら、私がα粒子の起動暗証番号を電気椅子に付いている入力装置に入力すれば、電気椅子の電流が止まる仕組みだ。4分で参事官の心臓は停止する。4分でけりをつけてくれ」
「了解した」
「ハハハハ、どうするジャガー」
伊藤陸曹長は高笑いした。
その瞬間、ジャガーはβ粒子爆弾の暗証番号が書かれている、虎鉄から託された聖華の写真を銀色のダーツ「ジャガーフラッシュ」とともに、自分と伊藤陸曹長とのちょうど中間地点の壁に投げた。
聖華の写真はスカイバーラウンジの壁に刺さった。
伊藤陸曹長は慌ててその写真を取るため走り出した。
「今だ」
ジャガーは銀色のダーツ「ジャガーフラッシュ」を伊藤陸曹長めがけて投げた。
「ジャガーフラッシュ」は伊藤陸曹長の携帯電話を持つ右手に命中した。そして、携帯電話は伊藤陸曹長の後方に飛んで行った。ジャガーはその隙に聖華の写真が刺さっている壁の前に猛然とダッシュし、その前に立ちはだかった。
「くっそ~、こうなったら剣で勝負だ」
「望むところだ」
ジャガーはそう言うと、腰に持っていた「ジャガーの爪」を右手に握った。「ジャガーの爪」は長刀のように長くなった。
「ウォ~」
伊藤陸曹長とジャガーとの剣の戦いが始まった。
2分が経過した。しかし、お互いの剣さばきは五分五分であった。
「ジャガー、時間がない」
「清野さん、α粒子爆弾の暗証番号を入力してください。俺が伊藤陸曹長を倒します」
「よし、お前を信じよう。都民の命、預けたぞ」
東のオフィス棟の最上階にいる龍志は、木村防衛参事官の座っている電気椅子にα粒子爆弾の起動暗証番号を入力した。すると電気椅子の電流は止まった。
しかし、それと同時に地下500mにあるα粒子爆弾が起動し始めたのであった。
「どうやら、お前を倒せば粒子爆弾が爆発することになるのか?」
「俺を倒せればな。しかし、お前には俺は倒せない、お前の剣は全て見切った。首都壊滅する粒子爆弾は俺が守る」
「首都壊滅?」
その瞬間であった。伊藤陸曹長に一瞬の隙が生まれた。
「もらった」
ジャガーは伊藤陸曹長の懐に飛び込み、伊藤陸曹長の腹部に「ジャガーの爪」を叩き込んだ。
「うっ~、見事な電光石火の剣だ」
伊藤陸曹長はスカイバーラウンジの床に倒れ伏した。
「清野さん、勝ったぜ。β粒子の暗証番号と聖華お嬢さんの命を守ることが出来た」
「よくやった。これで無事、粒子爆弾は2時間後に撤去できる」
すると陸上自衛隊のヘリコプターがジャガーの目に飛び込んで来た。そのヘリコプターは屋上に着陸した。そして聖華は無事、安全に確保されたのであった。ジャガーは壁に張り付いている聖華の写真を取り戻し、屋上へと向かった。
「ジャガー」
聖華はジャガーの元に駆け寄った。
「お嬢さんご無事で」
「ジャガー、時間がないわ。」
「分かっています。真の黒幕を退治に行って来ます」
ジャガーはそう聖華に告げると、足早に六本木ツインタワーをあとにしたのであった。

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2007年6月 8日 (金)

第2章
  守れ六本木ツインタワー

第2章 (2)

「ジャガー、六本木ツインタワーは知っているか?」
「ああ、確か防衛省の跡地に建てられたあの六本木にある高層のツインタワーか?」
「そうだ、そのツインタワーだ」
「確か、明日がオープンだろ?」
「東のタワーがオフィス棟、西にあるのがホテルやブランドショップなどが入っているアミューズメント棟に分かれている。お前の言う通り明日の午前10時がオープンだ」
「そのツインタワーがどうした?お嬢さんの誘拐と関係でもあるのか?」
ジャガーはあまりにも落ち着いている3人に苛立った。
そんなジャガーをなだめながら龍志が語り始めた。
「ジャガー、冷静に聞け。5年前、当時の防衛庁(現防衛省)に他国の女性スパイが潜入した。そのスパイは防衛庁の事務職員に成りすまし、僅か3日で防衛庁の建物の地下500mに最新の爆弾を仕掛けた」
「最新の爆弾?」
「その爆弾は粒子爆弾といって、二つの粒子が混ざり合ってから10分後に爆発する。そして、その粒子爆弾には移動起動爆弾も仕掛けてあった」
「その粒子爆弾の威力は?」
「東京都が一瞬で消滅する威力だ」
「何~、そんなことを今まで政府は秘密にしていたのか?」
「そうだ、そのことが知られたら首都東京は大パニックになる」
「しかし、なぜその粒子爆弾を今まで放置しておいたんだ?」
「先ほど説明した通り、その粒子爆弾と同時に移動起動爆弾が備えつけてあり、無理やり動かすとその移動起動爆弾が爆破する」
「その移動起動爆弾の威力は?」
「そう、六本木の街が崩壊する威力だ」
「という事は、いずれにしてもむやみにその粒子爆弾を動かせないということか?」
「そうだ、そのため今この時間も移動起動爆弾には自衛隊が1秒たりとも目を離さず見張っている。だが、その移動起動爆弾にも欠点があってな。それは電池式だということだ。その電池は今日の午後7時に切れる。つまり、今日の午後7時、あと5時間でその粒子爆弾を撤去できるということだ」
「そうか、そのために防衛省を移転したんだな。そして、民間に売り、地下では監視を続ける」
「ジャガー、さすがものわかりが早いな。しかし、ここで問題が起きた。当初跡地を公園にする約束であったが、その事情を知らない民間売却先は約束を破り、高層ビルを建ててしまったのだ。従って、何としてもこの粒子爆弾を今日撤去しなければならない。防衛省もその威信が掛かっている。『テロ特措法』制定以来各国のテロ後方支援を行うこととなったが、この国でテロ行為の準備がされていることは絶対に許されることではない」
「しかし、その粒子爆弾を5年前仕掛けた女性スパイはどうなったんだ?」
「防衛庁の追跡を逃れ、行方不明となった。しかし、その女性スパイは自分しか知らない粒子爆弾の起動暗証番号を、ある男に託し死んだ」
「待てよ、5年前、そうか!」

ジャガーは何かを思い出したようだった。
「思い出したようだな」
「確か5年前、親父はある女を匿ったことがある。横浜の街で偶然通りかかった路地裏で傷つき、今にも死にそうな女だったことを覚えている親父も何とか命を取りとめようと看護をしたが、残念ながらその後すぐ亡くなり、身柄を鬼前組が極秘に葬ったことを覚えている」
「そうだ、その時虎鉄に粒子爆弾の起動暗証番号を教えたのだ」
「粒子爆弾を仕掛けた国もそのスパイの行方を探しただろう。しかし、よりによって鬼前組の組長がその暗証番号を知っているとは、想像もつかなかっただろう。虎鉄はその暗証番号を今まで守り続けていたが、自らの命が無くなる前に、私とお前にその暗証番号を託した。α粒子の起動暗証番号を私に、β粒子の起動暗証番号をお前にな」
「俺は親父からそんな番号聞いてないぞ?」
「そうかな?お前、虎鉄から託されたものは無いか?」
ジャガーは虎鉄から託された聖華の写真を、背広の内ポケットから取り出した。
「これか?」
ジャガーは気がついた。その写真の裏に5桁の番号が記されていることに。
「どうだジャガー、虎鉄から託された暗証番号に気がついたか」
「清野さん、お嬢さんの誘拐はこの暗証番号が目当てということか?」
「そうだ。実は、その粒子爆弾が仕掛けられた後も防衛省の機密情報が流出している。
防衛省はもうこれ以上の機密情報の流出は阻止しなければならないし、その原因を根こそぎ排除しなければならない。そこで、この粒子爆弾の暗証番号を知る者は私の関係者であることを、防衛省内部に情報をわざと流した。必ず、スパイ活動するものが動いてくることを想定してな」
「あんた、そのためにお嬢さんの命と引き換えに罠を張ったのか?」
「安心しろ。奴らの目的はあくまでもこの暗証番号だ、聖華の命ではない。それに聖華もそのことは承知の上だ」
「お嬢さんも承知の上」
「いいかジャガー、本日午後7時に六本木ツインタワーの地下500mで、粒子爆弾の撤去が自衛隊の特殊爆弾処理班によって実施される。スパイは必ずその前に我々に接触してくる。そこで、スパイを確保し、一切のテロ活動をこの国で実施させないことが今回のミッションなのだ。この粒子爆弾の件は内閣と防衛省の幹部、特殊爆弾処理班の班長そして我々ファイナルゲ―トしか知らない。国の安全を守り、防衛情報を流出させないのも重要なコンプライアンスのひとつだ。しかし、どんなことがあってもこの暗証番号はスパイの手に渡してはならない。たとえ聖華の命に替えてもな」
「危険な賭けだな。あんたが考えるように全てうまく行くとは限らんぞ」
ジャガーは、清野と聖華の危険を顧みない性格に呆れていた。
その時「ファイナルゲート」の地下室のベルが慌しく鳴ったのであった。
「門長、内部告発者からの連絡です」
明大が龍志に告げた。
「明大、画面を切り替えてくれたまえ」
「分かりました」
画面は切り替わった。画面には一人の女性が映っていた。
その女性は細面で肌の色はとても白く、目鼻立ちの良い美人であった。
「「ファイナルゲート」ですか?」
「そうだが」
龍志が応えた。
「私は陸上自衛隊、特殊爆弾監視班の陸曹長、伊藤 倫(いとう りん)の婚約者、桜井洋子(さくらい ようこ)です」
「門長、陸上自衛隊の伊藤曹長は現在婚約中です」
「そうか」
「実は、倫(りん)の遺書を見つけ、今日の仕事が最後だとか、今までありがとうとか書いてあったんです。私は不安で、陸上自衛隊に連絡すると大騒ぎになると思い、「ファイナルゲート」ならなんとかしてくれると思い連絡しました。倫をどうか助けてください。お願いします」
「門長、嘘発見器では偽りの反応は出ていません」
「洋子さん、分かりました。安心してください。私達も現在、倫さんと仕事をしています。
倫さんを助けましょう」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
陸上自衛隊伊藤陸曹長の婚約者桜井洋子は、一礼をして映像を切ったのであった。
「どうだ、明大、彼女の告発と今回の粒子爆弾処理は関係ありそうと見るか?」
「はい、門長、嘘発見器にも異常がありません。彼女の証言は正しいと判断できます」
しかし、ジャガーは眼光鋭く、洋子の証言している画面を見つめていた。
「清野さん、私はどうも彼女の証言には何か裏があるように見えますが?」
「どういうことだ?」
「式さん、申し訳ないが、あの女を見張ってもらえませんか?」
ジャガーは犬飼式三に頼んだ。
「わしは構わないが」
「ジャガー、私の嘘発見器に欠陥でもあると言うのか?」
「明大さん、そうは言っていない。どうもひとつ引っかかることがあるだけだ」
「よかろう。式さん、悪いが桜井洋子を見張ってくれ」
「了解しました。門長」
そう返事をした式三は、足早に「ファイナルゲート」の地下室を出て行ったのであった。
その時再び、「ファイナルゲート」の地下室のベルが慌しく鳴った。
「清野くん、大変だ。木村防衛参事官が誘拐された」
「えっ~」
画面には防衛省、鴨居総合幕僚長が映し出されていた。
「総合幕僚長、それは本当ですか?」
「そうだ、誘拐犯は君ともう一人、粒子爆弾の暗証番号を持つ男に、今から3時間後の午後5時に六本木ツインタワーに来るよう要請してきた。もちろん暗証番号を持ってだ。
それと我々をはじめ、全ての人間を半径200m以内に近づけない条件も出してきた。もし、要求を飲まなければ、木村防衛参事官の命はないと、それともう一人の人質の命もと」
「総合幕僚長、どうやらその誘拐犯が情報流出をしていた者でしょう。暗証番号は必ず守ります。私達に任せて下さい」
「わかった、君に任せよう。しかし、無理はするな、絶対暗証番号だけは守ってくれ」
「心得ています」
「ジャガー、行くぞ」
「わかった。俺が聖華お嬢さんを必ず助け出し、親父が守り続けたこの暗証番号も守ってみせる」
「ジャガー、これを持って行け」
明大が銀色のダーツ2本と金色のダーツ1本を渡した。
「これは?」
「「ジャガーの閃光」そう「ジャガーフラッシュ」と名づけよう。お前のダーツの腕は先ほど試させてもらった。「ジャガーの爪」と同様、お前の身を守ってくれるであろう。
それともう一つ、これもだ」
明大はジャガーにサングラスを渡した。
「なんだ、この趣味の悪いサングラスは?」
ジャガーはそのサングラスは気に入らず、捨てようとした。
「ジャガー、このサングラスは必ず役に立つ。持っていくんだ」
「わかったよ、明大さん」
ジャガーは明大から受け取ったサングラスを背広のポケットにしまった。
「明大はここに残ってくれ、連絡はこれで取ろう」
ジャガーと龍志は、耳に高精度イヤホンと胸に高感度ピンマイクをつけたのであった。
「ファイナルゲート、ゲートフォールディング」
龍志が今回のミッションを高らかに宣告した。
ジャガーと龍志は夕刻の六本木ツインタワーを目指したのであった。

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2007年5月28日 (月)

第2章
  守れ六本木ツインタワー

第2章 (1)

「お父様、私は反対です。こんな野蛮な男をこの家に住まわすなんて」
「聖華、ジャガーのことは虎鉄から頼まれておる」
ジャガーは清野龍志の計らいで、渋谷の高台にある閑静な清野の自宅に住むこととなった。
「ジャガーには離れに住んでもらう。それでよかろう」
「勝手にしてください。ただし、私を襲うようなマネをしたら、この指でその目を潰しますからね」
聖華は指の爪をジャガーに向けた。
「お嬢さん、その技は私が先日獅子王に使った技ですよ。勘弁してください」
しかし、聖華はジャガーの冗談に表情ひとつ変えることなく、ジャガーと龍志に背向けて部屋を出て行ってしまった。
「清野さん、どうやら聖華お嬢さんを怒らせてしまったようで」
「気の強い娘で恥ずかしい。誰に似たのやら。そうそう、お前虎鉄から聖華の事情は聞いておるな、その件は絶対に内緒にしてくれ」
「はい、心得ています」
「しかし、ここまで私に配慮いただかなくても、私ならどこでも生活できますから」
「何を言う、たとえ血は繋がっていなくとも、お前は私の無二の親友虎鉄の息子だからな」
「ひとつ質問してもいいですか?親父いや正邪虎鉄とはどういう関係だったのですか?」
「それでは話そう。私と虎鉄は孤児でな、本当の親の顔も名前も知らん、そして孤児の施設で育ったのだ。あいつとは歳も同じ、まるで本当の兄弟のように助けあって生きてきた。
あいつは剣道が得意でな、チャンバラであいつには一度も勝ったことがない。先日お前の「ジャガーの爪」のさばきを見たが、まさに虎鉄の剣さばきであったわ。
お互い中学を卒業した時、養子縁組をしたいという人が現れてな、虎鉄は警察官の夫婦に、私は多少成績が良かったので、弁護士夫婦に引き取られた。そしてそれから1年後、虎鉄に惨事が起きた。養父母が恨みで殺されたのだ。虎鉄は剣道部の稽古で夜遅かったのが幸いして命を取られることはなかった。それから虎鉄はその犯人を捜すように警察に何度も何度も頼んだ。しかし、捜査ではその犯人を見つけることはできなかった。虎鉄は荒れた。正義とは何だと、そしていつも横浜の夜の街をさまよい、ケンカに明け暮れた。そうした虎鉄を助けたのが、鬼前組の二代目組長だった。鬼前組は、警察が捜し出すことが出来なかった虎鉄の養父母を殺した犯人を見つけ出し、始末した。それ以来、虎鉄は裏の社会での仁義を貫くことが、真の正義という信条のもと、浜の虎と恐れられる男へと成長していった。
実は、私も彼と同じ思いをしているんだ。私はどうしても生みの親が誰なのか知りたくなってな、自分なりに調べたんだが、私の実の親はある事件に巻き込まれ、不慮の死を遂げていたのだった。それから私は法律という世界で、真の正義を見つけようとしたんだ。
表と裏、道は違えど、虎鉄と私は運命に導かれるがごとく、同じ目標に向って走ったのであった。
それからの虎鉄はお前が知るように、二代目鬼前組組長亡きあと三代目に仕え、その右腕となった。中国の窃盗団ブラックスネークとの戦いで殺された三代目の跡を継ぎ、鬼前組四代目組長となったのであった。
私は、弁護士になってからなりふりかまわず実績を上げ、何のコネもなく、自分の正義とその実力で日弁連の会長まで昇りつめた」
「もうひとつ質問してもいいですか?」
その時、ジャガーは聖華のピアノの上に、楽しそうに微笑んでいる龍志とある女性の写真を目にした。
「聖華お嬢さんの母親は?」
「その話か?今は勘弁してくれ、時が来たら話そう」
「分かりました」
ジャガーと龍志のいるリビングルームに聖華が戻って来た。
「お父様、では行ってまいります」
その時、龍志と聖華は見つめ合い、何かを心の中で確認し合った。
「ジャガー、聖華を送ってやってくれ」
「了解しました、お嬢さんお送りしましょう」
ジャガーは愛車の紺色のジャガーで聖華を東京駅まで送るのであった。
「聖華お嬢さん、今日はどちらに」
「今日は大阪で弁護士会の会合があるの」
ジャガーは車を停め、聖華を改札口まで見送った。
「お嬢さん、気をつけて。お帰りの時間を連絡ください、お迎えに上がります」
「それにはおよびません」
聖華は笑顔をジャガーに見せることもなく淡々と改札口を通り、東海道新幹線のホームの階段を上がって行った。
ジャガーはその姿を見届け、帰ろうと背を向けた。
その瞬間であった。
「うっ~」
ジャガーは額の傷を押さえた。
「この殺気は?いかん」
ジャガーは心の中で叫ぶと、再び改札口の方に目をやり、改札口を通り抜け、聖華が登って行った階段を駆け上がった。そこには聖華の姿はなかった。ジャガーは聖華が乗るはずであった列車に乗り込み、聖華を捜した。しかし、聖華の影すら見つけることは出来なかった。
「聖華お嬢さん」
ジャガーは聖華の携帯電話へ連絡した。しかし聖華は電話には出なかった。
「お嬢さんが誘拐された」
ジャガーは慌てて龍志に電話をした。
「清野さん、聖華お嬢さんが誘拐されました。犯人の手掛かりを探します」
「ジャガー、至急「ファイナルゲート」に来い、奴さんが動き出したな」
「奴さん?」
「詳しい話は後だ」
ジャガーは娘が誘拐されたのに、妙に落ち着いている清野の声が不思議であった。
「了解した、これより「ファイナルゲート」に向かう」
ジャガーは車に戻り、「ファイナルゲート」がある新宿歌舞伎町を目指したのであった。

ジャガーは歌舞伎町のプールバーに到着した。しかし、店には猫一匹いなかった。
ジャガーは店を見渡した。ビリヤードの台にはダーツが一つだけ置いてあるだけであった。ジャガーはそのダーツを手に取るや否や、素早く。壁に掛かっているダーツボード目掛けて矢を投げたのであった。
(ビシュ~)
ジャガーの投げたダーツは見事に的の中央を射抜いた。
すると次の瞬間、ダーツボードが掛けてあった壁が動き出し、地下に通じる階段が現れた。
ジャガーは迷うことなくその階段を下りて行った。
「ジャガー遅いぞ」
地下室では通称「発明大」生駒明大、「早耳の式さん」こと犬飼式三がジャガーを待っていた。そして奥のデスクに座る清野龍志、「ファイナルゲート」の門長の姿もあった。
「清野さん、お嬢さんが誘拐された」
「ジャガー慌てるな、これも想定のうちだ」
「想定のうち?」
「では今回のミッションを説明しよう」
清野龍志は冷静そのものだった。

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2007年5月18日 (金)

第1章
  仁義とコンプライアンス

第1章 (4)

ジャガーと聖華は横浜港に到着した。
前方には一隻の大型船が停泊していた。そしてその大型船に向って走っている男が見えた。
聖華は素早く車を降り、その走っている男を追った。
「待ちなさい」
聖華が叫んだ。
走っている男はその声に立ち止まった。
「大崎主任、その暗証番号のデーターを渡せば、何千何万という人が被害に遭います。
奥様はそのようなことをしてまで助けてもらいたいと思っていらっしゃいますか?喜びますか?よく考えてください」
「うるさい。妻は、俺の大切な妻はこの世でたった一人なんだ。彼女の命を守ることが出来るのなら、俺は何でもする。俺は妻を助けたいんだ~」
大崎主任はそう叫ぶと、再び停泊する大型船に向って走りだした。
その時だった。大崎主任の足先に一つの石が投げ込まれた。そして、大崎主任はその石につまずき転んだのであった。
大崎主任は転んだ勢いで暗証番号のデーターが入ったスーツケースを手から離してしまい、そしてそのスーツケースを拾いに行こうと立ち上がった。
立ち上がった大崎主任の目には、その前に立ちはだかる一人の男の姿が飛び込んで来た。
その男こそ、正邪 雅、そうジャガーであった。
「人の道、外せばそこは地獄道、この先一歩も通しゃしねぇ~」
「お前は誰だ?」
「俺か、鬼前組、いや今はそう.....コンプライアンス・ジャガーとでも名乗ろうか」
そして、ジャガーは大崎主任の胸を右人差し指で差した後、その手で拳を握り締め、自らの胸元に引戻しながらこう言った。
「あんたの良心、取り戻しに来たぜ!」
大崎主任はジャガーの気迫に身動きが取れなくなった。そして、泣きながら膝から崩れ落ちたのであった。
「ジャガー」
聖華がその光景を見てジャガーの名を呼んだ。
「お嬢さん、スーツケースを」
「分かったわ」
その時であった。ジャガーは額の古傷に凄まじい殺気を感じとったのであった。
ジャガーは額を押えながら、背にしていた停泊している船を見た。すると中から20人ほどの中国人が降りてきたのであった。そしてその中心にいる男がジャガーに声をかけた。
「ジャガー、久しぶりだな」
「陳 忠将か」
「総帥の剣での傷、今でもうずくか?」
「ああ、お前たちのその腐った殺気を感じた時は特にな。趙 蛇真(ちょう じゃしん)はどうしている?」
「総帥か?大変元気でいらっしゃる。今や中国も経済大国、日本での活動はこの私に任せて、祖国で組織の拡大に力を注いでいる。ところで、虎鉄は死んだそうだな。総帥からの花を手向けてくれ」
陳はそう言うと、ジャガーの足元に花束を投げたのであった。
「ジャガー、邪魔立てすると今日がお前の命日になるぞ」
「陳、お前では俺は倒せん」
「さあ、それはどうかな」
陳はそう言いながらもう一つ花束を投げた。
「ジャガー、それはお前の死体への花向けだ。やれ!」
陳の合図に陳が従えて来た20人ほどの男たちがジャガーめがけて襲ってきた。
ジャガーは明大から与えられた「ジャガーの爪」を握りしめ、長刀を構えその男たちを向え撃ったのであった。
「ジャガーの爪」は冴え渡り、1分も経たずにその20人はジャガーの長刀に打ち込まれ、倒れ伏したのであった。
「ジャガー、腕をまた上げたな」
「陳、今日こそ決着だ」
「ハハハハ~」
陳は笑い飛ばすと、舟から今度は200人以上の男たちが殺気に満ちてジャガーの首を取ろうと降りてきたのであった。
「ジャガー」
スーツケースを回収した聖華はジャガーのピンチに気がついた。
ジャガーは必至になって戦った。しかし、「ジャガーの爪」を打ち込んでも打ち込んでも、ジャガーに向かってくる敵は減ることはなかった。200人が220人、そして250人と。
ジャガーにも疲れが生じていた。
そして、一人の敵の剣がジャガーの右腕を切り裂いた。ジャガーの血飛沫が飛んだ。
「ハハハハハ~、ジャガーの首、総帥もお喜びになるだろう」
陳は微笑みながら言った。
その時であった。
ジャガーと250人の敵の間に手榴弾が投げ込まれた。
(バカ~ン)
手榴弾が爆発した。数十人の敵が吹っ飛んだ。そしてジャガーと敵との間に空間ができた。
「兄貴、水臭いじゃないか」
「豹牙~、熊、猿」
ジャガーの危機を救いに、豹牙をはじめとする鬼前組総勢50人が来たのであった。
「浜の街を守るのは、鬼前組の仕事、こう派手にやられちゃ俺たちも黙っていないぜ」
豹牙が陳に言った。
「鬼前豹牙か、おもしろくなって来た。ジャガー、豹牙まとめてその首ちょうだいしよう」
「ウオ~」
ブラックスネーク250人対ジャガーと鬼前組50人の壮絶なバトルが始まった。
鬼前組の50人は強かった。その組織だった戦闘体制、数には劣るものの、統率の取れていないブラックスネーク250人など相手ではなかった。
そして、数名のブラックスネークは慌てて舟に逃げ帰るのであった。
「陳、どうした、もう終りか」
ジャガーが陳に言った。
「ハハハハ、余興は終りだ、これを見ろ」
陳の横には人質として捕まってしまった大崎主任の姿があった。
「この男の命と暗証番号のデーターと引き換えだ。そこの女、そのスーツケースを持って来い」
陳はスーツケースを持つ聖華に要求した。
ジャガーは聖華を見た。
すると聖華はためらうことなくそのスーツケースを陳の足もとに投げたのであった。
「聖華お嬢さん」
ジャガーは聖華の行動に驚いた。
「獅子王、ジャガーと豹牙をやれ」
陳は船にいる一人の大男に命令した。
その男は全身毛に覆われ、身長が2m以上ある風貌の男であった。そして、その手には大きな鉈を持っていたのであった。
その獅子王と呼ばれる大男がジャガーと豹牙の前に立ちはだかったのであった。
陳はその間にスーツケースを拾い、大崎主任の頭に銃を突きつけながらゆっくりと舟に戻ったのであった。
そして、船はゆっくり出発したのであった。
「ウオ~」
獅子王が鉈を振り回して豹牙を襲った。豹牙はその獅子王の豪腕に、手にしている日本刀を弾き飛ばされ、自身も体も倒されたのであった。
獅子王が、倒れ込んだ豹牙めがけて鉈を振り下ろした。
(カキーン)
豹牙の目の前でジャガーが「ジャガー爪」で獅子王の鉈を食い止めたのであった。
「豹牙、この毛もじゃは俺が倒す、お前は陳を追え」
「兄貴、分かった」
豹牙は組員熊田 勝が用意したクルーザーに飛び乗った。
「私も失礼するわ」
聖華もそのクルーザーに飛び乗ったのであった。
「あんた何者だ」
豹牙が聖華に質問した。
「詳しい話は後、追いかけましょう」
「熊、陳を追え!」
「へい」
豹牙と聖華を乗せたクルーザーは陳が乗る大型船の横にまで追いついた。
「陳、逃げるのか、わが父を殺したブラックスネーク、俺はお前たちを絶対に許さない。必ずお前と趙 蛇真を倒す」
「豹牙、今日のところはお前の首を貰うのは諦めよう。私の今回の目的はあくまでもこのスーツケースにあるクリスタル翠銀行の個人情報とキャッシュカードの暗証番号データーだ」
陳はそう豹牙に告げるとスーツケースからマイクロデーターを取り出し、人質としていた大崎主任を海に突き落としたのであった。
「ハハハハ、これからこのデーターを仲間に送信する、そうすれば皆がデーターをダウンロードし、偽造キャッシュカードで何万人もの口座から金を引き出す手配さ」
陳はそう言いながら、船内の奥へと走っていった。
「くそ~」
豹牙の表情には悔しさがにじみ出ていた。
「クルーザーを止めなさい」
聖華は舵を握る熊田に言った。
「いいから早く」
熊はクルーザーを止めたのであった。
(ドボ~ン)
聖華は海に飛び込み、海に突き落とされた大崎主任を助けたのであった。
「手を貸しなさい」
聖華は豹牙に命令した。豹牙は聖華に手を貸し、大崎主任を無事引き上げたのであった。大崎主任は気を失っていたが、命に別状はなかった。
「あんた、気に入ったぜ」
豹牙は聖華の素早い行動力に魅了された。
「私はヤクザは嫌いです。戻りましょう」
豹牙は熊に港に戻るよう指示した。
港ではジャガーが獅子王と格闘していた。
ジャガーは獅子王の力に圧倒されていた。
「こいつのバカ力、半端じゃねぇ~、このままではやられる」
ジャガーは腕を負傷していることもあり、「ジャガーの爪」で獅子王の鉈の攻撃を防ぐのに精一杯であった。
(カキ~ン)
「ジャガーの爪」が獅子王の鉈で弾き飛ばされた。ジャガーは丸腰になってしまった。
「しまった」
「ハハハハ、これでお前も終り、陳様にお前の首を持ち帰る」
獅子王はそう言うと渾身の力で鉈を振り降ろそうとした。
ジャガー最大のピンチ。
その時ジャガーは上着を脱ぎ、獅子王の顔めがけて投げつけた。
上着により獅子王の視界が一瞬なくなった。その一瞬でジャガーは獅子王の背後に回った。
獅子王はジャガーのその動きに気がつき、振向いた。
「アガ~」
ジャガーは獅子王が振向いた瞬間、右の人差し指と中指で獅子王の両目を突いたのであった。
ジャガーは目を押さえる獅子王の腕を取り技を仕掛けた。
それは、プロレスの技『垂直に後頭部を地面に叩きつけるブレンバスター』であった。
獅子王は大の字に倒れた。
「いくら筋肉を鍛えても目は鍛えることは出来ない。そして、自らの体重により後頭部を打ち砕かれたブレンバスター、美味しかったか?」
「ウオ~」
それでも獅子王は立ち上がろうとしていた。
「兄貴~」
その時、二人の戦いを見守っていた鬼前組の猿山 米がジャガーに「ジャガーの爪」を投げ渡した。
「猿~」
ジャガーは「ジャガーの爪」を受け取ると獅子王の腹部に「ジャガーの爪」を打ち込んだ。
獅子王は山が崩れ落ちるがごとく、ゆっくりと倒れ込んだ。
ジャガーの勝利であった。
その時、サイレンとともに神奈川県警のパトカーが数台やって来た。
パトカーからは清野 龍志が降りてきた。
「清野さん、すいません。俺がいながらデーターは陳の手に渡ってしまいました」
ジャガーは戦いには勝ったが落胆していた。
「安心しなさい」
その時、聖華の声が後ろから聞こえてきた。
「データーは無事です」
ジャガーは振り返った。
「あのスーツケースに入っていたマイクロデーターには何も入っていないわ」
「本物は大崎主任が自らの体に貼り付けていたの、先ほど大崎主任を救出し、データーも確保したわ。大崎主任は空データーを先に陳に渡し、金を受け取る予定だった。そして、本物のデーターは自分の身を持って守るつもりだった」
「でも聖華お嬢さんはどうしてそのことが分かったのですか?」
ジャガーが質問した。
「私のメガネのレンズには、明大さんが発明したデータースコープがついているの。大崎主任が船に向って走って行く時、そのことを確認したの」
「聖華、よくやった、それにジャガーご苦労であった。今回の一件で「クリスタル翠銀行」の阿波木頭取にデーター管理を委託先に出すのではなく、自社で厳重に保管する事を進言した。企業は自らの組織をスリム化し過ぎたため、大事な心臓部まで外注に出すことを余儀なくされた。その問題を検討する必要があるはずだと」
「しかし、お父様、大崎主任は?」
「阿波木頭取に大崎主任に特別の融資をしていただくことをお願いしてきた。そして、「データープール株式会社」は「クリスタル翠銀行」に吸収合併される予定だ」
「さすが、お父様」
「兄貴、新しい仲間が出来たみたいだな」
「ああ、豹牙」
豹牙はジャガーに言葉をかけた。
「兄貴、じゃ~達者でな~」
豹牙、熊、猿、そして鬼前組総勢50名は別れを惜しむようにその場を去って行った。
「豹牙~、熊~、猿~、ありがとな~」
ジャガーは皆に手を振りながら心の中で亡き育ての親、正邪虎鉄に語りかけるのであった。
「親父、聖華お嬢さんの仁義、人の道を守る真の『コンプライアンス』このジャガーも貫きます。そして命に替えてもお嬢さんの身を守ります。それが俺の新たな仁義なのです」ここに、人の道を守る最強の男『コンプライアンス・ジャガー』が誕生したのであった。

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2007年5月 8日 (火)

第1章
  仁義とコンプライアンス

第1章 (3)

ビリヤードのセンターテーブルが開き、そして巨大モニターが出現した。
そこには一人の女性が映し出されたいた。
ジャガーとファイナルゲートの四人のメンバーはその画面に目をやった。
「こちらファイナルゲートです。どうしました?」
聖華がそのモニターの女性に質問した。
「すいません。ファイナルゲートですか?」
「そうですが」
「実は、私は「クリスタル翠銀行」のデータベースを管理する下請会社の「データプール株式会社」のデータ管理室の里山と申します」
「里山さんですか、私はファイナルゲートの清野聖華、あなたの勇気に感謝します」
その言葉と同時に生駒明大がパソコンのデータベースとの照合をしていた。
「門長(もんちょう)、確かに「クリスタル翠銀行」の下請け会社に「データープール株式会社は存在します。そして、そこのデータ管理室には里山寛子(さとやま ひろこ)という女性が居ます。モニターの彼女との写真判定からして本人に間違いないでしょう」
「里山さん、私がファイナルゲートの門長、清野龍志だ。「クリスタル翠銀行」の阿波木頭取とは顔見知りだし、当然内部告発に関しての措置について契約もしている、安心して事の経過をお話しください」
「実は私どもの「データプール株式会社」は「クリスタル翠銀行」に預金をお預けいただいているお客さまの個人データはもとより、キャッシュカードの暗証番号も管理しております。それが昨日、そのデータを誰かがコピーした形跡があったのです」
「そうですか」
「しかし、そのデータを管理できるのは社内では限られた人間しかいないのでは?」
聖華が質問した。
「そうです。確かに管理主任の大崎主任だけです。私は管理データに不正侵入がないかを見張る役ですが、お客様の個人データとそのキャッシュカード暗証番号データへの長時間の異常データ反応があり、私は何者かがそのデーターをコピーしたのではないかと判断しました」
「彼女の証言には嘘はありません」
明大が門長、清野龍志に伝えた。
「おい、明大とか言ったな、なぜ彼女が嘘をついていないと確信が持てるんだ?」
ジャガーは明大に質問した。
「これが最新の嘘発見器だ」
明大はモニターに映る里山寛子の表情や言葉から、嘘を解析する新型の嘘発見器の画面にモニターを切り替えた。
「この新型嘘発見器から解析するには、彼女の証言に嘘はまったくみられていない。要するに信用のおける証言ということだよ、ジャガー君」
「なるほど、面白いおもちゃだな」
「里山さん、大崎主任に変わった様子は?」
龍志が質問した。
「それが...」
里山寛子の表情が曇った。
「彼女の表情データーに乱れが生じています」
「お願いです、ファイナルゲートの皆さん、私は大崎主任を尊敬しています。主任を助けてあげてください」
彼女はそう言い残し、通報回線を切ったのであった。
「式さん、今の内部告発をどう思うかね?」
龍志が式三に質問した。
「門長、確か数日前に「クリスタル翠銀行」のキャッシュカードの作成図面が何者かに盗まれた噂を耳にしまたが、今回の内部告発とどうやら関連がありそうでは」
「そうか、その図面でキャッシュカードを偽造し、そしてお客の個人情報と暗証番号を手に入れれば、何万いや何十万という預金者の口座からお金を引き出すことができる。1万人のキャッシュカードから、仮に100万円同時に引き出したとしても100億円を盗みだすことができるということか」
ジャガーが呟いた。
「ジャガー君、門長の言った通り、君は腕っ節だけではないようだな」
式三はジャガーに感心した。
「お父様、このことを至急、「クリスタル翠銀行」に報告を」
聖華が龍志に言った。
「聖華待て、里山さんが言っていた大崎主任には何か訳があるようだ。まずは大崎主任の行動を見張り、洗い出してからだ」
「それに門長、気になる噂を耳にしまして」
「式さん、なんだね」
「あのブラックスネークの陳 忠将(ちん ちゅうしょう)が多くの手下を従えて、日本に到着したとの噂です」
「何~!」
ジャガーの顔色が変わった。
「ジャガー、どうした」
ジャガーの異変に龍志が気がついた。
「中国のブラックスネーク、そのナンバー2の陳が日本に」
「ジャガー君はブラックスネークと何か因縁でも」
明大が質問した。
「いや、チョットした貸しが彼らにはあるもんでね、清野さん、今回の件俺にも手伝わさせてくれ」
「どうした、急に乗り気になったじゃないか」
「まあ、お嬢さんはこの身に替えてもお守りするが、陳には貸しを返してもらわないと」「理由はあえて聞かずにおこう」
「明大、ではジャガーにあれを授けてくれ」
龍志が明大にそう指示すると、壁からバトンのような大きさの金属の棒が出てきた。
「これを君に与える」
ジャガーはそのバトンほどの長さの棒を手にした。すると次の瞬間その棒は長刀のように伸びたのであった。
「これは」
「そうだな、『ジャガーの爪』とでも命名しようか。君が戦闘モードになった時、その体温と血圧に反応し、この超合金チタンが長刀のサイズまで伸びる、そして逆に落ち着きを取り戻せば、その体温と血圧から判断し元のバトンのサイズに戻る仕組みさ」
「明大さんよ、でも棒では人は斬れないぜ」
「ジャガー、お前に人殺しは絶対させん。あくまでも聖華とお前の身を守るための武器
なのだ」
龍志がジャガーに強い口調で言った。
「ジャガー君、この『ジャガーの爪』はどんな金属の攻撃でも耐えることができる。ましてや人間に打ち込めば、相手を戦闘不能にはできるであろう。あくまでも護身用として使ってくれ」
「では、式さんはブラックスネークの情報を、聖華とジャガーは大崎主任を見張り、明大はここに残りもう少し大崎主任を詳しく調べる、私は「クリスタル翠銀行」の阿野木頭取に会いに行く。いいな」
「はい」
皆は呼応した。
「ファイナルゲート、ゲートフォールディング」
龍志が今回のミッションを高らかに宣告した。

ジャガーは自分の通称と同じ紺色の愛車ジャガーに聖華を乗せ、大崎主任の自宅に向っていた。
「聖華お嬢さんは、ヤクザが嫌いで」
「気安く呼ばないで、ええ、ヤクザは嫌いよ。」
「わが父、虎鉄もですか?」
「虎鉄おじ様は嫌いではないわ。しかし、人に暴力を振るうヤクザは嫌い」
「言い訳かもしれませんが、親父も私も浜の街を守ることに命をかけてきました。横浜はこの十数年で大きく発展しました。昔から居るものも居れば、どこからか流れて来たものもいる、その時必ずいざこざが起こる。親父も私もそのいざこざを解決し、人々が安心して住める街をつくるためにヤクザという商売をしてきました。決して人を泣かしたり、脅したり、傷つけるためだけに暴力をしたのではありません。人の生活を守るために暴力を使ったのです」
「ジャガー、理由はどうあれ暴力では人の心は守れません。正義も同じです。だから私は暴力が嫌いなんです」
「聖華お嬢さん」
ジャガーは聖華の信念の強さを垣間見ることができた。その信念の強さに、亡き育ての親の虎鉄の魂を感じたのであった。
「もうひとつ質問させてください。聖華お嬢さんはなぜファイナルゲートの一員になったのですか?」
「私はお父様を尊敬しております。そして、その理念に共感しているからです。この日本は高度成長を経てバブル時代から崩壊へ、そしてここ数年やっと復活基調へと動き始めました。そのような経済社会の中、企業や行政機関などは闇の部分を作ってしまった。汚職、裏金、安全性の軽視、環境破壊、人の命を奪う商品の隠ぺい、機密情報の漏洩、情報の捏造、粉飾決算、証券市場でのルール違反、過剰労働の放置、盗作などの闇の部分です。利益という光を手に入れるためにそれに相反する闇を作ってしまったのです。
しかし、この闇は、その企業や組織が真剣に解決しようと思えば解決できるのです。
コンプライアンスはこの日本では「法令遵守」と訳されます。しかし、私はコンプライアンスとは「人の道を守り、順応する」ことと思っています。この日本に隠れている社会的闇を少しでも消し、人々が暮らしやすい社会を築くこと、それがお父様の理念であり、私はその理念に尽力したいのです」
「分かりました。それが聖華お譲さんの仁義ですね」
聖華の眼光にジャガーは仁義を感じたのであった。
ジャガーと聖華は大崎主任の自宅の前に到着した。その時、聖華の携帯電話が鳴ったのであった。
「はい、聖華」
「お嬢さん、明大です。やはり大崎主任には事情がありました。大崎主任の奥様は数年前から腎臓が悪く、腎臓移植をアメリカで希望されていました。そのドナーが昨日見つかり、明日、サンフランシスコに奥様と日本の医師団と向う予定です。
しかし、それには莫大な費用が掛かり、大崎主任は自宅を売ってもその費用は払えないはずですが、どうやらその費用を今日振り込むから、是非そのドナーの腎臓移植をお願いしたいと急きょ申し込みをしたみたいです。私が推測するに「クリスタル翠銀行」のキャッシュカード暗証番号データーと引き換えに今日、金を貰うのではないでしょうか」
「明大さん、私も同じ意見です」
聖華がそう言いながら電話を切ると、自宅から慌てた様子で大崎主任がスーツケースを
持って出てきた。
「ジャガー、大崎主任を追って」
ジャガーと聖華は車に乗り込んだ大崎主任を追った。
大崎主任は駅に車を乗り捨て、駅の階段を駆け上がって行った。ジャガーたちも慌てて車を降り、駅の階段を駆け上がり大崎主任を追った。しかし、あまりにも駅は人がごった返しており、大崎主任を見失いかけていた。
その時ジャガーは反対側のホームで電車に乗り込もうとしている大崎主任を見つけた。
「聖華お嬢さん、大崎は反対のホームです」
ジャガーは聖華に叫んだ。
それを聞いた聖華は、銀色のピストルを手に持っていたバックから取り出し、大崎主任めがけて撃ったのであった。
「聖華お嬢さん、ハジキとは」
ジャガーはその光景を唖然として観ていた。
「ジャガー安心しなさい、あれは彼の背広に発信機を打ち込んだだけ、このピストルの弾には発信機と麻酔弾しかないわ」
「明大さん、今大崎主任の背広に液体発信機を付着させたわ、誘導をお願い」
聖華は携帯電話で明大に指示をした。
「お嬢さん、了解しました。あの液体発信機は付着したら最後、その付着したものが焼失して無くなるまで大丈夫ですからね」
「ジャガー行くわよ」
「へい~」
ジャガーと聖華は再び車に乗り込み、明大の指示に従って電車に乗った大崎主任を追うのであった。
「お嬢さん、どうやら大崎は横浜港に向ってます」
「そう、明大さん、お父様と式三さんにそのことを伝えてください」
「了解しました」
「ジャガー、急いで横浜港へ、どうやらデーターと金の受け渡しが行われるわ」
「ウッ~」
「どうしたの、ジャガー」
ジャガーはハンドルを握りながら額の古傷を押さえた。
「聖華お嬢さん、大崎主任の命が危ないです。おそらく、横浜港で待つブラックスネークの陳(ちん)は暗証番号のデーターを受け取ったら、大崎主任を殺すつもりです」
「ジャガー、どうしてそんなことが分かるの?」
「殺気を感じた時、私はこの額の古傷がうずくのです。間違いありません、この殺気、陳の殺気です」
「それは、絶対に阻止しないと」
ジャガーはアクセルを踏み込み、車を飛ばしたのであった。

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2007年4月27日 (金)

第1章
  仁義とコンプライアンス

第1章 (2)

ジャガーは教えてもらった歌舞伎町のプールバーに着いた。そして、バーカウンターに座り、店の中を観察していた。
店では60歳を過ぎたと思われる小太りの男と、30歳ぐらいの銀縁のメガネを掛けたインテリタイプの痩せ型の長身の男の二人が、センターテーブルでビリヤードを楽しんでいた。店にはそのニ人しかいなかったのであった。ジャガーはその二人に聖華のことを聞こうと立ち上がった瞬間、店の扉が開いた。
扉からは赤い縁取りのメガネをかけ、黒いスーツを身にまとい、長い髪をなびかせ、美しい瞳と透き通るような白い肌が印象的な、25歳ぐらいの女性が入って来た。ジャガーはその女性を見た時、この女性を何年も前から知っているようなデジャブを感じた。その美しさに魅了されるだけでなく、この女性が自分の運命の人であることを、ジャガーの魂が読み取っていた。
「まちがいない、聖華お嬢さん」
ジャガーは育ての親、虎鉄から渡された聖華の写真を確認するまでもなく、その女性が聖華であることを確信していた。
ジャガーは聖華に近付こうとした時、聖華はジャガーに流し目を送った。そしてジャガーにビリヤードのキューを投げた渡したのであった。ジャガーはそのキューを反射的に受け取った。
聖華は表情ひとつ変えず、センターテーブルにゆっくり足を運んだ。
テンターテーブルでは、ビリヤードを楽しんでいる小太りの老人が、見事なフォローショットをして見事にオブジェクトボールをポケットに叩き込んだ。続いて、同じテーブルにいた長身のインテリタイプの男も続いた。そして、聖華が間を空けることなく、センターショットを魅せたのであった。
聖華はオブジェクトボールがポケットに吸い込まれるのを確認し、ジャガーに視線を送った。ジャガーは直ぐに気付いた。次はおまえの番だとそのテーブルにいる三人が目で言っていることを。
ジャガーはセンターテーブルについた。そして、ショットを放った。
それは究極のドローショットであった。キューボールは空中を舞い見事オブジェクトボールに当たり、サイドポケットに吸い込まれた。すると次の瞬間、センターテーブルの床がエレベーターのように動き出し地下へと降りて行った。ジャガーは一瞬驚いたが、三人には殺気がないことはすでに感じ取っていたので、落ち着いていた。そして、聖華を見つめるのであった。
四人を乗せたセンターテーブルは地下室に到着した。
その地下室の奥にある机の後ろの椅子に座り、背を向けている男がいることにジャガーは気がついた。他の三人もその男を見つめていた。次の瞬間、その男はゆっくりと椅子を正面に向け四人の前にその姿を見せたのであった。
「あんたは」
「正邪 雅くん、いや通称ジャガー、ファイナルゲートにようこそ」
その男は、育ての親 虎鉄が最後に呼び寄せた豪雨の日に鬼前組を訪れた男であった。
「私の名は清野 龍志(きよの りゅうじ)、虎鉄とは養護施設からの親友だ」
ジャガーはすぐに分かった。虎鉄が自分の娘聖華を預けている人物とはこの清野という男であり、聖華自身も清野を父親と思っていることを。
「貴方は何者ですか?」
「私は元日弁連の会長であった。しかし、今は表向きは一介の弁護士であるが、裏の顔はこのファイナルゲートの門長をしている」
「弁護士さんが俺に何の用だ?それにファイナルゲートとは?」
「いい質問だ。流石虎鉄の息子だけはある。単なる暴力だけの男と思ったが、頭も使えそうだな」
「何!?」ジャガーは龍志をにらみつけた。
「まあまあ、そうカッカするな。ここ数年の各企業や行政機関の犯罪行為や法的義務遵守違反の発覚は、その組織にいる内部告発者によるものが多く、そのため内部告発者を保護する目的と各企業や行政機関のコンプライアンス(法令遵守)を促進させる目的で、わが日本も2004年6月に公益通報者保護法を制定し、そしてさらに内部告発者保護法を近い将来制定する予定だ。
告発する者はその事業主や顧問弁護士、条件付きでマスコミなどの外部への告発ができる。
しかしながら、この法律では内部告発者の保護つまり、解雇などの不利益な取り扱いをしないとしながらも、その内部告発者の疎外感を拭うことはできていないのが現状だ。
無理もない。日本は村社会の慣習で出来た社会だ。内部告発とはその組織の仲間を裏切る行為として思うもしくは思われることを拭うことはできないということだ。
そこで、各企業や行政機関は自らの組織でヘルプデスクなど、コンプライアンス遵守機関や内部告発者の相談窓口を作ったのだが、しかしながらそれは表向きの話だ。
実際は、表面的なコンプライアンス遵守を掲げ力を入れているが、内部に潜む内部告発者の相談には乗りにくいのが本音なのだ。つまり、内部告発者の情報に基づくその内部調査、私情や権力から逃れその調査を実行することは、日本の組織上難しいという問題が浮き彫りとなったのだ。また、内部告発者にしても同じ組織の人間に告発することにためらい
を感じていては、真のコンプライアンスはいっこうに守ることはできない。
そこで私は国家に進言し、その内部調査を極秘で行える秘密情報組織を作った。
それがこの「ファイナルゲート」だ。各企業や行政機関が、自らのヘルプデスクで対応できない難問題を我々に内部調査を依頼してきた時、我々は動き出す。
我々ファイナルゲートが出動する時、つまり「ゲートフォールディング」を発動した時、日本のあらゆる機関は我々の捜査に協力をしなければならないのである。
我々ファイナルゲートには三つの目的がある。一つ、内部告発者の身柄の保護、安全を確保すること。二つ、犯罪行為や法的義務違反を事前に阻止すること。三つ、問題の適切な解決と今後の対策の進言だ。そして、我々はその目的を達成するため隠密に行動しなければならないのである。
では、メンバーを紹介しよう。君の右にいるのが犬飼式三(いぬかい しきぞう)62歳、各週刊誌の記者や新聞記者を勤めた、通称「早耳の式さん」だ。彼の情報収集能力に勝るものはいない。
そしてその隣りが生駒明大(いこま めいだい)31歳、元イギリスのMI5で秘密情報部員への技術サポートをしていた、通称「発明大(はつめいだい)」だ。
そして、君の左にいるのが私の娘、清野聖華25歳だ。私と同じ弁護士であり、社会保険労務士でもある」
「そうか、『ろ~』と言った親父の言葉は路上生活者ではなく、労務士だったのか」
ジャガーは苦笑いをした。
「お父様」
「どうした聖華」
聖華がはじめてジャガーの前で言葉を発した。
「私はこのヤクザ者をファイナルゲートの一員にすることに反対します」
「どうしてだね」
「いくらお父さまの無二の親友、虎鉄おじ様の息子とは言え、ヤクザはヤクザ、コンプライアンスは全くこの男には似合いませんし、暴力による解決しかできない男など用はないと思います」
「そうだな、聖華は暴力が嫌いだったな、幼き頃は虎鉄にも懐いていたが、物心ついた時、虎鉄がヤクザと知ると二度と会おうとはしなかったな。しかし、彼はもうヤクザではないぞ、鬼前組と縁を切り、虎鉄から私がその身を譲り受けたのだ」
「おい、チョット待った、俺はあんたにこの身を渡した覚えはないぞ」
「そうかな?ジャガー、虎鉄からの命を忘れたのか?」
その時、ジャガーは気がついた。虎鉄から託された使命を。「聖華の身を守ること」を。それが聖華の側に居てこそできることだと。
「どうだ、聖華、このジャガーとやら、お前のボディガードの見習として様子を見ては?」「私は合気道3段、ボディガードなど必要ありません」
「式さん、明大、どう思うかね」
「そうですね。怖いもの知らずのお嬢さんにはボディガードも必要でしょう」
「式さんまで」
「この間なんか、尋問した若者と殴りあいになった時、相手のナイフで危うく刺されるところでしたからね」
「明大はどう思う」
「はい、私は彼の能力をすでに分析済みです。剣の腕あれば日本選手権に出ても優勝するでしょう。ただし試合としては反則技で予選敗退はわかってますが...それと既存データ―で比べることのできる、ただ一人の剣豪千場周作に決して劣っていない、いや、もしかしてそれを上回る腕と判断できます。拳、つまりボクシング選手や空手家としても日本最強でしょう。K-1がリングでなく路上なら彼は間違いなく優勝するでしょう。」
「ハハハハ、明大、相変らずの素晴らしい分析力とユーモアだ」
「どうだ聖華」
「勝手にどうぞ」
聖華は不服であったが、皆の勧めを仕方なく応諾した。
「そういうことだジャガー、お前は聖華のボディガードを頼む。異存はあるまい」
「ああ、ただ、俺は聖華お嬢さんの身は守る、しかしあんたらのコンプライアンスが何とかとか、内部告発者が何とかという世界は知らんぞ」
「それでよい」
その時、地下室にベルが慌しく鳴ったのであった。
「お父様、内部告発者からの連絡です」

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2007年4月18日 (水)

第1章
  仁義とコンプライアンス

第1章 (1)

「人の道、外せばそこは地獄道、この先一歩も通しゃしねぇ~」
「お前は誰だ?」
「俺か、鬼前組、いや今はそう.....コンプライアンス・ジャガーとでも名乗ろうか」
そして、ジャガーは大崎主任の胸を右人差し指で差した後、その手で拳を握り締め、自らの胸元に引戻しながらこう言った。
「あんたの良心、取り戻しに来たぜ!」

遡ること一週間前、霧に包まれた街に落雷が轟いた。
そして戦の始まりを告げるがごとく、数万本の矢のような豪雨が街に降り注ぎ始めた。
新横浜にある古い門構えの家で昭和と平成の激動の時代を生き抜いてきた男の人生が今終わろうとしている。そうした光景に溶け込むがごとくある人物を出迎えるため門の前で傘をさしながら一人の男が立っていた。
その男の名は正邪 雅(せいじゃ まさし)30歳、横浜の街を取り仕切る鬼前組(きぜんぐみ)の組長代理。通称ジャガーと呼ばれた男であった。ジャガーは日本刀で切られた傷が額にある坊主姿で筋肉の塊のような肉体から殺気を放っていた。
黒塗りの車がジャガーの前に停まった。
そして、ジャガーは車から降りた男に声を掛けた。
「ご苦労さまです。親父には時間がありません。急いでください」
「わかった」
車から降りた男は高級スーツに身を包んだ60歳ぐらいの長身の男だった。
ジャガーはその男を奥の部屋に通した。しかし、10分も経たないうちに表情を変えることなくその男は出てきた。
「おじゃました」
その男は部屋の前で待っていたジャガーに言った。
ジャガーはその男を車まで見送った。そして車に乗ろうとした瞬間立ち止まり、ジャガーに言ったのであった。
「お前、いい目をしている。気に入った。また逢おう」
そう言い残し、車は出発したのであった。
「組長代理」
「どうした熊」
組員の熊田 勝(通称 熊)がジャガーを慌てて呼びに来た。
「組長の様態が」
「何~」
ジャガーは慌てて、奥の部屋で眠る鬼前組 4代目組長 正邪虎鉄(せいじゃ こてつ)の元へと急いだ。
「親父~」
ジャガーは虎鉄の枕もとで叫んだ。
「ジャガーか?いいか今からお前に俺の遺言、いや俺の願いを託す」
「大丈夫だ親父、捨て子の俺を今日までわが子として育ててくれた親父の命なら何でも聞くさ」
「そうか、それを聞いて安心した。じゃあよく聞け、わしが死んだら鬼前組はお前と縁を切る。そして、わしの命により一人の娘を命に代えて守ってほしいんじゃ」
「俺が鬼前組と縁切り、この組はどうなるんだ」
「この組は元々、わしを拾ってくれた三代目鬼前組組長から譲り受けたもの、その息子の豹牙(ひょうが)に継がせる。それが仁義ってものだ。お前もすでにわしの考えを分かっていただろう。この写真の娘、清野聖華(きよの せいか)はわしの娘じゃ」
虎鉄はジャガーに一枚の写真を渡した。
その写真はおそらくその聖華という娘が大学を卒業した時の袴姿のスナップ写真であった。
「えっ、親父に血を分けた娘がいたとは?」
「訳あって他人に預けた。いいかジャガー、聖華はその預けた人を父親だと思っておる。本人には決してわしが本当の父親だったことは知られてはならぬ。いいか」
「わかった、親父」
「聖華は今、うっ~、べん~、ろ~、うっ~」
「親父、しっかりしろ」
横浜の街を守り続け、浜の虎と恐れられた鬼前組四代目組長、正邪虎鉄は息を引き取ったのであった。

翌朝、正邪虎鉄の遺体の前に組員総勢50名が集まっていた。組員は組長を亡くした悲しみに満ちていた。それと今後の組の行末を案じていた。
ジャガーは組長代理の最後の仕事としてその遺言を読み上げるのであった。
「皆顔を上げろ、親父は涙を好かんぞ。いいか、皆よく聞け、今から鬼前組四代目組長の遺言を読み上げる。豹牙全員揃ったか?」
「兄貴、いや組長代理、全員揃ってます」
ジャガーが声を掛けた一番前に座っている男は、ヤクザにしては涼しげな目と痩せてはいるが剃刀のような鋭さが漂う風貌を持つ、鬼前組若頭 鬼前豹牙(きぜん ひょうが)26歳であった。
豹牙の父は鬼前組の三代目組長であり、ヤクザの抗争により命を落としたのであった。
そして、父親の死後ジャガー共々虎鉄の手によって育てられたのであった。
「一つ、五代目組長は鬼前豹牙とする。そして、私のすべての財産を五代目組長に継承させる。一つ、組長代理 正邪雅は、本日をもって鬼前組と縁を切る」
「えっ~」
鬼前組総勢50名が驚いた。
「兄貴~、若頭には悪いが、今この組は兄貴でもってるんです。兄貴のいなくなった鬼前組なんて考えられません。組長亡くして、兄貴までいなくなるなんて」
組員の猿山 米(さるやま よね)が訴えた。
「猿、いや皆聞け、俺は親父いや四代目が亡くなる前に四代目からある命を受けた。
俺は今日まで育ててくれた親父の託した願いを貫抜かなければならない。それが俺の仁義なんだ。皆分かってくれ」
「兄貴~」
猿は泣き始めた。
「兄貴~、今日までこの鬼前組を盛り立ててくれてありがとう。俺が五代目に指名された以上、兄貴の分までこの組を。いやこの浜の街を盛り立てて守るつもりだ」
豹牙が立ち上がってジャガーに言った。
「豹牙、よく言った、それでこそ五代目組長だ。いいか皆もう一度よく聞け、この豹牙、いや五代目を盛り立てるのだぞ。返事は~!」
「へい」
涙声で組員は返事にならなかった。
「声が小さい。もう一度」
「へい~」
皆の返事がこだました。
豹牙はジャガーに抱きついた。
「例え、兄貴がこの組を離れても俺たちは一生兄弟ですよね」
「当たり前だ、豹牙」
「兄貴~」
熊田 勝、猿山 米をはじめ、全員がジャガーに抱きついた。
鬼前組は正邪 虎鉄を亡くし、そしてその息子正邪 雅を旅立たせ、新たな船出を迎えたのであった。

「くそ~、個人情報保護法とやらで全く聖華お嬢さんの情報がつかめん。親父が残した最後の言葉、『べん、ろ~』から辺りをつけるしかなかろう」
ジャガーは虎鉄から渡された聖華の卒業写真を頼りに聖華の卒業大学、早春大学の関係者に何とか聖華が新宿区に住んでいることを突き止めていた。しかし、それ以上はジャガーの風貌を恐れ、誰一人聖華の情報を教えてくれる者はいなかった。
「親父の言葉『べん』とは何だろう?便所か?『ろ~』とは路上生活者のことか?
そうだ、あそこだ、便所のある公園に住む路上生活者なら何か知っているかも」
ジャガーは公園に向かった。
その公園ではどこかで拾ったと思われる服を着た、身なりは普通の生活をしている者と何ら変わりはない、無精ひげを生やした路上生活者が歯磨きをしていた。
ジャガーはその男に声を掛けた。
「すまんが、このお嬢さんを知らないか?便所のある公園で路上生活をしているかもしれないんだが?」
その声を掛けられた男は歯磨きの手を止め、そしてジャガーの方に目を向けた。
「あなたは~、確かあの時の~、命の恩人鬼前組のジャガーの旦那」
その男はそう言うと急にあらたまった。
「私は井森佐介(いもり さすけ)と言います。浜で路上生活していた時、学生に襲われた時、助けていただきました。あの時はありがとうございました」
「そうか?」
ジャガーはその事は忘れていた。
「人をお探しで」
「このお嬢さんだが」
「分かりました、皆を呼びましょう」
佐介はそう言うと口笛を二度吹いた。するとどこからともなく、何十人もの路上生活者がその公園に次から次へと集まってきた。
「私の仲間たちです」
ジャガーは驚いた。
「このお方は私の命の恩人だ。今人を探していらっしゃる」
すると、その写真を見た一人の女の路上生活者が言った。
「この人なら歌舞伎町のプールバーでよく見かけるよ。それに確か向日葵のバッチをつけていたけど」
「向日葵のバッチ、っていうことは弁護士?『べん』とは弁護士のことか?便所じゃなかったんだ」
「ありがとうよ、みんな達者でな」
ジャガーは皆に一礼した。
「ジャガーの旦那、いつでも私たちでお役に立つことがあったら呼んでくだせい。この公園で口笛を一回吹けば私が、二回吹けばここにいる皆が集まります」
「佐介とか言ったな、そうかそれは助かる、ではまた世話になる時が来よう、その時また会おう」
ジャガーはそう言い残し、歌舞伎町のプールバーを目指したのであった。

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